学術情報の流通体制の改善について
学術情報の流通体制の改善について

昭和48年7月25日

学術審議会学術情報分科会


I 検討の目的と留意点

1 検討の目的
 近年,学術研究の著しい発展に伴って,研究の成果としての学術情報は,急速に増加している。それは専門分野により異なるとしても,全体として10年間に2倍,今世紀末には5,6倍に増大するであろうと予測されている。一方では,境界領域や複合領域の研究が盛んになり,かかる分野の研究者が目を通すべき文献の専門領域は,多岐にわたっている。このような状況の中で,研究者は自分の必要とする文献を円滑,迅速に手に入れることが困難になりつつあるという事態が憂慮されている。
 本来,学術研究の発展は,先人の研究業績のうえに新しい創造・研究成果を積重ねることによって成し遂げられるものであり,したがって,研究の成果を必要に応じて利用できるよう,その情報処理体制を整備することが,学術研究の発展を左右する重要な条件であるといわなければならない。
 さらに,内外の情勢を顧ると,研究者や行政機関の間でも情報問題に対する関心が高まり,わが国においても日本学術会議や科学技術会議を初め諸機関において検討が行なわれ,勧告や報告が出されており,海外においても欧米各国で検討や実施の動きがみられるのに加え,UNISIST(世界科学情報システム)など国際的レベルにおける情報処理体制の整備も検討されつつある。
 他方において電子計算機技術,電気通信技術その他情報科学技術の最近における目ざましい発達は,以上のような動きを手段の面から支えるものであり,現在および今後における発展を十分摂取することにより,情報化社会にふさわしい情報処理体制の整備を可能にする条件でもある。
 このような内外の情勢をうけて,わが国においても国内の体制を整えるとともに,国際的な動きに対処する施策を確立していくことは,情報量の増大にそなえるという意味だけでなく,人類の学問的な遺産を広く多くの人に門戸を開放しうるという意味においても学術研究の発展にとって現下の急務であると考えられる。
 以上のような観点に立って,わが国における学術情報処理体制の現状と問題点を検討し,それに対してとられるべき施策を探究しようとするのが,本分科会の目的である。

2 検討にさいして留意した点
 以上にような観点に立ち,本分科会が検討を行なうに当たって留意した点は,次のとおりである。

(1) 学術審議会は,文部大臣の諮問機関であるので,本分科会の検討も文部省の所掌事務にかかることが中心となるが,学術処理体制の問題は関係するところが広範であり,関係機関が協力する必要があるので,文部省の所掌事務以外の分野にも目を向け,関連する限度においてこれに触れることにした。
 また,国の行政機関に対する報告であるため,国のとるべき措置を中心として検討することとしたが,学術情報の問題は情報の生産者,利用者など各般にわたり,研究者,大学,研究機関,学協会,出版社,図書館等の協力がなければ円滑に機能しないものであることにかんがみ,必要に応じ,それぞれのところにおいてとられることが望ましい措置についても言及した。
 以上のような観点から,大学の場合も国,公,私立を通ずる学術情報処理体制の整備ということに留意した。

(2) 学術情報の利用者としては,研究者,技術者,大学院学生などできるだけ広範な層を対象として考えた。

(3) 学術情報処理の問題も学問の専門分野に応じて必ずしも一律には論じられず,その研究の方法論,学問の性格,情報量増大の傾向に応じてある程度個別的,具体的に検討することも必要である。
 しかし,一方,各専門分野を通ずる総合的な施策を強力に推進することによって,各専門分野はもちろん学問の総合という要請にも沿うことになるので,相互の関連性,総合性ということにも意を用いた。

(4) 本来,学術情報の問題は,国際的観点に立って考えられるべきものであり,わが国における学術情報処理体制の整備を図るに当たっても,当然,国際協力に深い考慮を払うべきである。その際,わが国が欧米諸国から地理的に遠く離れていて情報交換に不便があることと,日本語の特殊性からくる言語的障害があることの二つの不利な条件があることにかんがみ,格段の努力が必要であることに留意した。

(5)我が国は,狭い国土にちゅう密な人口を擁しているという特殊な条件のため,比較的情報の伝達が容易であるとも考えられるが,地理的な条件に加えて近年の情報量の増大ということを考慮すると,学術情報の入手という研究条件においても,なお,地域的格差が存在すると思われる。したがって,この面での地域的格差の是正ということにも留意した。

(6)以下の検討は,昨年における学術研究の動向に対応するものであるが,今後も学術研究の進展,情報処理技術のいっそうの進歩等,絶えざる変化が予想される。したがって,とるべき施策の検討に当たっては,将来の変化を見通した長期的観点に立つとともに,予期せざる変化にも対応できるような柔軟性をもたせることが必要であることに留意した。

II 背景 (現状)
 わが国における学術情報の流通体制の整備に関する検討を行なうに当たっては,現状に関する調査・分析,利用者のニードの測定および外国における情報政策の現状を把握することが必要である。以下,その概況についてふれることとする。

1 学術情報の発生と現状
 最近,学術情報の量が急増していることは,別表1主要抄録・索引誌の収録論文数の増加状況および別表2わが国の科学技術雑誌の刊行状況からもじゅうぶん類推することができる。たとえば,国際的な主要抄録・索引誌の収録論文数でみても,1957~1967年の10年間に2倍から4倍となっており,収録する範囲の拡大による論文数の増加を考慮にいれても発表される論文数は著しく増加しており,また国内の科学技術雑誌の量についても,近年その増加は著しいものがある。
 また,学術情報の量の急増は,別表3世界の図書の発行点数からも類推することが可能である。すなわち,ユネスコの統計によると各国で発行される図書の総点数は,1955年には28万5千点であったが,15年後の1970年には倍増に近い54万6千点な倍増している。そのなかには,かなり多くの学術図書が含まれていると考えられている。
なお,これら世界各国で発行される図書のうち,国立国会図書館では1970年に1万7千点の洋書を収集しており,また,新収洋書総合目録記載の主要な大学図書館,公立図書館と国立国会図書館・同支部図書館の統計では,1970年に4万7千点の洋書を収集している。

2わが国の研究者および研究機関の現状
 学術情報は,主として研究者によって生産され,研究者を含めて広く一般に利用されるものである。わが国の研究実施機関数および研究者等の専門別数,地域別分布の状況は,別表4(1),(2),(3)のとおりである。すなわち,大学等(短大,高専等を含む。)の研究者は,別表4の(3)によれば,東京・埼玉・千葉・神奈川の4都県,近畿地区に,それぞれ全体の36%,20%が集中しており,その他の機関(学校以外の研究機関,会社等)の研究者は,さらに高い比率で両地区に集中している。別表4の(1)のによれば専門分野別では大学等の研究者は,人文・社会科学系が約3万5千人で33%,理学系が約1万8千人で17%,工学系が約1万4千人で13%,農学系が約4千人で4%医学系が約2万6千人で25%である。その他の機関の研究者は,理学系が約4万5千人で33%,工学系が約6万6千人で48%農学系が約1万3千人で10%,医学系が約5千人で4%であるが,人文・社会科学系の研究者は大学等に比べ著しく少ない。

3 わが国の主な学術情報機関の現状
 学術情報機関とは,主として研究者によって生産される情報を各種メディアを介して公表・流通・処理・蓄積および利用を図るなどの活動を行なうものであり,これらの機能を合わせて行なう場合もあるが,主としてメディアを介して公表・流通を図る情報機関としては,学協会,大学・研究機関,民間の出版社,大学出版部および政府刊行物サービスセンターなどがあり,これら各種メディアを処理し,蓄積し,利用させる機関としては,各種の図書館,文献センターおよび情報センターなどがある。なお,最近,政府および政府関係機関において生産される出版物のなかに,学術情報として利用されるものが増加していることから,学術情報機関そのものではないが,政府および政府関係機関の果たす役割が重要となりつつある。これら学術情報機関を学術情報の流れの中に位置づけると別図1のとおりとなる。

3.1各種メディアを介して学術情報の公表・流通を図る機関
3.1.1学協会
 わが国の学協会は,総数約1,000といわれ(日本学術会議編・昭和45年版全国学協会総覧による。),主として研究成果の発表,研究連絡などを目的としている。その規模は,会員数万人のものから数十人のものまでさまざまであるが,固有の事務所を持ち,相当数の専任スタッフを有するものは比較的少ない。全国的規模で設けられているものも相当あるが,とくに人文科学系,社会科学系および医学系の場合には,大学あるいは地域を中心として設けられているものもある。これら学協会の状況は,別表5のとおりである。

3.1.2大学・研究機関
 わが国の大学に大学の学部・研究所および国,公,私立の研究機関などからは,相当種類の紀要,研究所報告などが公表されている。これらのうち,大学の刊行する紀要類の総数は約1,220種(日本学術振興会編・全国大学研究機関誌要覧による。)とされており,その状況は別表6のとおりである。
これら紀要,研究所報告と学協会誌が,わが国の一次情報の主たる源泉となっているが,とくに紀要,研究所報告などはその刊行が不定期のものが多く,その内容も多く専門分野を含み,また,非売品で出版部数が少ないものが多く,流通の面からも改善を望む声が多い。

3.1.3民間の出版社
 わが国の民間の出版社から,学術雑誌・図書が多数刊行されている。たとえば,経済学,工学,医学等の分野では専門分野の商業誌が多数刊行されているが,理学等少ない分野もある。また,学術図書は,各分野で重要なものが相当数刊行されている。

3.1.4公益法人等
 研究成果としての学術図書には市販性が乏しいことにより、民間出版社に期待できないものがあることから,大学出版部,日本学術振興会等営利を目的としない公益法人等における活動の充実が望まれている。しかし,わが国におけるこのような機関の活動は,なお十分とはいえない。

(1) わが国の大学出版部は,外国に比較すると発展が遅れているといわれているが,そのなかには相当な活動を行なっているものがある。大学出版部協会に加入している11の大学出版部(別表7)では,教科書,参考書,学術図書(単行本)などを出版しており,年間出版点数が数十点から百点をこえる実績をあげている出版部もある。

(2) 特殊法人日本学術振興会は,その業務の一環として,学術的価値は高いが市販性に乏しいため一般的には,刊行が困難な学術図書をこれまで1,100点をこえて刊行するなど,学術に関する研究成果を普及する事業を行なっており,そのほか,研究機関,紀要の一覧など学術情報に関する各種資料を刊行する事業も行なっている。

3.1.5 政府刊行物サービスセンター
 政府が生産する出版物の普及・利用を促進する機関としては,大蔵省印刷局が運営に当たっている政府刊行物サービスセンターがあり,現在,主要な都市に8ヵ所設けられ,政府刊行物の展示,閲覧,販売,頒布等を行なっている。このほか,大蔵省印刷局指定の政府刊行物サービスステーションが全国の主要な書店等に56ヵ所設けられ,政府刊行物の販売が行なわれている。サービスステーションにおいては,市販されていない刊行物についても展示,閲覧が行われることになっているが,,実際には取扱われないものもかなりあるようである。なお,サービスセンターにおいて取扱われるものは,政府刊行物月報により一般に周知することが図られている。

3.2 各種メディアを介して学術情報を処理し,蓄積し,利用させる機関
3.2.1 大学図書館
 大学図書館は,大学の目的である教育および研究活動を支える基本的施設として,大学に附属して設置されている図書館である。昭和46年度におけるその設置状況は別表8のとおりである。すなわち,中央図書館386,分館167,部局図書館(室)348,総計901館(室)が設置されている。
 職員については,司書および司書補の資格をもつ者4,082人,その他の職員3,325人合計7,407人である。
 その蔵書数は国立国会図書館が約3,280万冊,公立大学図書館約380万冊,私立大学図書館約2,640万冊,総計約6,300万冊に達している。これは後出の公共図書館全体の蔵書数の約2倍に当たり,情報の蓄積量としては,この種の機関の中で大きな比重を占めるものである。
 大学外の一般の利用については,その本来の目的に支障がない限り学外利用者にも便宜をはかっている。また,専門別,あるいは地域別に文献複写等による大学相互間の利用も行われている。

3.2.2 国立国会図書館
 国立国会図書館は,国会法により,議員の調査研究に資するため,国会に置かれた図書館である。その設立の基礎として,国会法に基づき国立国会図書館法が制定されているが,同法による国立国会図書館の目的は,「図書およびその他の図書館資料を蒐集し,国会議員の職務遂行に資するとともに,行政および司法の各部門に対し,さらに日本国民に対し,この法律に規定する図書館奉仕を提供すること」である。
 国立国会図書館の収集についての特徴としては,唯一の国立図書館として政府刊行物および一般の出版物を発行するものは少なくとも一部以上納入しなければならないという納本制度をとっていることである。これは,公用もしくは国際交換のため,または文化財の蓄積およびその利用に資するために設けられている制度である。これをもとに国際協力を行なうことも国立国会図書館の業務の一つであるし,その他全日本出版物総目録,雑誌記事索引,新収洋書総合目録等各種の書誌・目録類の編さんに当たっている。また,学位論文を保存し,利用に供している。
奉仕形態としては,立法リファレンス(国会議員の活動に資する),参考調査(一般リファレンス),図書館間貸出,複写および閲覧がある。国立国会図書館のもう一つの特徴は,各行政・司法各部門の図書館をその支部図書館としていることである。
昭和47年3月末現在において,職員数845人(各行政,司法部門の支部図書館を除く。)蔵書数は図書約269万冊,逐次刊行物25,405種である。

3.2.3 公共図書館
公共図書館は,図書,記録その他必要な資料を収集し,整理し,保存して,一般公衆の利用に供し,その教養,調査研究,レクリエーション等に資することを目的とする施設で,地方公共団体,日本赤十字社又は民法法人が設置する図書館である。したがって,学術情報の蓄積・利用を直接の目的とするものではないが,その機能の一部として学術的な情報を市民に提供している。
昭和46年度現在,公共図書館は,都道府県立80(分館を含む。以下同じ。),市町村立775,私立30,総計885館が設置されている。これら公共図書館の職員は,司書および司書補の資格をもつ者2,539人その他の者3,159人,合計5,698人であり,蔵書数は合計約3,100万冊である。

3.2.4 専門図書館
 専門図書館とは,特定分野についての文献その他の資料を収集,整理,保管し,利用者に提供するために官公庁,特殊法人,民間企業体,大学,学協会,調査研究機関などに設けられた図書館(室)または資料室等である。
それぞれに固有の目的を以て設置されているので,必ずしも開放的なものではないが,学術情報の蓄積・利用機関としてはかなりの比重を占めるものであろう。
規模についてもまちまちで職員1人(兼任を含む)のものから相当数の職員をもつものまであるが,多くは数名ないし数十名の小規模のものが多い。数は正確にはつかめないが,「専門情報機関総覧」(専門図書館協議会編1972年版)によれば,4,000機関に照会し,約1,500機関の回答を得ている。

3.2.5 国文学研究資料館
 国文学に関する文献その他の資料を調査研究し,主としてマイクロフィルムによりこれら資料の収集,整理および保存を行ない,広く国文学の研究に従事するものに利用させるための機関として,国文学研究資料館が昭和47年度に設置された。目下,年次計画でその整備が進められており,今後の活動が期待されている。
また,同館に附設されている史料館(旧文部省資料館)においては,わが国の資料で主として近世のものの調査研究,収集,保存および閲覧が行われている。

3.2.6 国立大学学部・附置研究所附属文献センター
 人文・社会科学関係では,上記国文学研究資料館のほか東洋学,外国法,日本
経済統計および経営分析の諸分野で,従来から文献資料が比較的整備されている国立大学の学部および附置研究所に附属施設として下記の5つの文献センターが設置されており,当該分野の文献資料の収集,整理,保存が行なわれるとともに,文献資料の所在調査,各種二次資料の作成,情報検索の開発研究所等の情報活動が行われ,広く当該専門分野の研究者等に利用されている。

東洋学文献センター(東京大学東洋文化研究所附属および京都大学人文科学研究所附属の2ヵ所),外国法文献センター(東京大学法学部附属),日本経済統計文献センター(一橋大学経済研究所附属),経営分析文献センター(神戸大学経済経営研究所附属)

3.2.7 文書館
(1) 国立公文書館
国の行政機関において行政目的を遂行するため作成された公文書は,単に行政上の資料であるばかりでなく,学術研究上も貴重な資料であるが,わが国は,明治以来,各省公文書は各機関ごとに保存する方法がとられてきた。しかし,昭和46年度に国立公文書館が設置され,これを集中保存し,同時に一般の利用にも供せられる体制がとられることとなった。すなわち,同館は,受入れた公文書等を評価,分類,整理して,永く保存を図るとともに,これらを閲覧,展示,複写提供等の方法により学術研究,調査等のための利用に供し,また,公文書等の有効な活用を図るための調査研究および事業を行なうこととし,すでに昭和46年度より,各省庁が保存していた戦前分の公文書の受入れが3ヵ年計画で進められており,一応の整理が行なわれたものについては,利用に供されている。

(2) 地方文書館
 地方文書館ともいうべき施設は,すでに北海道,福島,埼玉,東京,京都,鳥取,山口および長崎の各都道府県に設置され,行政文書あるいは古文書等地域社会の貴重な資料の収集,保存と利用を行なっているが,このほかにも秋田,茨城の各県が設置準備中であり,千葉県ほか十数府県において設置の検討あるいは運動が行なわれている。

3.2.8 諸情報センター
(1)日本科学技術情報センター
内外の科学技術情報を収集,整理,提供することを任務とする機関としては,特殊法人日本科学技術情報センター(以下「JICST」という。)がある。JICSTは,大阪,名古屋,北九州の3ヵ所に支所を持ち,外国逐次刊行物・特許関係資料等の収集,科学技術文献速報(専門分野別に編集した日本語の抄録誌,9種類)・外国特許速報等の出版などの情報活動ならびに,JICSTの所載する資料等の複写サービス,学術論文・特許明細書等の翻訳サービスなどの情報活動が従来より行なわれている。また,これらの事業に加えて,昭和47年6月からはアメリカの国立医学図書館より送付されるMEDLARS(Medical Literature Analysis and Retrieval System医学文献分析検索システム)の検索用磁気テープを使用した医学と医学関連分野の文献情報の検索サービス〔そ及検索(Retrospective search)およびSDI(Selective Dissemination of Information選択情報提供)〕を,同年10月からはJICSTが開発した磁気テープ検索による理工学文献SDIサービスを,さらに昭和48年度からはアメリカのCAS(Chemical Abstracts Serviceケミカルアブストラクツサービス)から提供される検索用磁気テープ(CA Condensates)による科学文献検索SDIサービスを行ないはじめている。

(2) その他の情報センター
ⅰ) 国際医学情報センター
各国で生産される大量の医学情報を迅速,的確に収集,処理し,医学および関連分野の内外の研究者,研究機関の要求に応じて提供することを目的として,昭和47年に財団法人国際医学情報センターが設立された。このセンターでは,MEDLARSなどとの協力体制を整備し,そ及検索,カレントアウェアネスサービス(Current awareness service),クリアリングサービス,二次資料の編集発行を行なうとともに,医学文献の機械検索システムの開発を行なうことを目的としている。

ⅱ) 日本医薬情報センター
医薬品の安全性などに関する情報を収集,処理し,関係企業等に提供することを目的とする情報センターとしては,日本製薬工業協会の準備に基づいて設置された財団法人日本医薬情報センターがある。このセンターでは,日本医薬文献週報,海外医薬文献週報,日本医薬文献抄録カードを発行している。

ⅲ) 日本原子力研究所技術情報部
各国の生産する原子力に関する情報の流通・利用を図るために国際原子力機関(ISEA)の国際原子力情報システム(INIS)に日本原子力研究所が昭和44年にわが国の代表機関として参加した。同研究所技術情報部において,JICST,国際医学情報センターの協力のもとに,昭和46年からわが国の原子力に関する情報を入力した磁気テープ(年間約4千件収録)を作成し,INISに送付しており,その見返りとして送付されてくる検索用磁気テープを用いてSDIによる有効な検索技術の開発を計画している。また,INISからは,出力として磁気テープのほかに索引誌であるAtomindexおよび抄録のマイクロフィッシュが市販されている。

ⅳ) 日本特許情報センター
 内外の特許情報を収集し,処理し,民間企業体等の要求に応じて迅速,的確に提供する機関としては昭和46年に財団法人日本特許情報センターが設立された。このセンターは,特許庁に協力するとともに,外国の特許局等に対してわが国の特許情報の処理,提供を行ない,また,外国から提供される特許情報について二次加工を行うことを目的としている。

 その他,二次情報の作成などの情報活動を行なう組織として,日本貿易振興会(JETRO)海外経済情報センター,国際文化振興会,経済資料協議会,科学情報協議会等がある。
3.2.9 総理府統計局
 総理府統計局は,国勢調査その他国勢の基本に関する統計調査の実施および製表を行なうことならびに国の行政機関または地方公共団体の委託を受けて各種の統計調査の実施および製表を行うなどを重要な任務としているが,また,同局は,国の重要な統計データを収集し,蓄積するのに最も有利な立場にあることから,未整理あるいは消滅しつつある統計の活用をはかり,発表された既存統計を組み合せ,加工することによってデータの多角的利用をはかることを目的とする統計データ・バンクの設立の準備を関係各省庁との連絡・協力のもとに進めている。

4 学術情報の流通・利用の実態調査結果
 学術情報の利用等の実態については,昭和46年3月(人文・社会科学系)および昭和47年3月(自然科学系)に国立大学の教官を対象として調査されたものがあるが,そのなかから重要なものをいくつか拾ってみると次のようなことが言える。
(1) 「最近,情報の量が急増し,必要な情報を効果的に選び出すことが困難な状態になりつつあるといわれているが,このことについてどう感じているか。」という質問に対しては,「非常に困難である」とする者が36%もあり,「困難ではない」とする者は,きわめてわずかであることから,情報を効果的に選び出すことが困難になりつつあるということは事実のようである。(別図2参照)

(2) 一次資料※の利用度では,和文,外国語を問わず学術図書・雑誌はかなり利用されており,また,人文・社会科学系に限っては,古典・作品・記録等も高い利用率を示している。(別図3その1参照)
 二次資料※の利用度では,人文・社会科学系と自然科学系とでは若干相違がみられ,前者では目録の利用率が高く,後者では抄録誌の利用率が高い。(別図3その2参照)
※ この調査における一次資料とは,学術図書・雑誌,プレプリント類,調査報告書類,テクニカルレポート類,統計データ類,試験・実験・調査データ類,古典・作品・記録等,新聞・テレビ等,特許関係一次資料,ニューズレターをいい,二次資料とは,索引誌,抄録誌,目録,総説・展望(レビュー),雑誌目次集(コンテンツシート),ハンドブック・データ集等をいう。

(3) 学術図書・雑誌の購入経費私費負担額(年額)は,人文・社会科学系と自然科学系とでは差が認められる。すなわち,人文・社会科学系では10万円以上の者が61%あり,そのうち20万円以上の者が17%いる。自然科学系では10万円未満の者が75%を占めており,人文・社会科学系の方がかなり負担額が高い。(別図4参照)
(4) 大学図書館(室),文献センターに実施を望んでいるサービスでは,専門分野によりかなりの相違がある。すなわち,人文・社会科学系および自然科学系の理学,工学の分野では「他機関から文献をとり寄せてくれるサービス」を最も強く望んでおり,自然科学系の医学,農学の分野では,「知りたいと思っている事項について必要な文献を探してくれるサービス」を最も強く望んでいる。(別図5参照)

(5) 学術図書・雑誌での研究成果の発表回数(過去3年間)には,非常に幅があるが,最も多いのは1~2回,3~4回であり,両方でおおよそ全体の半分を占めている。(別図6参照)

(6) 加入学会数も分散しているが,1または2の者が比較的多い。しかし,全く学会に加入していない者,5以上もの学会に加入している者も各15%いる。(別図7参照)

(7) 学会会費の負担額(年額)については,2万円未満の者が83%を占めており,5千円以上1万円未満の者が最も多い。

III 学術情報処理体制の現状と問題点および改善のためにとるべき措置

1 一次情報(研究の成果を新たに公の流通の場に提供したものをいう。)

(1) 研究の成果は,学協会誌,紀要,研究所報告,商業誌等の一次情報誌に掲載されて公の場に提供されるが,同一専門分野の論文がさまざまな種類の一次情報誌に掲載されてその検索利用を困難にしている場合があるので,同一専門分野の論文は,なるべく当該専門分野の全国的一次情報誌に掲載されることとなるよう必要な措置をとることを検討すべきである。

(2) 学協会誌は,現在約1,200種あり,少なくとも主要学協会会誌については,レフェリー制を採用して質の高い論文を掲載することに努めており,一次情報誌の代表的存在として重要な役割を果たしているが,その出版に要する経費の大部分は,学協会の会費収入によって賄なわれているために,最近は,発表される論文数の増大や出版経費の値上がりによって研究者の会費負担を著しく増大させつつあり,近い将来において学協会誌の出版があやぶまれる事態すら予想される。
 研究の成果は社会に広く,かつ,長い期間にわたって利用される公共的性格のきわめて強いものであることにかんがみ,その発表に要する経費を現在の研究者にのみ負担させるのではなく,その公共性に着目してとくにわが国において基幹的な役割を果たしている全国的な主要学協会誌については,学協会誌の刊行に国がより積極的に援助を行なうべきである。

(3) 紀要,研究所報告等については,情報の円滑な流通の観点からは,これをなるべく全国的な学協会誌に統合することが望ましいが,しかし,専門分野の特殊性や学協会誌の論文掲載能力等との関連もあるので,それらの必要性について詳細な実態の調査分析に基づき検討を行なうべきである。

(4) レフェリー制を採用していない一次情報誌の発行機関においては,今後レフェリー制を採用する等の措置を講ずることによりその内容の精選に努めるべきである。

(5) 今後における情報量の増加に対処して,情報の円滑な流通を図る観点から,研究の成果を発表するに当たっては,ISO(国際標準化機構)等の国際的な規格によることとするよう必要な措置を講ずべきである。

(6) 情報の増加に伴い,今後は一方において発表する論文を極力短かくすることに努めるとともに,他方では需要の少ないと思われる論文やページ数の著しく多くなる論文などは印刷せず,現行を適当な保管所に保管してその要旨または抄録だけを公知し,要求のあった場合にのみ原文のコピーを提供するシステムを採ることも検討すべきである。

(7) 研究の成果で比較的市販性の乏しい学術図書については,現在文部省が実施している研究成果刊行費補助金の措置を充実する必要がある。そのほか,学術情報の伝達は,研究組織内外での個人的接触や国内および国際的な集会における発言,討論などで行なわれる。これらは速報性および予期しない情報の入手があるなどにより研究者にとって非常に重要であるので,有効に行なわれるような条件を整えることが必要である。


2 二次情報(一次情報の所在および大綱を示すもので,抄録誌,索引誌,タイトル誌,批判的レビュー等をいう。)

(1) 一次情報量の著しい増加傾向に対処して,今後,抄録誌,索引誌,タイトル誌,批判的レビュー誌等の二次情報がますます重要な役割を果たすものと考えられるので,学協会等で刊行される当該専門分野を代表する二次情報,あるいはそれらを用いて作成される磁気テープ等については,必要に応じて国が積極的にその刊行あるいは編成を援助すべきである。

(2) 外国で行なわれる国際的な二次情報作成活動に対しては,その入力の面での協力体制を維持確立することに努める必要がある。

(3) わが国においても専門分野の特殊性に応じ,わが国で生産される一次情報の電子計算機による検索システムの開発研究を行なうべきである。

(4) とくに国際的に作成された二次情報の検索システムの開発研究を促進し,利用者の要求に応じて迅速かつ安値に情報提供ができる体制の整備を図る必要がある。

(5) また,二次情報の発展した形として,特定の主題に関して多数の論文の内容を評価整理し,新しい体系を加えて知識の再編成を行なういわゆる批判的レビューは,情報の質的および事項別の選別に役立ち,情報の高次利用の機能を持つものである。したがって,このようなレビューが適切に整備されることは,一次情報のはんらんへの対処のうえで有意義であり,国および学会がその推進に対して配慮することが必要である。
 そのほか,全国的図書・雑誌総合目録,雑誌記事索引,大学図書館における図書・雑誌目録等の充実を図ることも必要である。

3 研究資料・データ
(研究に利用される文書および数値または図形等をいい,標本など文書でない研究用資料を除く。)
 研究用資料,データは,研究を遂行するための重要な素材であるが,それらの保存,利用について適切な方策を講じる必要がある。

(1) 研究資料とは,研究に利用される文書等であって,例えば各種のデータ集,研究報告書,文学作品,歴史的文書,政府刊行物等である。これらは,わが国においては,主として各種の図書館,文献センター,文書館等において保存され,利用されているものである。最近におけるこれら研究資料の増加に応じてその蓄積を高める必要があるが,その際とくに大学図書館にあっては,むだな重複を避けるため,地域的あるいは専門分野別などによる分担収集計画を策定するなどの方策を講じる必要がある。この場合,大学図書館自体が作成する収集計画の実現に対し,財政的措置を講じる必要がある。そのほか,綜合目録などの整備による相互利用の方策を講じることの重要である。(これらは,「4情報の蓄積と流通」の項と関連がある。
 また,最近においては,とくに官公庁,企業体等において発行される各種の出版物のなかに研究上有用な資料も多いので,これらが一般に利用されやすくなるように発行者側においていっそう留意することが望まれるが,大学図書館自体においてもその収集計画のなかに取り込み,その収集に努力をする必要がある。
 なお,欧米に蓄積されているものが多いインキュナブラ(初期刊本),マニュスクリプト(自筆稿本および写本)などについては,わが国の研究者は地域的にきわめて利用しにくい状況にあることにかんがみ,可能な限りその所在調査を行ない,複写依頼等を行なうサービスを設ける必要がある。

 (2)ⅰ) 自然科学領域における科学数量データは,印刷公表されたデータまたは独立に得られたデータに批判,評価を加えて集成,確立したもので,利用されやすい形で印刷公表されたものである。このような科学数量データとしては,例えば実験により得られた数値データとしての分子振動データ(分子振動数データ,赤外線スペクトルデータ等),高圧データ,生物学的データなどがあるほか,繰り返しのきかないデータとして地球物理学的観測データなどがある。これらのデータは,貴重な成果であるにもかかわらず,その数量が多いため研究論文のなかに記載されず,研究者の手元に死蔵される例も多い。
 わが国においては,すでに国際地球観測データセンター,地震観測データセンター等が設置され活動しているが,さらに必要のあるデータについては,適当な機関において評価・修正を行ない基準として確立していく必要のあるものもあるので,その評価,集成,確立活動を促進し,公表して利用に供する必要がある。
 とくに自然科学領域における科学数量データの取扱いは,国際的な活動の一環として位置づけることが必要であることから,さしあたり国際学術連合会議科学技術データ委員会(ICSU/CODATA)の活動に協力するための国内の対応する組織を整えるとともに,今後データセンター・データサービスセンターの設置の必要性が高まることが予想されるので,さらに検討を続ける必要がある。

 ⅱ) 人文・社会科学系領域における数量的データについては,主として社会経済的研究の領域において必要とされるものである。
社会経済統計資料は,政府,地方公共団体,政府関係機関が作成するものが多く,それらのうち統計法を根拠とする国勢調査,指定統計調査等の結果は広く公表されている。そのほか,指定統計調査以外の統計調査が政府,各地方公共団体,政府関係機関においてそれぞれの目的に応じて実施されているが,いずれの場合にも他の出版物と異なり,市販の有無,印刷部数,配布方針等によって一般に入手されにくい面もあるので,大学図書館等に容易に入手できる方法などについて検討する必要がある。
 また,国際社会科学協議会(ISSC)社会科学データアーカイブ常設委員会を中心として国際的な活動が進展することが予想されるので,それに対応する国内の実施体制を検討する必要がある。

4 情報における学術研究の急速な進展に伴い,国の内外における学術情報の生産が著しく増加し,また,社会における活動の結果から作成され,研究に用いられる文書などの資料の生産も増加している。このような情報量の増大に応じて,これらを効率的に収集し、適切な検索の手段を講じることなどによって,情報流通の促進を図ることは、きわめて重要なことである。とくに近時,電子計算機による検索技術の開発,通信回線を用いる情報伝達技術の進歩(国際的には、人工衛星を用いる方法も研究されている。)は目覚しいものがあり、新しい情報流通システムの確立が要請されている。
 しかしながら,わが国においては在来の形における情報流通体制(第1図書館システムと称する。)についても多くの欠陥が指摘されているので,在来の方式の改善を図るとともに新しい情報流通システム(第2図書館システムと称する。)の将来の発展のために抜本的な施策を講じる必要がある。

4.1 第1図書館システムの改善策
大学図書館、文献センターあるいは専門図書館などは、主として情報流通を目的と
した出版物(図書館,雑誌,報告類など)を収集,保管し,閲覧に供する機関である。わが国の大学においては,これらの出版物は第1段階として教室,学科単位に蓄積され,第2段階として個々の図書館(ある場合は専門別図書館または分室)に蓄積され一般に利用されるのが通例である。第3段階として全国の図書館のネットワークによって相互貸借,複写提供などの事業が行なわれている。したがって予算的にも出版物の購入費は講座,研究室に積算され,図書館には特殊な出版物の購入費のみが積算されているのが通常の方式である。比較的情報に対する需要が少ない場合には,利用する研究者にとっては身近な所で利用できる便益があるが,学術情報量が増加する状況のもとにおいては,この方式は明らかに機能しなくなるであろう。
 激増する内外の出版物を効果的に収集し,利用をはかるためには,個々の大学のレベル,地域レベル,国のレベルにおいて計画的な収集を行ない,相互にネットワークを組んでその利用を図る必要がある。このため,まず情報の蓄積と流通の国レベルの拠点として,必要な学問の分野ごとに学術研究資料館(仮称。以下「資料館」という。)の設置について検討を行なう必要がある。

(1) 「資料館」の事業
 「資料館」の事業は,それぞれの専門分野の要請に応じ,別々に設定されるべきであるが,およその内容は次のとおりである。
ⅰ) 情報の処理(収集,蓄積,検索,それらのための分類,索引語系(シソーラス),機械処理,二次情報の作成など)に関する基礎的,開発研究を行なう。
ⅱ) 主として外国で生産される出版物等の網羅的収集を行なう。この場合,重要なものであるが,各大学,研究所等で収集されているものは除き,比較的収集困難なものに重点をおくなど,収集計画の策定に関して詳細な検討を行なう必要がある。
ⅲ) 収集した出版物等について簡単な二次情報サービス(例えば印刷物によるコンテンツ・サービスなど)を行なう。
ⅳ) 収集した出版物等を研究者の利用(閲覧,複写,貸出しなど)に供する。
ⅴ) 研究者の求めに応じ,外国の関係機関に照会し,必要な資料を取りよせ,または情報を提供する。
ⅵ) そのほか,「図書館の図書館」として,個々の大学図書館の業務を援助する事業を行なう。例えば,各大学図書館等で収集した出版物等の目録カードの一括作成,所蔵目録あるいは綜合目録の作成,外国雑誌の一括購入,あるいは個々の図書館で不要となった出版物の受入れ,保存,利用などがある。
 これらの事業を行なうにあたっては,積極的に電子計算機その他の機械の導入をはかり,定期的業務,情報処理等の機械による的確,迅速な処置を行なうよう配慮することが必要である。

(2) 設置すべき「資料館」の種別
 いかなる学問の分野ごとに「資料館」を設置するかは,さらに検討を要する問題であるが,例えば「人文・社会科学」,「数学・物理学」,「科学」,「生物・医学」の各系列ごとに設置することも一案として構想されうる。しかし,学問の分野によっては,小規模ではあるが,特別な機関として従来のような「文献センター」あるいは「資料センター」の設置の必要性も考えられる。

4.2 第2図書館システムの構想
(1) 第2図書館システム(以下「第2システム」という。)
ⅰ) 学術情報のニードに対し,従来の第1図書館システム(以下「第1システム」という。)では応じられないものを"電子計算機および通信回路を中心にして応じよう"というのが,第2システムの基本的な構想である。
ⅱ) 学術情報について電子計算機および通信回路を利用した流通システムは,国レベルで当然手がけるものであるから,将来,第2システムの実用化の時期を想定し,第1システムと並行して,第2システムに先行投資を行なう必要がある。そして,第2システムの先行は,第1システムの機能を促進し,それを発展させるとともに利用者の新しい情報需要を喚起させる。第2システム施行期間において,マン・マシン・システムとしての第2システムのノウ・ハウおよびソフト・テクノロジーの蓄積が期待できる。

(2) 第1,第2システムの関係
ⅰ) 両システムの関係は,下図のとおりである。学術情報の流通効果を最適化するために第1,第2両システムの役割り,かかわり合いをどのようにしたらよいかを各学問領域・主題分野ごとに,それぞれの性格に応じ,システム運用の経済性,必要な学術情報が入手できないための利用者の研究機会の損失,システム利用の容易さ,システム規模の拡大性,両システムの連結性などを考慮して決定する。
ⅱ) 第1システムについては,急激な変更は行なわない。第2システムの定着によって,第1システムが漸次的に変更されることが望ましい。利用者の情報利用のライフ・スタイル変更のためのコミュニケーションと働きかけの期間が必要である(たとえば,自然科学では各学科,教室で雑誌を持ち,その整理と蓄積の重複によるむだがあるが,当初はそのままにしておく。第2システムのメリットが顕在化すれば,自主的に重複を避ける動きを起こすであろうことを期待し,第2システムへの参与,第2システムの浸透など周知・普及の期間が必要である。

(3) 第2システムのイメージ
ⅰ) 全体としては,中央の大型情報センターとして第1システムの特定の「資料館」に学術情報処理用の大型電子計算機システムを一組設置し,これと利用者側の端末装置を結ぶ。この場合必要に応じサブ・センター(「資料館」の支所あるいは特定の大学図書館に設ける)を設置する。利用は全国的に開放され,相互にセンターを使えるようにする。
ⅱ) 第2システムは,二次情報源の高次利用をはかることが主なる目的である。すなわち各所で作成される二次情報の磁気テープ,ディスク等を使用し,主題別,研究グループ別のサブ・ファイルを編成し,SDIあるいはそ及検索サービス等を行う。

(4) 第2システムの事前評価
ⅰ) 利用者は,一般的に専門領域,テーマの選び方,研究調査の進行状態などによって要求する情報のパターン(カレント情報・そ及情報・ブラウジングなど)が変るので,電子計算機によって打出されてくる情報のみでは心理的に耐えられないであろう。このケースの救済は,第1システムの補完によって解決することになろう。

ⅱ) 索引語系の利用に習熟していないと利用者自身が必要とする適切な情報が得られない。マン・マシン・システムであるから,利用者側と提供する側の教育は,ますます重要になる。

ⅲ) 現状では,主題分析を行ない,キーワードを抽出し,情報を蓄積する。にードがあるときそれをキーワードにおきかえ,蓄積しているもののキーワードとマッチングした情報を取り出す。これは,あまりにも機械的で,あまり創造性が働く余地がないとも考えられる。しかし,新しい発想による検索アプローチを用いれば,機械的ではない創造的な研究対象となる情報が得られる。例えば,Topological index によって実際に見出されている以外の可能な化合物について研究できる。

ⅳ) 利用者の第2システム利用の行動習慣がないから使わないではないかと考えられるが,利用のためのノウ・ハウ・,ソフト・テクノロジーの確立によって解決されると思われる。

(5) 第2システムの建設については,システム運用のための各種専門家の養成,各種のサブ・ファイルの作成・蓄積,ノウ・ハウの蓄積,利用についての普及活動,利用者側からみた利用の窓口,利用に関するフィードバック体制,利用情報のフォマット,電子計算機システム構成,第1システムとの補完体制など一連の活動を研究するプロジェクト・チームを3ヵ年位の計画で設置する。
第1, 第2システムのいずれの場合でも,国レベルの拠点を中心として,地域レベルあるいは個個の大学レベルとの緊密な相互関係を確立する必要がある。
 とくにこの関係は,第1システムから第2システムに移行するに従って強化されなければならない。この場合,研究者側の層の厚い地域に対しては,「資料館」の支所を設けることも必要であるが,所要の人員,予算を準備することによって特定の大学との協力関係を作ることも考えられる。
 第1システムを保存改善しつつ,将来の第2システムの漸次的移行を目指すものであるが,この場合第2システムの「資料館」の研究部門の果たす役割は,きわめて高く評価される。したがって,専門分野によってはこの研究部門の発足を先行させ,問題ごとにプロジェクト・チームを編成するなどして,日常業務の実施について十分な調査研究を行なうことが望ましい。現在考えられる第1,第2システムの機能を図示すれば,次の頁のようになる。

5 情報処理専門家の養成と処遇
 ここでいう「情報処理専門家」とは,学術情報流通体制の中で専門的知識や技術を生かしつつ,その機能をじゅうぶんに発揮させる専門家のことである。
 これをさらにくわしく分析するために学術情報流通体制の中で情報処理専門家が受け持つ仕事を列挙してみると次のようになる。


 これらの仕事をする専門家の養成は,図書館・情報学関係の大学,学科で行なわれる場合または関連学部で司書資格を取得する場合(索引,目録等の作成,図書館,文献センター,情報センター等での業務について),情報科学関係学科,大学院で行なわれる場合(磁気テープおよびマイクロフィルム等メディアの研究・開発,情報検索システムの研究・開発,端末装置の研究・開発,情報流通システムの研究・開発等)およびとくに養成機関はなく職場内(オンザジョブ)で行なわれる場合(論文誌の編集・出版等)などがある。その他,抄録の作成,データの評価・集成,クリティカル・レビューの作成,論文のレフェリーなど学術各分野の研究者がみずから参面する場合もある。

5.1 情報処理専門家の養成の現状と問題点
 図書館・情報学関係の大学,学科で行なわれる教育には,現在独立の養成機関として慶応義塾大学文学部図書館・情報学科および図書館短期大学がある。
 そのほかに司書の資格取得に必要な科目を開設している大学が4年制大学で62大学,短期大学で60大学(昭和47年現在)あり,そこで,毎年合わせて約5千名が資格を取得している(昭和46年度)。また,特定大学に委嘱して行なわれる司書および司書補の講習(19単位の取得)があり,この講習により司書,司書補を合わせて毎年約2千名が資格を取得している。(昭和46年度)。したがって,合わせて毎年約7千名の司書および司書補の資格取得者があり,数において大部分を占めているが,実際に図書館その他の機関に就職する者はその一部と考えられる(現職の司書および司書補の数は,公共図書館が約2千5百名,大学図書館が約5千名)。いいかえれば,司書数のバランスがとれていない。また,これを質的にみると,司書資格取得科目が専門の学部または学科でなく,関連学部(教育学部,文学部)に置かれていて,しかも必要な単位数がわずか19単位であり,その質または水準において欧米諸国に著しく劣っている(アメリカにおいては養成の主力が大学院であるし,イギリスにおいても,このレベルの養成期間が増加しつつある。)。
 大学図書館の図書館員は,大学における教育・研究の要請に応じ,その養成を的確には握し,情報サービスを提供する職務をもつものであることから主題分野における相当程度の知識と情報検索等の知識,技術を必要とするものであるから,少なくとも学部レベル,できれば大学院レベルの養成機関の設置が望まれる。また,前述の司書資格は,本来公共図書館に適用されるものであるから,大学図書館または専門図書館で要求される専門職の資格要件は別途検討される必要がある。このような図書館にふさわしい資格がないため,当該図書館員の処遇にも欠けるところがある。
 情報科学関係学科,大学院で行なわれる教育としては,現在大学院レベルでは,東京大学をはじめ5大学の大学院に情報工学専攻が,大学学部レベルでは,工学部情報工学科,経済学部管理工学科および理工学部情報科学科が,17大学に設置されている。これらの卒業者または研究機関によって,前述のような情報処理技術の研究・開発(情報処理のメディア,システム,装置等の研究・開発等)が行なわれることが期待される。しかし,現在のところそのすべてがカバーされているとはいえない。

5.2 今後とられるべき施策
 情報処理専門家の養成は、上述のように図書館・情報学関係の教育研究機関または情報科学関係の教育研究機関等で行なわれているが,最近の情報科学の発展に伴い,従来の図書館学は情報科学の影響を大きく受けて図書館・情報学とも呼ばれるようになった。このすう勢は今後とも進むものと思われる。一方新たに設置され始めた情報科学関係の教育研究機関でも,さらに文献情報処理あるいはドキュメンテーションの要素を包含した研究が期待される。そして両者が歩みよることが望ましい。このような背景の中で,今後とられるべき施策は次のとおりである。

5.2.1 図書館・情報学関係
(1) 養成機関は原則として各学部で諸専攻分野を修めた者が大学院過程で図書館・情報学を修めるというコースを主力とすべきである。 
 ただし,養成課程の基盤をもつという意味で学部課程を設けることおよび実務的な営造物にかかるものであるので短大課程を設けることなど各種レベルの養成コースの検討も行う必要がある。

(2) 現行の司書資格取得に必要な19単位ではじゅうぶんでないと考えられるので,大学図書館および専門図書館に適切な基準は別途検討すべきである。

(3) 現職の図書館員の再教育を推進すべきである。
 図書館・情報学の分野は,情報科学の影響を受けて発展途上にあるので学生時代の習得だけではじゅうぶんでない。現職の図書館員等が常に新しい専門的知識や技術を吸収できるよう各種の研修・講習の機会が確保されるとともに,正規の教育機関で再教育を受けられるような制度が検討されるべきである。

(4) 新しい機関をつくるだけでなく,既存の養成機関を国が政策的に援助することによって(3)に掲げるような目的を達成することも検討すべきである(例えば,現職者の教育のための夜間課程を設けるなど。)。

5.2.2 情報科学関係
 情報科学関係の学科,大学院で行なわれる教育研究に文献情報処理あるいはドキュメンテーションの要素が加えられることが望ましい。

5.2.3 その他
(1) 情報科学および図書館・情報学に関する利用者教育を積極的に行なうべきである。
 情報科学およびその応用分野は,急速に発展しつつある新しい分野であるので一般の利用者の理解が得られにくいという一面がある。今後この分野の順調な発展と開発次第では,学術情報の分野でも画期的な体制が出現することが期待される。しかし,利用者の理解がなければ折角開発されたシステムもじゅうぶんに利用されないおそれがある。したがって,情報科学による新しいシステムや技術の開発と並行して利用者教育が不可欠の要件である。この利用者教育は研究者や大学院学生はもちろん学部学生に対しても実施されることが望ましい。なお,従前の図書館に関する利用者教育もないがしろにできない。

(2) 養成機関の整備と並行して,新たに整備すべき養成機関のレベルに見合う情報処理専門家の受け入れ態勢および処遇を検討する必要がある。

(3) 情報処理専門家の社会的需要をは握し,10~20年先を見通してその需要供給関係を調査分析する必要がある。
 図書館以外の情報処理専門家については,いわば,新しい職域であるためその職場と要員の予測は現在のところ明確にしにくい。また,新しいタイプのレベルの高い図書館員にどれ位の需要があるかも明確ではない。しかし,情報問題の現状から見てこれらの人材が今後必要となることは確かであるので,長期的展望に立った情勢分析が必要である。これに関連して,情報専門家の養成に当たる教官の需給関係も見逃せない重要問題である。

6 その他
6.1 クリアリング・サービス
 研究機関,研究者,研究資料などに関する状況を,研究者のみならず広く一般の求めに応じて提供するサービス機構を整備することは重要なことであるが,それらはそれぞれ主題に関する情報が蓄積されている個所において行なわれることがもっとも適当である。したがって研究資料に関しては,それぞれ分野別に設けられる国レベルの学術研究資料館の機能の一環として実施されることが望ましい。
 そのほかわが国の研究機関,研究者などの活動の状況を広く一般に案内するダイレクトリの作成なども重要な事項であることから適当な機関における実施を促進することが必要である。

6.2 著作権との調整
 学術情報の流通を促進する場合,著作権の保護についてじゅうぶん意を払う必要がある。わが国は,ベルヌ条約,万国著作権条約に加入しており,外国の著作物については,その著作権を侵害しないようにとくに留意すべきである。しかし,研究成果である学術情報は,広く一般に利用されることを目的として生産されるものであるので,図書館など情報機関における複製サービスの制限を緩和するなどの措置を講じる必要がある。

6.3 学協会業務の共同化
 わが国の学協会,とくに規模の小さい学協会においては,一次情報誌の編集,刊行をじゅうぶんに行なうことは困難である。また,編集,索引作成,組版などに電子計算機を導入する必要性が考えられるので,学協会の業務の共同化のため電子計算機,会議室などの共同施設をもつ学協会会館などの設立が望まれる。このような会館の設立には政府の援助があることが望まれる。