研究情報資源の今後のあり方について  
平成7年5月

科学技術会議政策委員会
研究情報ネットワーク懇談会
目次
はじめに
第1章 研究情報資源整備の現状と問題点について
1-1 研究情報資源の重要性
1-2 一次情報についての現状と問題点
1-3 ソフトウェアについての現状と問題点
1-4 データベースについての現状と問題点
1-5 研究情報資源をめぐる国際動向
1-6 研究情報資源の一般社会における利用
第2章 研究情報資源充実のための基本的方策について
2-1 基本的考え方
2-2 当面の施策展開の方向

本文

はじめに
 これまで科学技術会議の答申あるいは報告書において科学技術情報の整備・流通に関する我が国の基本的な政策が示され,それらに従って諸般の施策が講じられてきたところである。今般,本懇談会が改めて我が国の現状を踏まえ,研究情報資源の今後のあり方に関して基本的な検討を行ったことは,今後ネットワークと言う新たな研究環境が整備され,多くの情報発信源が分散した形で増加していく中で,流通する研究情報の整備のあり方が基本的に変わっていくべきであると言う基本認識があったからである。このネットワークを流通する研究情報は,今後の研究開発活動の重要なツールであり,我が国科学技術の発展に必要不可欠な”資源”であるとの認識の下,本報告書ではこれらの研究情報を「研究情報資源(コンテンツ)」と呼ぶこととし,ネットワーク時代における政府の科学技術情報関係機関が研究情報資源の充実のために重要な役割を果たすべきとの基本的認識の下に,その充実のための施策のあり方について検討を行った。
 研究者が日々研究情報ネットワークを活用する傾向が強まり,また,世界の研究開発がネットワーク環境を前提として発展していくことが予想される中で,これまで科学技術会議が示した基本的な政策をネットワークの整備に併せて更に充実させていく観点から,今後関係者の協力の下,以下に記したような施策の具体化が図られることを強く望むものである。

第1章 研究情報資源整備の現状と問題点
1-1 研究情報資源の重要性
 研究者が研究の成果として生み出す種々の研究情報は,創造的な研究活動 と多額の研究資金を投じて産出される貴重な資源であり,知識としての公共 財であると言える。この研究情報資源を以下のようにその属性に応じて捉え その蓄積,流通の重要性について述べる。

(1) 一次情報
 ① 研究論文
 ② 研究経過についての非公式発表文書(進行中研究情報)
 ③ 実験,観測,計算等から得られるデータ,事実(数値,文字,図形,画像,音声)
 ④ 映像情報(研究の成果あるいは記録としての映画,ビデオ等)

(2) ソフトウェア
プログラム,設計書,アルゴリズム,マニュアル,マルチメディアソフト

(3) データベース
 ① 文献・案内型データベース
 ② 全文型データベース
 ③ ファクト型データベース

 これらの研究情報資源は,新たな創造的研究開発活動の展開や産業経済の発展及び国民生活の安定・向上を目指した科学技術振興基盤として不可欠なものであり,人間の知的活動の所産である,「いわば財産として体系的に整理し蓄積すべきもの」であるとともに,「研究開発の現場に直接,効果的に生かされるもの」でなければならない。特に,膨大な研究情報が多くの発信源から多種多様な形態で産み出されている現在,それらの効果的・効率的活用のために,「必要な研究情報」が「必要な時に」入手できるようデータベ ース化や流通システムの構築等により,研究情報の体系化を図り,使い易くしていく必要がある。
 一方,研究開発活動におけるコンピュータの役割は,単に実験結果の分析・整理の手段や実験・観測の自動化の手段にとどまらず,今や推論,シミュレーション等を行う研究の支援手段(ある程度の実験の代替)となっているまた,我が国でも研究情報ネットワークの構築が推進され,コンピュータの高度な相互接続により研究情報の発信・交信を促進する場が広がりつつあるこのようなネットワーク環境の中でコンピュータによる高度な情報処理を高い信頼性で行うためにも,その環境に相応した体系化された研究情報資源として,データベースやソフトウェアを量的・質的に充実していく必要があるネットワークの中を流通する研究情報資源の充実が図られなければ,その価値は半減する。その充実に当たっては,ネットワークが無秩序な情報の流れで氾濫しないような仕組みとルールを整備することも重要である。
 我が国は,一次情報を数多く生産している国の一つでありながら,数十年の歳月と多大な国費を投じて研究情報資源の整備に力を費してきた欧米に比して,データベースやソフトウェアの整備が遅れていることが従来よりたびたび指摘されている。国際的に展開されているネットワークを介して海外の研究情報資源が大量に流入している現在,我が国の独自性の高い研究情報資源の積極的な海外発信に貢献するという視点からも,その蓄積・流通体制の整備が必要である。

1-2 一次情報についての現状と問題点
(1) 研究論文
 研究者は一般に,科学技術雑誌や学会等の会議発表論文集に,論文の形でその研究成果を公表する。研究成果の公表の媒体として,審査制度のある雑誌の権威は今でも高いが,この種の雑誌は投稿から出版まで相当な時間を要するため,より簡便な会議発表の利用が高まる傾向にある。しかし,会議資料の流通性は雑誌に比べると劣るため,成果内容に応じた適切な使い分けが求められるが,これとともに,電子媒体化を図るなど研究成果の公表・流通を迅速かつ適切に行うための体制の整備が必要である。
 テキストや画像の電子的蓄積技術と,ネットワークによるそれらの転送技術の進歩により,科学技術雑誌等の電子出版が現実味を帯び,インターネットの普及により一層その環境は整いつつある。我が国でも,文部省の学術情報センター(NACSIS)といくつかの学会においてSGML(Standard Generalized Markup Language)の研究開発や電子出版の取り組みがなされているが,今後この動きを促進するためには,引き続きネットワーク等のインフラ整備を行うとともに,SGML等の標準データ記述言語に基づく共通的記述仕様定義を行い,その採用が情報作成者のメリットとなるような工夫が必要である。
 また,日本の科学技術に対する諸外国からの関心が最近著しく増大しているが,それらの情報を外国が得ようとする際,日本の論文の多くが日本語で書かれていることが大きな障壁になっている。日本の研究者による論文のうち,外国誌または国内欧文誌に発表されるものは1/5程度にすぎず,特に応用科学分野では90%前後が日本語であるのが現状である。日本語という言語の特殊性が海外からのアクセスを困難にしていることは残念なことであるが日本語論文が世界でより迅速にプライオリティーを獲得し的確に生かされるためにも,論文への英文抄録の付加や日本語で書かれた論文の翻訳を積極的に行うことが必要である。

(2) 研究経過についての非公式な発表文書
 研究成果の公式の発表媒体は,主に科学技術雑誌や会議発表論文集であるが,中間報告や研究中に得たアイディアをより迅速に他の研究者に知らせる場合には,研究者個人の私信や研究グループ内でのメモによる交信がよく用いられている。以前は基礎科学の限られた分野の特徴であったこの方法が,情報通信ネットワークの発展によって大きく拡大している。パソコン通信の電子メール,電子掲示板,SIG(Special Interest Group)等のサービス機能がこの目的に使われているが,このほか,インターネットでは更にWWW(World Wide Web)サーバ機能等により,より豊富な情報を広い範囲に発信できるようになった。このように,研究者による情報発信と研究者間の情報交流のための場は飛躍的に広まったが,ネットワーク上での情報流通の健全な発展のためには,発表者の優先権主張の根拠となる発表日の確認,発表者が後日学会誌等に正式な論文を発表する場合のオリジナル性の整理,大量の情報の中から必要適切なものを見つけだすための方策等の手法が今後の課題である。

(3) データ
 研究論文には,実験や観測によって得られる生データや,それを整理・評価・変換して得られるデータが掲載されることが多い。また,大量の試験データや観測データはデータシートや観測記録として独立して発表されることもある。しかし,多種多様なデータが広範な資料に発表されるので,必要なデータを探し出すには多大の困難を伴う。論文の中のある種のデータを自動的ないし半自動的に認識・抽出する技術はほとんど実用化されておらず,専門家の頭脳労働に頼るしかない。このため,論文中のデータの大部分はファクトデータベースとして活用されず,結果として,大規模なファクトデータベースの整備がなかなか進まないのが現状である。
 また,研究の過程で得られるデータのうち,外部に公表されるのは一部であり,例えば研究結果の確認のためのデータは,論文には掲載されなかったり,グラフ等により省略された形で表現されることが多い。このため,他の研究者にとって貴重な情報となり得るデータが,有効に活用されず,”埋没”したままになっているケースが多々あると考えられる。他の研究者による重複した努力を避け,研究活動を効率的に実施するため,このような貴重な研究情報を利用可能な状態に整備していくよう適切な支援を行う必要がある(4) 映像情報動画やビデオの形で記録された情報は,以前から特定の分野(医学,自然観測等)では重要な役割を持っていたが,最近のマルチメディア技術の進歩により,この種の情報のディジタル化とソフトウェア化が容易になり,その活用範囲は大きく広がっている。特に,映像情報は専門外の人にとっても解り易くかつ魅力的な表現が可能であることから,青少年や一般国民に対する科学技術の普及啓発にも大きな効果をもたらすことが期待できる。しかし,この種の情報を収集・保管・提供するライブラリーやそれについての案内データベースはほとんどない状況であり,今後有用なマルチメディアソフトの開発の促進とともにその流通体制の整備が重要である。

1-3 ソフトウェアについての現状と問題点
 研究者が計算,推論,シミュレーション等のために作成するソフトウェアの中には,他の研究者にとっても利用価値のあるものが少なくない。このため,従来から研究グループや学会の中での非営利ベースでのソフトウェアの利用が行われており,特定の分野に関するボランティア的なプログラム交換機構も存在している。また,非常に利用度の高いものの中には商品化されるものもある。
 特に,近年のコンピュータの超高速化・大容量化等,技術の飛躍的向上により計算科学技術については「理論」「実験」に並ぶ第三の科学技術としてその展開が期待されている。計算科学技術を多岐にわたる分野に適用するための応用ソフトウェアは,計算科学技術を推進するために不可欠な研究ツールであるとともに,その重要な成果物でもあり,広く流通させる必要があるしかしながら,欧米諸国に比べると,我が国では研究者の作成したソフトウェアが個人あるいは研究室内のレベルに留まる傾向が強く,貴重な資源が充分活用されていないのが現状である。このため,我が国で流通している研究用ソフトウェアは,フリーソフトにしろ市販ソフトにしろ米国等の外国製品が圧倒的である。これについては以下のような理由が考えられる。

① ノウハウが知られたり意に添わない使い方をされることへの危惧
② カスタム化やユーザーサポートの仕事が発生することの煩わしさ(日本の大学や国立試験研究機関には技術サポートスタッフが不足している)
③ 業務の一環として作られたソフトウェアの公開に伴う手続き上の問題(著作権法,国有財産法とも関係)
④ 公開に伴う見返りやインセンティブがないこと

 インターネットは,ソフトウェア流通に対する容易な手段を与えること,利用した他の研究者からの,ソフトウェア自体の改善,向上等のフィードバックが期待できることから,上記の問題をある程度解決できると期待されるこの観点からも,今後とも研究情報ネットワークの整備・拡充を進めるとともに,ソフトウェア流通に資するサポートのための仕組みやインセンティブを付与するためのルール作りが必要である。

1-4 データベースについての現状と問題点
(1) 我が国における現状
(a) 一般に公開された流通経路を持つデータベース
 我が国で作成されている市販データベースのうち,科学技術分野のものは,文献・案内型60,全文型37,ファクト型30,計 127となっている。
 文献・案内型データベースのうち大規模なものは,日本科学技術情報センター(JICST),日本特許情報機構(JAPIO),日本医学中央雑誌刊行会で作られており,これらで国内の主要文献・特許情報はほぼカバーされている。大学等の研究者により作成・公開されている専門分野のデータベースも少数あるが,他の大半は民間企業が特定領域に絞って作成するものである(この傾向は全文型のデータベースも同じである)。
 ファクト型データベースは,気象庁及び環境庁から公開されている観測結果のデータベースを除けば,物質・材料分野のデータベースが大半である。後者は,国立試験研究機関(物質工学工業技術研究所,金属材料技術研究所等)で測定されたデータを収録したもの,及び大学等の研究者グループでの収集・評価活動によるものが多い。
(b) 大学や国公立試験研究機関等の中で流通するデータベース
 上記の市販データベースの他,大学や国公立試験研究機関の中で流通しているデータベースがある。
 大学で作成されているデータベースは 1,614種に及び,このうち54%が自然科学及び自然科学を含む分野と見られる。また,全体のうち31%が文献・案内型,20%が全文型,残りがファクト型に分類される。これらのデータベース中,機関として作成しているものは48%で,残りは個人レベルまたは研究グループレベルで作られている。
 次に,国立試験研究機関を含む各省庁で作成されているデータベースは 277種であり,このうち科学技術分野のものは95種と見積もられる。これらの中にはファクト型と見られるものが圧倒的に多い。なお,これらのデータベースは各省庁の業務として作成されているものが主であり,他にも研究者レベルで作成しているものも存在すると見られる。

(2) 最近の傾向及び問題点
(a) 文献・案内型データベース
 文献・案内型データベースについては,我が国においてもJICST,NACSIS,JAPIO等での長年の努力により質・量の側面では一応の水準が達成されている。しかし,これまではデータベースの網羅性の向上や品質の確保に重点が置かれ,データベース作成に係るコストの節減など業務の効率化のための議論は必ずしも充分でなかった。特に,文献型データベースは,資料の収集にはじまり,書誌事項の抽出,抄録の作成,キーワードの付与,情報の入力等,様々な工程が人手による作業のため,膨大な費用と時間が費やされているのが現状である。
 一方,雑誌の電子編集,コンピュータによる日本語処理技術の進歩等により,従来人手に依存していた作業の一部を代替できる可能性もでてきたが,記述形式の不統一,著作権の帰属等の問題もあり,これらの利用に当たっては学会等との連携が不可欠である。
 このような諸情勢を踏まえつつ,データベースに求められる品質とその作成に要する労力とのバランスを総合的に勘案し,データベースを作成する側とそれを利用する側の双方から価値の高いものと評価されるようなものを構築していく方策を検討することが必要である。
(b) 全文型データベース
 1-2(1),(2)で述べたように,科学技術雑誌や進行中研究情報のネットワーク等での電子的流通が今後盛んになると考えられる。しかし,データ記述形式の統一やデータ入力等技術的な課題やデータベース化のための費用等の解決すべき課題も少なくない。また,このような情報の流通のためには,これらが個別にではなく分野毎のようにある程度まとまって蓄積されることが必要である。今後の全文データベースにおいては,電子出版の動き等も見極めつつ,効率的・効果的に作成する検討が重要である。
 欧米では,このようなプロジェクトが活発に実施され,実用化されているものも見られるが,我が国では,科学技術雑誌の出版元である学会等の財政的基盤が弱く,先導的な事例がいくつか見られる段階である。
(c) ファクト型データベース
 より直接に研究に利用されるファクト型データベースについては,大規模で信頼性の高いものが存在しないため,海外のデータベースに頼るか,研究者自身が必要なデータを集めるしかない。大学や国公立試験研究機関で作られているデータベースの多くは,このような必要性から,個人レベルの努力に支えられたものであり,また研究グループレベルにおける活動の成果であるため,小規模にならざるを得ず,データベースとして備えるべき網羅性あるいは体系性を欠いている。また,ボランタリーな活動に頼り,その成果に対する評価が必ずしも高くないことから,データの継続的更新がされにくく,測定手法の進歩等によりデータが陳腐化しても,これをシステム的修正により最新化できる場合があるにも拘わらず対応されないままになっている例もある。
 作成の労力に対し利用が限定されるという事情は海外のファクトデータベースでも同様であるため,海外の定評あるデータベース作成機関でも運営に苦慮し活動が停滞しているところがある。しかしながら,早くから政府の相当の資金と専門的人材を得て整備が進められた結果,高い網羅性と品質を達成して世界的に利用されているデータベースの例もある。我が国にはこのようなデータベースがないという点で欧米諸国に比べ立ち遅れていることから,今後世界的に評価されるようなデータベースの構築のための努力が必要である。
(d) インターネットでのデータの流通
 地球観測,ライフサイエンス等の分野では,重要なデータベースをインターネットで利用する研究パターンが生まれつつある。しかし,データがフリーに流通するインターネットは,高い付加価値を持つ(商用として成り立つ)データベースや,利用に高度な機能(複雑な検索機能等)を必要とするデータベースには必ずしも適さないという意見もある。
 ネットワーク上でのデータベースの高度利用の可能性を追求するためには,オブジェクト指向データベース技術,分散データベース利用技術,知的インタフェース技術(エージェント技術等)を含むデータベース統合利用技術の実用規模の研究を進める必要がある。
 また,インターネット上の情報の内容は種々雑多であり,予め探索対象の存在をある程度知らないと要求に合うものを探し出すことはかなり難しい。ネットワーク上にいろいろなディレクトリーも出されているが,現状になかなか追いつかず,内容を見てもデータベースのみならずメモ,案内概要説明,素データ,ドキュメント等が混在している状況である。このため,ネットワーク上の情報を適切に整理し,情報利用者が自分にとって必要な情報を迅速に入手できるような方策が望まれる。
(e) データの蓄積と公開に対する環境整備の遅れ
 1-2(3)で述べたように,研究の成果として得られた貴重なデータが埋没・散逸する傾向があるが,これは,我が国の大学や国公立試験研究機関に研究情報資源をデータベースとして蓄積し,公開するための予算や人員が充分に確保されていないところに大きな原因がある。データベースを整備することは研究者の業績としては評価されにくいため,研究者は研究成果を論文として発表してしまえば,データの蓄積には関心を払わない傾向が見られる。
 一方,大学や官公庁におけるデータベース等の研究情報資源の利用の面でも,必ずしも充分でない予算と融通性のない利用手続き等が障壁になっている。  このため,これら機関に対する必要な支援を行い,知的ストックである研究情報資源を数多くの機関が活用できるような体制の整備を行うとともに,このような研究情報資源充実のための業務に対し,適切な評価を行うことが必要である。
(f) 研究支援手段としてのデータベースの必要性
 コンピュータを用いるデータ解析,推算,推論,シミュレーション等の研究を進める上で,データベースは重要な支援手段となり得る。特に,物質・材料,生体,地球・環境の分野でのニーズが高く,一機関では整備できない統合的データベースも必要とされている。  データベースがこのような目的のための高度なツールとなるためには,  ① 対象となる範囲についてデータの網羅性が充分であること
 ② データの信頼性を推定できること
 ③ データベースにはないデータを推算・創成する能力があること
 ④ ユーザーフレンドリーであること
 ⑤ ユーザーが自分の手許でデータの追加・修正が行えることのような要請を満たすことが求められており,このような要請を満たす高度な機能を有したデータベースシステムの開発が必要である。

1-5 研究情報資源をめぐる国際動向
 我が国では,国公私立大学等の研究機関を結ぶ学術情報ネットワーク,各省庁のネットワーク,研究者等による個別ネットワークが運用され,そして各省庁を結ぶ省際研究情報ネットワークの運用が開始されており,また,世界的な情報ネットワークであるインターネットへの加入者が激増するなど急速に研究情報ネットワークの環境が整備され,産学官によるデータベースに関する共同研究が開始されている。一方,米国においては,「すべての米国民が,必要な情報を必要な時に必要な場所で入手できる情報通信システム」を目指したNII(National Information Infrastructure )構想が本格化しつつあり,今後整備すべき情報コンテンツとして行政,教育,研究開発に関するソフトウェア,データベースの開発整備が重要と指摘されている。フランス等他の先進国においても同様の動きが興りつつある。
 これらの各国の動き・計画を統合する形で,平成6年3月の第一回世界電気通信開発会議でゴア米国副大統領が地球的規模で情報通信ネットワークを構築するGII(Global Information Infrastructure )構想を提唱し,平成6年7月のナポリ・サミットでの合意を受け,平成7年2月,情報社会に関する関係閣僚会合がブラッセルにて開催された。本会合では,今後高度情報通信社会を構築していく上でインセンティブとなるようなG7パイロット・プロジェクトが採択されたが,GIIの概念は,単なる情報通信ネットワークの構築のみならず,ネットワークをどのように有効活用していくか,そのために必要なコンテンツをどのように整備していくかということにも主眼が置かれており,研究開発活動の分野においてもこのような視点に立った共同プロジェクトの実施が望まれている。
 また,アジア諸国における経済発展は目覚ましいものがあり,そのための基盤である情報の整備・流通を効率的に行うため,各情報機関間の連携強化相互交流が積極的に行われているところである。科学技術情報流通に関しては,APEC(Asia-Pacific Economic Cooperation),ASCA(The Association for Science Cooperation in Asia)等で更に相互交流,共同研究などその具体化が議論されており,アジアの一員として,アジア地域の発展のため我が国に対する期待は極めて大きい。

1-6 研究情報資源の一般社会における利用
 家庭へのパソコン通信の普及等情報通信ネットワークの大衆化に伴って,求められる科学技術情報の内容も変化している。即ち,研究者,技術者だけでなく,それ以外の一般国民も科学技術に関する様々な情報を求めることが可能となっており,特に,保健・医療データ,食品,環境データ,地震・防災データなどにそのニーズが高い。今後はこれらのいわゆる生活に密着した科学技術情報をマルチメディア等の最新の技術を用いて如何に分かり易く,容易にユーザーに提供していくかが課題である。
 また,青少年の科学技術離れが我が国の将来の科学技術振興の観点から問題となっているが,これら青少年に科学技術に対する理解を深めさせるため情報通信ネットワークを活用するとともに,バーチャルリアリティー,マルチメディア技術を駆使し,科学技術に対する親しみを惹起させるようなソフトウェアの開発等を行っていくことが望まれる。

第2章 研究情報資源充実のための基本的方策について
2-1 基本的考え方(
1) 研究情報資源に対する認識の改革
 1-1 でも述べたように,研究活動の成果として得られる種々の研究情報資源は,人類の知的公共財として極めて重要なものである。これらの研究情報資源は単に生産者たる研究者個人の研究活動に利用されるのみならず,適切な形態に加工され,流通されることによって,レファレンスや研究動向調査等に活用されてきているが,今後は研究現場そのものにおける創造的研究活動のため,他の研究者等の幅広い利用者に活用され,多方面の研究開発の推進,さらには科学技術の発展に役立てていかなければならない。
 そのためには,生産される研究情報を”資源”として活用できるような情報の収集,体系化,蓄積,流通の仕組みを構築することが必要であるが,この様な活動に対する重要性の認識を今後はより一層深めていくことが重要である。研究現場におけるデータベース化等の活動は,単なるデータの整理等の作業でなく本来知的な価値を付加する創造的な活動であるにも拘わらず,一部の研究者のボランタリーな努力に任されている部分が大きく,高度な人材を組織的に結集して対応することができず,その結果,欧米諸国における研究情報資源の整備状況に比べ我が国の立ち後れが目立っている。このためまず,ネットワーク環境の整備に併せて,その中を流通する研究情報資源の充実のための業務も研究活動と同様に重要と評価するような個々人の認識を改めることが必要である。

(2) 国の役割の明確化
 研究情報資源は,産学官各分野の研究機関等がそれぞれの立場でその整備を進めていくことを基本とすべきであるが,研究活動を効率的に行っていく上で根幹をなす各種研究に共通した基盤的,分野横断的なデータベースは,我が国の研究ポテンシャルの向上に貢献し,我が国の科学技術の振興,産業・学術の発展に資するものであるため,国が主導的役割を果たしつつその整備を図っていくべきである。この意味で,研究活動の支援のため従来より行ってきた文献データベース等の整備を今後とも維持・発展させるとともに,さらに,基盤的,分野横断的なものについて,研究現場で直接活用される高度な内容・機能を持つデータベースの開発・整備が重要な課題である。また研究情報資源を活用して国民生活に身近な科学技術情報を充実させ,提供していくことも,今後国の役割として期待される。
 反面,今後本格的なネットワーク時代を迎え,誰もが情報の発信者となり生産・流通される情報が大量になっていく状況を踏まえ,情報を利用する対象者やその政策的意義等をよく見極め,真に国が整備すべきものをよく吟味していくことが必要である。
我が国からの情報の発信が少ないという諸外国からの指摘等に対応し,国際協調を図りつつ,研究情報資源の充実を進め,積極的な情報提供を行っていく上での国の果たすべき役割は非常に大きいと考える。
 政府の科学技術情報関係機関が新しいネットワーク環境の中で求められる役割も変化しつつあり,情報の収集や提供の方法がより直接的となり,また情報の内容も高度に整理されたものから進行中の研究に係わるものまで多様になってきている。このような状況の中で,政府の科学技術情報関係機関はネットワーク環境の有効性を高め,より基礎研究の現場に近いところで役立つ機能を果たしていくことを基本としつつ,次節に述べる国としての当面の施策に関し,それぞれが調和のとれた重要な役割を担っていくべきであり,その役割を最大限発揮できるよう努力していく必要がある。

(3) 効果的・効率的な整備
 散在する研究情報を第三者が体系的に整理していく仕事は容易ではない。この観点から,まず研究情報を生産する個々の研究者や研究機関が,他の研究者や研究機関による有効活用を考慮した整理・公表に努力すべきである。
 この際,国が必要な支援を行い,貴重な知的公共財が埋没することなく,研究情報を効果的・効率的に整備・流通させることが重要である。データベースやソフトウェアの整備には,相応のコストがかかるが,より多くの利用者に利用されるよう可能な限り低廉な価格にすることが望ましいこのため,コスト削減に不断の努力を払うほか,利用者のニーズを的確に把握し,コスト効果の高いものを築き上げていく努力が必要である。
 データベース整備のコスト低減のためには,一次情報の生産者の協力が不可欠である。情報発信者として情報を安価に提供することは,情報受信者として情報を安価に入手できることにつながるとの意識を個々人がもち,データベース作成のための一次情報の入手コストが低減されていくような仕組みを形成していくことが必要である。
 また,我が国だけでは整備が不可能な大規模なデータベースの構築には,国際協力を念頭に置きつつ,効果的・効率的な整備を図ることが必要であるさらに,ネットワーク時代を迎え大量の情報が流通する状況に対応し,これら大量の情報の中から利用者が自分にとって必要な情報を迅速に入手できるようなシステムの構築・整備の促進が今後の課題である。

(4) 積極的な公開と流通の促進
 整備された研究情報資源は,これを内部にとどめることなく,貴重な知的公共財との認識の下,積極的に外部へ公開し,数多くの研究者・研究機関により活用され,更なる知的ストックの増強ひいては我が国科学技術力の一層の向上に役立てるべきである。しかしながら,研究情報資源の流通に係る現在の仕組みには,流通を促進させるようなインセンティブが必ずしも充分であるとはいいがたい。数多くの研究者や研究機関の間でのデータベース,ソフトウェアの流通を促進していくためには,個々の研究者や研究機関の努力に加えて組織的対応が不可欠であり,法的検討も含めた体制の整備が必要である。
 研究情報ネットワークは,研究情報資源の公開・流通の手段として今後非常に有効であり,これを時間・空間・研究分野を超えた産学官の区別ない開かれたインフラストラクチャーとして活用していくべきである。
 また,諸外国に比べ,我が国には国際的に通用するようなデータベース,ソフトウェアがまだまだ少ないという現状に鑑み,国際的にも高い評価を得られるものを開発し,積極的に国際発信を行うことにより,研究情報ネットワーク上での利用が拡大する中で,我が国が応分の国際貢献を果たすことが肝要である。

(5) 国民の理解の増進
 研究開発の高度化を図るための専門的な研究情報資源の充実が必要なのはいうまでもないが,一方,複雑化・高度化する科学技術に対し,国民の関心が薄れているのも事実である。長期にわたり多大な努力を必要とする研究情報資源の充実は,国民生活に身近な科学技術情報の充実へも役立ち,その普及を通じて科学技術への理解を高め,特に青少年の科学技術離れ対策としても効果的であることから,これを国策として進めることにつき国民の理解を得ていくことが必要である。

2-2 当面の施策展開の方向
 第1章で述べた問題点の解決に向けて,2-1の基本的考え方に基づき,当面,国として以下の方向に立った施策を推進する。

(1) 質・量の双方の面からみた研究情報資源の一層の充実
① 研究情報資源整備に対する適切な評価
 研究成果としてのデータベース,ソフトウェアはそれ自体が重要な知的公共財であるとの意識を醸成することが重要である。さらに,国公立試験研究機関においては,データベースやソフトウェアの整備に係る業務についても,本来の研究業績と同様に高い業績評価を行い,研究者の格付け等においてもかかる整備業務への取り組みを考慮することにより研究情報資源の充実に対するインセンティブを与える。
② 研究機関におけるデータベース形成の促進
 研究情報資源の発生の現場である各研究機関におけるデータベース化を促進し,データの散逸の防止を図る。このため,まず,国自らが推進している各種研究プロジェクトについて,率先してその成果のデータベース化を図り研究者が利用しやすい体制整備を進める。また,多くのデータを蓄積している研究者・研究機関での独自のデータベース化作業を容易にするようなデータベース作成支援システムの開発を行う。特に,現在データベース作成作業の障壁になっている文献等の中のデータの認識・抽出を支援する技術の研究を行う。また,研究機関と情報機関とが協力して,データベース化が推進できるような措置も検討する。
③ 持続的・体系的なデータベース整備の推進
 種々の研究目的のために必要なデータベースのニーズを充分に見定め,重点的なデータベース整備を行う。その際,それぞれの機関は,諸外国のデータベース整備の状況を念頭に置き,国際協力の観点も含め,必要に応じて重点分野を定める。  また,データベースは,データが体系的に揃っており,かつ,持続的に整備することが特に重要であるので,この点に充分配慮したデータの蓄積を行うとともに,データの信頼性が重要であるとの認識のもとに,蓄積するデータの質を利用者が判断できるようにする。
 さらに,一旦蓄積されたデータは測定技術の進歩等により陳腐化することもあるため,恒常的にその再評価することにより,リフレッシングを行えるようにする。
 特に,各種研究活動に共通するような基盤的,分野横断的なデータベースについては,公的機関が中心となってその体系性・品質の管理を行うとともに,マニュアルの整備,高度利用のためのシステム開発等を通じて利用促進を図る。
④ 機能性の高いデータベースの構築
 研究を行う上で必要となる基礎的,一般的な情報の収集,分析に係る労力を軽減し,単なる研究のツールにとどまらず,データの内容及びシステム両面において,優秀なアシスタントとしての高度な知的機能を有するデータベースを構築し,研究者が自己の行う研究に専念できるようにする。
 このため,基盤的,分野横断的な研究情報を対象とし,データベースの体系的整備を容易にする欠損データの創製,利用者との間のインタラクティビティ,立体構造の画像出力などのユーザーフレンドリーな機能等を有する新しいタイプのデータベースの開発を行う。
⑤ 研究開発分野での新しいアプリケーションの開発
 我が国の研究開発活動の高度化を図るためには,新しいアプリケーションを開発することが重要であり,このため,研究情報ネットワークの高速化が早期に必要となってくる。現在の研究情報ネットワークは,数百キロビットから数メガビットを主体として運用されているが,研究活動から発生する情報資源は,単なるテキストに止まらず,動画・音声等を含むマルチメディア情報へとますます発展し,また,スーパーコンピュータの相互同時運転など高速回線の必要性が生じていくことが予想され,研究開発の現場でもその活用が切望されている。このため,先端的材料の共同設計,多種の研究情報の相互運用性の向上等,具体的な研究開発分野における高速回線を利用した高度なアプリケーションの開発を行い,種々の研究開発への適用及びネットワーク環境の利用拡大等を図る。
⑥ データ整備のための専門家の育成
 データベースの高度化・高品質化に伴い,データの品質管理等の業務が非常に重要となる。このような業務は,研究者の協力を得て高度な知識を持つ専門家が行う必要があるため,そのような人材の育成措置を講ずる。

(2) 公開・流通のための体制の整備
① データやソフトウェアの公開・流通促進のための体制・制度の充実
 技術的な面では,ネットワーク上で容易に情報を公開できるような標準化されたデータ記述言語の普及を図る。このため,その方式に則った標準的なエディタやデータベース管理システム等のツールの整備を行う。
 一方,研究途上や終了後に得られるデータやソフトウェアを可能な限り公開できるよう著作権や国有財産との関係に留意したガイドラインを検討する。なお,民間自身の利用目的で内部で整備されているデータベース,ソフトウェアに関しても,安全性,環境保護等の観点から広く活用されることが期待され,提供すれば他の提供者のものも入手できる相互互恵のシステムを設けること等により公開・流通を図ることが望ましい。
 また,研究者が開発したソフトウェアの積極的公開のためには,研究者の負担になるマニュアルの作成やカスタム化に対して必要な支援を行うとともに,応用ソフトウェアの流通については継続的な機能向上,適用範囲の拡大等の体制・制度の充実が不可欠である。ただし,ソフトウェアについては,商業ベースでの流通を国が阻害しないことが大切であり,民間主導での整備に対する支援を行うこととするのが適当と考えられる。
② ディレクトリー等の整備
研究者や研究機関が公開する大量のデータベースやソフトウェアの効率的な流通促進のため,ネットワーク上にこれらデータベースやソフトウェアについての各種ディレクトリーを整備する。
 特に,現在進行中の研究経過や論文になる前の情報等のいち早い公開とそれについての情報交換は,ネットワークの重要な役割となると考えられる。それらの活動の効果的推進のため,分野ごとの進行中研究情報の電子掲示板機能等を整備し,また,研究集会等における専門的な意見交換内容が迅速に流通するよう,バーチャル学会等の普及を進める。
③ ネットワーク上の情報資源の統合利用技術の推進
複数の機関で分散して整備されているデータベースの統合利用を実現するため,データ更新時の同期制御,知的インタフェース等の開発を行う。
 これらの技術ついては,単なる研究にとどめず,大規模データベースの開発等と融合させた実用的検証を行う。これを産学官によるプロジェクトとして実施することにより,各界が保有するデータの公開と統合的利用の促進を図る。

(3) 円滑かつ効率的な情報流通体制の構築
 発信される情報の形式が不統一であると情報機関等がこれらをデータベースに加工する作業がコスト高になり,ひいてはデータベースも高価なものとなる。したがって,データベース整備の効率化,データベース提供コストの低減化のために,一次情報の作成者である研究者,研究機関,学会等の協力は極めて重要な要素である。データベース化しやすい形での一次情報の発信を促進するため,統一的標準に沿った原作成者による抄録作成の推進を図るほか,学会等における論文の投稿,編集,配布の電子化を推進する。
 政府の科学技術情報関係機関においては,学会等が行うこのような論文の電子化,ネットワークによる流通のためのソフトウェア等のツールの開発と配布等支援業務を行うほか,校閲業務の簡素化等データベース作成業務の効率化を図る。
 さらに,研究情報資源を円滑かつ効率的に流通させるため,優先権保護にも充分配慮し,ネットワーク時代に対応した流通制度・基準の整備を図る。

(4) 我が国研究情報資源の積極的な国際発信
① 国際共同プロジェクトへの積極的参加
 GII,APII(Asia-Pacific Information Infrastructure) といった国際的規模での高度情報通信社会の実現に向けての取り組み,各国における研究情報ネットワークの発展及び国際接続の推進の流れの中で,研究情報の国際流通をさらに推進し,世界的規模での知的資源の共有を進める。この中で,研究活動の効率化,新しい研究領域の開拓を図るとともに国際協力の下に実施されるアプリケーション共同プロジェクトに参加し,GIIの構築に積極的に貢献する。
② アジア・太平洋地域への研究情報資源の提供
 APEC,ASCA等において,アジア・太平洋各国との科学技術協力が今後益々重要になると予想される。このため,アジア・太平洋諸国の一員として,近年進展が著しい同地域における研究活動を支援するため,個別地域の研究情報基盤の整備状況に応じ,オンライン,CDーROM等による文献データベースの提供や,研究課題・研究機関案内等各種ディレクトリー情報の積極的提供を行う。また,各国における研究情報ネットワークの発展と我が国との協力関係の展開を踏まえ,研究情報ネットワークとしての相互接続を推進する。
③ 機械翻訳システムの活用
 諸外国に比し,海外への情報発信が少ないという我が国の現状を改善し我が国の知的ストックの国際的レベルでの一層の活用を図るため,それらを海外に対して積極的に発信していくことが必要である。その支援のため言語の特殊性を克服する機械翻訳システムの高度化とその活用を推進する。特に,研究情報の発信者である個々の研究者が,研究情報ネットワーク上で手軽に利用できるような簡便で使いやすいシステムを構築するとともに,その受信者たる海外の諸機関においてもその積極的利用が図れるような適切な支援体制を構築する。

(5) 国民生活に身近な科学技術情報の充実とその提供
 科学技術の高度化,専門化が進むにつれて,研究活動及びそれによる成果はますます国民の関心から離れていく傾向も見られるが,本来科学技術は国民生活の向上のためにあるべきものであり,科学技術情報は,国民の情報資産あるいは文化資産として広く機能させて行くべきである。また,阪神・淡路大震災,サリン事件等を契機に日常生活に密接に関連した科学技術情報に対する関心がますます高まっており,また,情報関連機器の導入が進む教育の現場への活用も期待されている。このような状況に鑑み,以下のような科学技術情報の充実を図り,国民への積極的提供を行うとともに,これら業務を行うための体制の整備,人材の養成を図る。
① 生活に密着した科学技術情報の整備
 既存の先端的分野における研究情報資源の充実と併せて,生活に密着した科学技術分野(保健・医療,食品,環境,地震・防災等)を対象としたデータベースの充実を図る。国民の科学技術への関心を一層高めるため,これらのデータベースはマルチメディア技術を活用した理解しやすいものとし,ネットワーク等を利用してその普及に努める。
② 科学技術の普及啓発のための情報資源整備
 宇宙,生体,エレクトロニクス等,科学技術の各分野の知識・理解を深めるため,ネットワーク環境を利用した普及啓発情報を提供するシステムを構築し,このネットワークを介して国民がパソコン端末等から「いつでも」「どこでも」「簡単に」利用できるようにする。また,海外の科学館・博物館等にある様々な国民向けの普及啓発情報資源をオンラインで相互に入手できるようなネットワークの構築を行う。
 さらに,大学等の持つ豊富な情報資源を活用するため,「ユニバーシティ・ミュージアム」を整備・充実し,その資源をオンラインで入手できるよう画像データベースの充実にも努める。
③ 情報化が進む教育の現場への活用
 近年パソコンの導入が著しく進んできている初等中等教育においては,児童生徒の学習意欲を高める情報資源の開発が求められており,今後充実される科学技術情報を活用して教育用ソフトウェアやデータベースの開発を進める。