今後における学術情報システムの在り方について(答申)
今後における学術情報システムの在り方について(答申)

昭和55年1月29日

学術審議会第23号

 本審議会は、先に諮問のあった今後における学術情報システムの在り方について、学術情報資料分科会において審議を行い,その結果に基づき総会において更に慎重に審議し,別紙のとおり結論に到達したので,ここに答申いたします。

別紙
学術審議会
 学術審議会は,昭和53年4月学術情報資料分科会に学術情報部会を設け,我が国における学術情報の流通体制の在り方について審議を重ねてきた。同年11月には,文部大臣から「今後における学術情報システムの在り方について」諮問を受け,同部会で引き続き集中的に審議検討を行い,昭和54年6月,中間報告を発表した。この中間報告に対し,国公私立大学をはじめ関係機関等から寄せられた意見について更に検討を加えた結果,最終的に今後における新しい学術情報シスデムの構想をとりまとめたので,ここに答申を行うものである。

1 はじめに

 近年における学術研究の急速な発展に伴い,研究活動の諸過程においてまたはその結果として生産される学術情報の量は急激に増大してきた。今日,世界において流通する学術に関する文献情報は年問数百万件に上ると言われ,10年間で倍増する傾向にある。更に学術研究の進展に伴い,学術情報はその範囲,内容,形態,利用の態様などにおいても多様化しつつある。
 このような多量かつ多種多様な研究成果を研究者が常に迅速,的確に把握できることが優れた独創的,先駆的な学術研究の展開を図っていくための不可欠の基礎的要累となっている。特に,例えぱ,環境,資源,エネルギー問題等の学際的課題の解決のためには広く学術諸分野の英知を結集する必要があり,学術情報のもつ意義と波及効果は一層増大しつつある。本来,学術情報は,高度な知的活動の所産であり,それ自体高い価値を有するのみならず,一国の社会,経済,文化の発展にとって貴重な資源である。このことからも,その蓄積と有効利用のための手立てが図られるべきである。
 我が国においては,人文科学,社会科学及ぴ自然科学にわたる学術研究は主として大学及びその関連研究機関において行われており,従事する研究者数は既に14万人を超えている。これら研究者による教育・研究活動は,我が国における知的諸活動の源泉となっているが,研究活動に際して必要な学術情報の収集と利用については,これまでは主として各研究機関または個々の研究者の活動として行われてきている。今日の学術情報の多量化と多様化の状況においては,このような個別的な努力では十分な情報収集の成果は到底望めず,研究者の間で新しい事態に適した学術情報の流通システムの整備が強く望まれている。更に,個別的な情報収集利用は多くの重複投資を伴いがちであり,公共資本形成とその利用の観点からみても効果的とは言えず,全体として効率的で高度の要求にこたえ得る総合的なシステムが組まれる必要がある。
 学術研究は,真理の探究を旨とする普遍的・国際的な性格を有するものであって,我が国としても世界の学術研究の発展に可能な限り貢献することが必要である。このためにも我が国自身による優れた学術情報の集成と提供のシステムを整備し,これを通じて我が国の研究成果を広く世界に提供し,国際的な学術情報流通の一翼を担っていくことが重要である。このような国際協力観点に立脚することにより,初めて諸外国と対等にしてかつ効果的な学術交流が円滑に進められるばかりでなく,我が国の研究の高度な発展と研究成果に対する国際的評価の確立に資するものと考えられる。
 既に,学術情報活動における先進諸国では,研究情報の効果的な利用のためのシステム作りが積極的に進められてきた。特に米国においては情報の機能に対する強い認識と需要を背景として,情報の蓄積とその流通システムが高度に発達しており,また西ヨーロッパ各国においてはそれぞれの歴史的・社会的諸条件のもとで独自の情報システムを開発しているだけでなく,各国を結ぶヨーロッパ情報ネットワークの開発も進められている。
 一方,我が国の状況をみると,これら先進諸国に比べて情報の有効な入手,提供・利用のためのシステム作りにおいて後れをとっていると言わなければならない。我が国とこれら諸外国との学術情報活動における現在の格差が今後なお続いていくならば,我が国の学術研究の国際的水準の維持・発展にとって大きな障害になるものと予想される。
 学術審議会では,既に昭和48年10月に「学術振興に関する当面の基本的な施策について」の答申を行い,その中で学術情報の多量化,多様化に伴う精選された情報の入手と提供のための効果的なシステムの確立の必要性について述べ,情報流通のための基本的な方策を示した。この答申は,その時点における学術情報の種々の問題点と将来のあるべき方向の大要を明らかにしたものである。文部省はこの答申の趣旨に沿い,幾つかの施策を行ってきた。特に,学術情報のシステム化については,科学研究費補助金(特定研究)に基づき,多くの研究者の参加により必要な各種の知識や技術が研究開発され,幾つかの顕著な成果が得られた。
 もとより,これらの施策や研究開発はいずれも先導的,個別的なものであり,これらを組織化し,有機的に連携し,総合的な学術情報システムを形成していくことは今後に残された重要課題である。前期の諸条件を背景として,学術審議会は昭和53年4月から新たに学術情報資料分科会に学術情報部会を設け,学術研究に最適な学術情報システムのあるべき姿について鋭意検討を進めてきたが,同年11月,文部大臣から「今後における学術情報システムの在り方について」の諮問を受けた。学術情報部会においては,引き続き集中的に審議を行い,昭和54年6月,中間報告を発表した。その後,国公私立大学をはじめ関係諸機関に広く意見を求め,これらの意見を検討した結果,最終的に今後における新しい学術情報システムの構想をとりまとめたので,ここに答申を行うものである。
 この答申は,次のように構成されている。次の第二章では,我が国における学術情報の流通シスデムの現状を分析し,今後取り組むべき諸課題を指摘している。その際,字術情報に関する問題の諸相を,一次情報の収集整備と提供システム,情報検索システム,及びデータベースの形成の三要索に区分し,それぞれについて論している。
 第三章では,第二章の分析に基づいて,あるべき新しい学術情報シスデムの考え方と整備の方策を示している。そこでは学術情報システムの基本的な考え方と諸機能について述べるとともに,システムを構成する機関群の役割と整備の在り方について述べている。
 最後に第四章では,将来の学術情報活動の欠くべがらざる推進力としての専門要員の養成確保の現状と将来の方策について述べている。
 なお,この答申で取り扱われる諸問題は,主として国公私立大学その他の高等教育・研究機関においてその機関の目的に即して行われる教育・研究活動の範囲において考えられるものである。

2 我が国における学術情報流通システムの現状と新しい展開への課題

(1)現在までの学術情報活動の概観
 学術研究上必要とされる学術情報には種々のものが含まれる。まず,研究論文等の研究成果として初めて公共の場に提供される一次情報,一次情報の取得・利用を容易にするためこれを加工し集約した目録,索引,妙録等の二次情報及び一次情報を総合し濃縮し再編成した総説・レビュー等のいわゆる三次情報などである。更に,人文・社会科学の分野においてはそれ自体が研究の原材料となる歴史的な文書,官公庁の統計などがあり,自然科学の分野においては実験・観測データ等の原情報がある。これらを情報の表現形態によって分けると,文献情報,数値情報,図形情報などの種別がある。また,これらの情報の媒体をみると,図書,逐次刊行物のほか,学問分野によっては重要視されているテクニカルレポートやプレプリントなどの印刷物がある。更に,マイクロ形態その他の新しい形態の情報媒体も普及してきたばかりでなく,現代におけるコンピュータの急速な発達により,大量の情報を収納し迅速に検索するための機械可読の形になったいわゆるデータベース(数値情報等のデータバンクを含む。)が利用されるようになっている。
 学術研究の展開に際しては,これらの多様な学術情報の中から適時に,適切な方途により必要な情報が提供される状態にあることが望ましい。この観点からみると,これまでの学術情報に関する整備の状況は今日のように情報の量的拡大とその高次利用が急速に進展している時代には十分とは言えない。
 まず第1に,一次情報の収集・提供は,伝統的情報媒体である図書・逐次刊行物等については各大学の図書館等で学内における個別の需要に応じて行われてきた。そのため,全国的な見地からみると総合性を欠くばかりでなく,特に最新情報の収集について不足している部分がある。近時専門分野に応じて体系的に一次情報を整備する方策が開始され,ようやくあるべき方向に進み始めた段階である。
 第2に,二次情報の利用を中心とする情報検索シスデムについてみると,今日の増大しつつある情報量への対応は,高度のコンピュータ技術を前提としたデータベースの利用が効果的であるが,現時点においては,後述のとおり,幾つかの大学で先導的なシステムが部分的に研究開発され試行に移されている段階にあり,我が国の大学関係者に適した検索システムの整備は今後に残されている。
 第3に,我が国の学術研究の成果を中心とした特色あるデータベースの形成は,学術情報活動における重要課題であり,この面については目下幾つかの専門領域において先駆的な研究開発が行われている。
 これら一次情報の収集提供システムの整備,情報検索利用システムの構成及び我が国独自のデータベースの形成の三点は,我が国の今後の学術情報流通シスデムを整備するに際して構想すべき基本的な要素と考えられる。これらの各要素が整備・充実されるとともに有機的に結び付き,一つのシステムとして構成されていくことが必要である。
 以下に,より具体的に,これらの各要素について学術情報活動の現状と今後の課題を述べることとする。

(2) 一次情報の収集整備とその提供システム

① 一次情報収集整備の意義
 学術研究の成果としての一次情報は,図書,学術雑誌,学位論文,テクニカルレポート,学会報文集,特許文献,調査報告書,統計データ集,その他様々な形態をもって流通している。研究者が関連分野の研究の実態と動向を的確に把握し,先導的かつ効率的に研究を進めるためには,二次情報等を経て必要な一次情報に到達するとともにその内容を詳しく検討しなければならない。この意味において,二次情報の対象となった一次情報については少なくとも国内のいずれかに所在し,国内の研究者にとってその所属のいかんにかかわらず利用できるシステムが整備されることが望まれる。

② 我が国における一次情報の収集・利用状況
 一般に,我が国で学術研究に必要となる図書,学術雑誌その他の刊行物は,主として大学図書館,国立国会図書館,公共図書館において収集され,求めに応じて利用に供されてきた。現在,これら三種の図書館が所蔵する資料は約1億7,000万冊であるが,その内の約60%は大学に所蔵されている。公共図書館は約38%を有しているが,学術研究という側面からは,一部のものを除きその対象となる蔵書は少ない。この意味で我が国における学術研究用の一次情報は,その大部分が大学に所在していると言える。
 大学図書館は,これまでそれぞれの学内の必要に応じて収集を行いそれなりに貴重なコレクションを所有しているが,なお学内的にも全国的見地からも,体系的な収集という角度からは十分とは言えない現状である。自然科学の分野については,日進月歩の研究成果を迅速に入手する必要性が高く,世界的な情報量の増大に対応することが望まれ,このため,文部省では,昭和52年度から自然科学系外国雑誌を購入する経費を予算化し,全国的見地からこれら一次情報収集の補強を図る措置を講じている。すなわち,医学・生物学,理工学及び農学の3分野についてそれぞれ拠点図書館を指定し,ここで我が国に欠落している一次情報の収集整備を図ることとした。現在,学術研究上必要とされる世界の現行の学術雑誌の数は少なくとも5万タイトルと言われているが,この措置により,次第に整備充実が図られている。また,人文・杜会科学系の分野については,昭和53年度から外国図書購入のための予算措置が講じられ,全国的な共同利用に資する大型コレクション等の整備が図られつつある。私立大学については,私立大学の研究設備に対する補助の制度により,従来から図書の充実が図られてきている。各図書館の所蔵する図書,学術雑誌等の相互利用の重要性は早くから関係者の間で認識され,比較的活発に行われており,年間30万件を超える実績を有している。
 更に,大学の研究活動を背景として,特色ある分野の資料収集が幾つかの機関で計画的に行われている。例えば,人文・社会科学系では国文学研究資料館,国立民族学博物館をはじめ,東洋学,日本経済統計,外国法等の各種の文献センターなどがある。また,自然科学系では,高エネルギー物理学研究所,国立極地研究所,東京大学宇宙航空研究所,名古屋大学プラズマ研究所などがそれぞれの専門分野について数量データ等の資料センターとしての機能を果たしており,更にその発展が期待されている。

③ 今後の課題
 まず第1に,一次資料の体系的・効果的な収集整備を図ることが必要である。そのためには,拠点図書館が既に指定されている自然科学系の3領域については,国際的データベースに収載された学術雑誌を集中的に集めることを当面の重点とすべきである。これとともに,入文・社会科学も含め必要な分野については,全国的観点から学術雑誌及び図書の網羅的収集整備を図るべきである。同時に,収集された資料の全国的利用を更に効果的にするための手立ても十分考慮される必要がある。
 第2に,個々の大学図書館においても当該大学における教育研究上基本的に必要とされる図書や学術雑誌を整備すべきことは言うまでもないが,これら資料を迅速,的確に利用者に提供するためそのサービス機能を格段に改善・強化する必要がある。そのためには,全学的立場から図書館組織のより適切な管理,調整を進め,必要以上に細分化されたサービス単位や配置箇所の合理的な集約化を図るとともに,図書館の事務処理システムを更に改善して,利用者の情報需要に十分にこたえ得るサービス機能を備えることが必要である。
 第3に,各大学の図書館間の相互協力を一層強力に推進していくことが重要である。個々の図書館が当該機関における情報需要のすべてにこたえることは今日においては不可能であり,したがって,個々の図書館におけるサービス活動は図書館間の相互協力の上に成り立っていると言っても過言ではない。その意味において,図書館間の資料の円滑な相互利用の体制の強化を更に進める必要がある。
 第4に,新しい形態の一次資料の収集整備の問題がある。研究活動の進展に伴って,一次資料の形態も図書,学術雑誌にとどまらす多様化してきたが,これらの新しい資料の体系的収集と提供を図る必要がある。

(3)情報検索システム

① 情報検索システム確立の重要性
 幾何級数的に増大する一次情報の中から真に必要とする情報を的確に入手するためには,今日においてはデータベース化した二次情報により検索することが最も効果的である。現在,幾つかの分野における研究情報については国際的な二次情報デ一夕べ一スが流通しており,コンピュータによりデータベースから必要な情報を入手することが可能となりつつある。先進各国においては,既にそれぞれの国における諸条件に最も適した形で情報検索システムが整備されてきている。我が国においてもその現状を踏まえて,学術研究に最も適合した情報検索システムを確立していくことが将来における学術の振興にとって重要な基盤となると考えられる。
 言うまでもなく研究者は,研究活動の諸過程において,関連あるテーマについての内外の研究動向やこれまでの研究成果に関して十分な知識を得ておくことが何よりも必要である。これを従来の手作業による文献探索の方法で漏れなく行うことは,現在の膨大な情報量を対象とするとほとんど不可能に近い。この意味においてもコンピュータを利用した情報検索システムは極めて大きな意義をもっており,今日考えられる情報検索の方法として最も効果的なものと言うことができる。このような検索システムの効果としては,単にコンピュータによって迅速,的確な検索が可能になるだけでなく,コンピュータネットワークの形成によって,散在する各種の情報資源の総合的かつ効率的な利用が図られるとともに,情報活動における地域格差の解消が格段に進むことが期待される。

② 我が国における情報検索システムの概要
(ア)文献情報データベースの検索システム
 新しい情報活動の最も顕著な一面として,情報検索システムの開発については我が国の大学関係においても既に幾つかの試行や実験的サービスが実施されている。昭和48年度以降文部省の科学研究費補助金(特定研究)により,「広域大量情報の高次処理」(昭和48年度~50年度)及び「情報シスデムの形成過程と学術情報の組織化」(昭和51年度~53年度)の二つの一連の研究プロジェクトが進められ,我が国の情報関係の研究開発にとって数多くの成果を上げている。この研究では合わせて500人以上の研究者の共同研究により,学術情報のもつ諸問題についての知識や技術が開発されたが,その中でデータベースのオンライン検索システムの試行が行われ,既にその効用は広く認識されている。具体的な成果としては,昭和50年7月から東京大学大型計算機センターにおいて,我が国で初めてオンラインで情報検索サービスを全国の大学等の研究者に提供した。このシステムは,TOOL-IR(TOkyo University On-Line Information Retrieval)と呼ばれ,実験的サービスであるにもかかわらず急速に需要が伸び,今日では全国で約570の端末機から広く利用されている。また,筑波大学・広島大学,幾つかの大型計算機センターや国立大学共同利用機関等において,世界の主要なデータベースの利用システムの開発や実験的な検索サービスの提供その他の関連研究が進行中である。なお,筑波大学学術情報処理センターでは,現在世界における最も代表的なデータベース形成提供者であるChemical Abstracts Serviceの日本における窓口である社団法人日本化学情報協会との共同研究により,例えば化合物登録番号あるいは物質の名称や構造式などからの検索を可能とするなど高度の情報提供を行い得る体制になっている。一方,大学以外の機関における情報検索サービスとしては,日本科学技術情報センター(JICST)のJOIS(JICST On-Line Information System)がある。このサービスの特徴はJICSTによって形成された日本語のデータベースによる情報提供等を行っていることである。また,最近では,米国の商業的情報検索シスデムが日本にも進出し,サービスを提供するようになっている。
 大学等における学術研究は高度の先導性をもつものであって,復数分野にまたがる横断的利用,高度の専門的需要に応ずる情報の再編と付加,論理深度の深いデータベースの利用構造等,高度な情報構造をもつものが必要となる場合が多い。したがって,このような高度かつ多様な要望にこたえるためには,先導的な学術情報検索サービスを実現していくことが重要である。

(イ)所在情報の形成・検索システム
 以上の情報検索サービスは文献情報のデータベースに関するものであるが,総合的な学術情報システムを形成するには,図書,学術雑誌等の目録情報のデータべ一スと所在情報のデータベースの検索利用を包含することが重要である。米国,英国,西ドイツその他の諸国においては,自国において刊行された図書,雑誌等の目録情報をデータベース化(MARC:MAchine Readable Cataloging)しており,既に外部に提供している。
 我が国では国立国会図書館が昭和46年から和書のMARC作成を手掛けているが,まだ外部へ提供するには至っておらず,その重要性にかんがみ早期の完成と提供が待たれている。 このMARCデータベースを基にし,コンピュータと通信網を利用した極めて効率的な目録作成・所在情報形成のシステムが特に米国において高度に発達し,既に同国内全域に広くネットワークを構成し,大学図書館をはじめ多くの図書館が利用し,目録業務の合理化と全国的な所在情報の形成による図書館間の相互利用など,国内の総合的な資料の運用に資している。
 文部省においては,MARCデータベースの活用と我が国における学術雑誌の所在情報の形成については年来種々の施策を進めてきている。例えば,欧米の図書資料について各大学図書館の必要とする目録を提供するシステムが昭和47年度から米国のLC-MARCのオフライン処理等により運用されている。今後,我が国においてもオンラインシステムにより洋書,和書のMARCデータベースを利用し得るようになれば,全国の大学図書館がそれぞれ端末機器を通じて資料整理を行うことなり,整理業務の著しい能率化をもたらすばかりでなく,同時に,自動的に全国的な所在情報が形成されることとなる。これによって,一次情報がどこに所在するかが記録され,図書館間の相互利用を格段に進めることができる。
 これまで,学術雑誌の所在情報に関する印刷物の刊行は文部省で継続して行われてきた。昭和50年に国内約340機関を網羅した「学術雑誌総合目録・自然科学欧文編」がコンピュータにより編集・印刷・刊行され,昭和54年3月に改訂版も出版されている。更に現在人文・社会科学欧文編の総合目録も作成されつつある。このようにこれらの情報も既にデータベース化され,あるいはその過程にあり,将来のオンライン検索が待たれている。

③ 今後の課題
 まず第1に,全国各地の研究者の情報需要にこたえるため,情報検索シスデムを構成する必要があると考えられる。現在の大学における情報検索システムはいずれも開発段階にあり,データベースの数も学術研究の推進に必要な数からすると十分とは言えない。
 文献情報,数値情報,図形情報等の各種のデータベースを集中的に整備し,検索利用できる方策を確立する必要があり,とりわけ,目録情報,所在情報のシステム化については,全国の大学図書館においてもその業務の改善,合理化のために早期実現が期待されている。
 第2に,この検索システムと情報の最終利用者である研究者とを結ぶ窓口機能を充実させる必要がある。この機能は一次情報の収集提供機能とともに,大学等の図書館が担うことが最も適当と思われるが,各図書館はこの面でのサービス能力の開発について積極的に努めていく必要があろう。
 第3に,情報検索システムが真に効果的に機能するためには,各種のデータベースの管理と情報提供サービスを行う機関,大学図書館等が全国的観点から相互に有機的に連結されている必要がある。

(4)データベースの形成

① データベース形成の意義と必要性
 現在,世界で流通する学術情報のデータベースは,その大部分が米国で,若干のものが西ヨーロッパの幾つかの国で生産されている。これは第一義的にはそれぞれの国における情報需要に基づいて形成されているものである。我が国では,このような文献情報データベース形成事業はまだほとんど行われておらず,米国等に依存している状況にある。
 しかしながら,我が国にも学術研究の動向に即応した固有の情報需要があり,外国で形成されたものだけでは的確性,効率性において不十分なものとなることは避け難い。また,我が国自身による優れた学術情報の集成システムをもつことなしには国際的な学術情報交流において先進国と対等な地位を保持し,効果的な交流を進めることは困難になろう。したがって,我が国の学術研究の円滑な進展を図るためには,幾つかの分野について我が国に適したデータベースの形成を進めることが必要である。

② データベース形成の現状
 現在,世界中で形成されているデータベースの総数は約400種で,その70%のものが米国で作られている。これに入カされている情報件数からみると年間推定7,000万件の80%以上が米国で,残りの20%弱のものが主として西ヨーロッパの国々で生産されていると言われている。我が国は一次情報の生産では大き比率を占めているが,それを二次情報化する上では寄与するところが少ない。
 科学研究費補助金の特定研究では大学その他の機関の研究者の手により幾つがの注目すべきデータベース形成の試みがなされているが,実用化の域に達しているものはわずかである。JICSTは主として企業等に向けて日本語による「理工学文献ファイル」を形成している。
 このほか,学術研究に関連して幾つかの注目すべき別の種類のデータベースの形成がみられる。大学その他の関連研究機関の研究者についての各種の情報や,文部省科学研究費補助金の助成の対象となった研究者のうち年間1万5千人についての研究計画に関する情報などがデータベース化されている。

③ 今後の課題
 現在幾つかの注目すべきデータベースの形成やその胎動があるが,いずれも個別的な試行の段階にある。
 そこでまず第1に,これらのうち重要でかつ今後発展の可能性のある分野については,慎重に検討のうえ,研究,試行の段階から継続的な事業として定着させていくことが重要である。その際には適切な総合的調整の下に形成作業が進められなければならないと考えられ,対象とするデータやそれらの収集源等の問題については,それぞれの研究分野や領域の特性,将来の発展の見通し等に関連して検討を進めるべきである。
 第2は,主要な国際的二次情報形成事業に対する我が国の分担協力を進める問題である。世界における学術情報流通において大きな役割を果たしている幾つかの大規模な国際的データベースに対して,我が国はごく一部のものについて協力をしているにすぎない現状である。今後は,学術の国際協力の観点及び我が国の多くの優れた研究成果の国際的流通と評価の獲得の観点から,これらの事業に対して一層の協力を図るとともに,国際的に応分の発言権を留保していく必要があろう。

(5) 新しい展開への基礎的条件の充実

 学術情報にかかわる諸活動は上述のとおり個別的ではあるが,いろいろな形で展開されてきた。一部は既に実施に移されているもの,高度な試行段階にあるものまたは研究開発中のものもあるが,いずれも学術情報流通システムの個々の機能を担う上で重要な基礎をなすものである。これらの個々の機能を結ぶためのハードウェアの側面を受け持つものはコンピュータとその通信網である。
 これらについては,既に国立7大学に設置された全国共同利用機関としての大型計算機センターを中心として,その利用技術の開発及びコンピュータネットワークの整備が行われている。このネットワークは各地のほとんどすべての国立大学及び一部の公私立大学をも結んでいる。更に,技術的には,この七つの大型計算機センターを結ぶコンピュータネットワークも新しいデータ網を利用して全国的な総合的ネットワークを形成できる段階にきている。
 今後の学術情報流通システムの中で重要な役割を担う大学図書館においても,既に幾つかの図書館で個別的にコンピュータの導入と利用が行われてきている。更に,現在,全国的な所在情報のシステム化とより高次の情報提供業務の合理化等を内容とする大学図書館トータルシステムの研究開発とが進められている。これらの状況を勘案すると,我が国において新しい学術情報システムを整備する基盤的諸条件は,既に整ってきたものと言うことができる。

3 新しい学術情報システムの考え方と整備の方策

(1) 「学術情報システム」の基本的な考え方
 新しい学術情報システムは,学術研究活動の諸過程で必要とされる各種の情報を的確にかつ効率的に利用者に供給するシステムでなければならない。そのためには,第1に,学術情報に関する必要な諸機能が有機的に連結し,これらが一つの総合化されたシステムとして組み立てられることが重要である。すなわち,一次情報その他の情報を,可能な限り全国的見地から体系的,効率的に収集・整備するとともに,必要な情報を利用するための情報検索を迅速にかつ容易にするための手段を確立し,必要とされる情報を迅速,的確に提供するなど整合性ある単一の総合システムとして構成する必要がある。
 第2に,新しいシステムは資源共有の考え方を基調として構成することが有効である。すなわち,これまで既存の各大学等の諸機関において蓄積されてきた人的,物的な各種の資源,今後新たに蓄積される可能性のある資源等を含め,有効な相互利用を前提とし,機関間の全国的なネットワークを構成することが望ましい。
 第3に,新しい学術情報システムが学術研究に取り組む研究者にとって最適のシステムであることが重要である。学術研究は,分野が極めて広範にわたり,かつ専門性の高いものであることから,研究に用いられる情報は,内容の総合性,多様性,高次性,先導性などが強く要求される。このような学術関係の需要に応ずる情報システムを構成することは,研究の基盤を強化し,優れた研究成果につながるものと考えられる。
 このような角度から,新たに学術研究に必要な情報についてのシステムを構成していくことは,今後,産業構造としては知識産業を主体として推移するとみられる我が国の在り方にとっても,息の長い,しかし最も有効な先行的投資の一つと言うことができる。

(2) 学術情報システムの各種機能

① 一次情報の収集・提供機能の充実
 一次情報に関する我が国の現存資源は計画的に整備されつつあるが,なお世界に流通する総量に比べて十分とは言えず,その整備を図る必要がある。その際,新たに一元的な一次情報の全国センター機関を設置するのは効率的ではなく,むしろ,既存の大学図書館等の機能の充実と再編成等によって,全国的なネットワークを形成し,これにより資源の活用を図ることを基本的な考え方とすべきである。このため,幾つかの専門領域については既存の図書館のうちからその要件を備えるものを拠点図書館として指定し整備を図りつつあり,これを更に拡大・充実する必要がある。
 これらの拠点図書館における資料の収集に当たっては,それぞれの分野の特性に応じ適切に行われるべきことは当然であるが,主要な国際的二次情報の存在する分野にあっては,それに採録されているものを中心にして整備を図ることが当面の急務である。また,拠点図書館が全国の利用者に対し円滑な提供サービスをなし得るようにすることが必要である。
 なお,図書については人文・社会科学系分野において研究上特に重要な意味をもつ場合があるので,既存の大学図書館等の機能を活用し,適切な分担と協力によって整備を図るべきであろう。
 テクニカルレポート,調査報告書,学会報文集などの資料等のうち,研究分野により必要性,入手経路,利用形態等の特殊性のため通常の図書館活動では対応し難いものについては,それぞれの専門研究機関等最も適切な機関において整備に当たることが望ましい。 歴史的文書や官公庁出版物等については,その収集の方策や利用の形態がここで述べた一次情報のそれとは若干異なっているので,別の措置が考慮されるべきであろう。
 一次情報の収集とともに重要なことは,その提供機能の改善である。学術情報システムはネットワーク構造を形成する各機関相互の緊密な互恵互助の原則の上に成立する。したがって,各図書館は資料の相互利用活動の改善,促進に積極的に取り組むべきである。
 なお,情報資料の増大に伴い全国的観点からの資料の体系的保存も重要であり,学術情報システムの整備に応じて,今後検討すべき課題である。
 一次情報の収集,提供等にかかわる大学図書館の重要性にかんがみ,その機能の拡大と円滑な活動の運用を図るため,多種の現行の方式や諸制度についても改善に努める必要がある。

② 情報検索システムの確立
 学術情報の検索システムについては,多くの基礎研究の上に既に試行として幾つかの高水準のシステムが形成され,一部の分野ではあるが多くの研究者の日常的利用に供されている。しかし,これらは言わば個々の研究開発過程の延長として行われているもので,その対象とする分野,取り扱っているデータベースの種類,処理能力等において幾つかの制約があり,サービス業務としての安定性に欠けている。これらの試行的システムを通じて,研究者間に今後の研究活動における不可欠の条件としての情報検索シスデムの確立に対する要望が高まっている。
 これからの検索利用システムは,学術研究に必要な各分野におけるデータベースを対象とし,既存の大型計算機センター群その他を連結した全国的なネットワーク構造として推進する必要がある。一方,これらのかなり多くのデータベースを幾つかの大型計算機により分担して一つのネットワークの中で取り扱うシステムを構成することについての知識・技術の蓄積と発展が重要である。
 従来,大型計算機センターを中心とするコンピュータネットワークの基本理念あったコンピュータ資源の共有は,前述のデータベースの共同利用のための全国的ネットワークの形成によって,更に徹底されることになり,それぞれのコンピュータの持つ一般的な計算機能はもちろん,その特殊なハードウェア,ソフトウェアも全国的レベルにおいて共有し得ることとなる。学術研究の諸過程におけるコンピュータの利用は年とともに急激に伸びており,その多様な需要に対応する能力をコンピュータが等しく所有することは必ずしも効率的とは言えず,それぞれの特色ある機能を相互に活用することは総体として望ましいと言えよう。全国的コンピュータネットワークの形成は,この意味においても有意義なものである。

③ データベース形成の促進
 今後この学術情報システムにおいて形成されるべきデータベースは,既に世界に広く流通している一般的な利用を目指すものとは異なり,我が国の学術研究の進展の方向を踏まえ,内容において高度かつ先導的ではあるが当面商業的関心の対象とならない領域に関するものや,高度の情報構造を有するものとなろう。したがって,これらのデータベースの形成は,当該分野の研究活動が組織的に活発に行われているか,または優れた研究者群の存在するところにおいて可能となる。
 形成されるべきものの例としては,国内的に学術研究上必要性が高く我が国で発展を遂げた研究分野または我が国がその研究や情報の世界的なセンターになっている分野,世界の学術情報流通の状況に照らしてデータベースが欠落しているかまたはあってもその情報構造の水準が低く,しかも我が国に専門研究者が多く存在し研究レベルが高い分野などが中心となろう。我が国の学術研究活動の現状を見ると,これらのデータベースの形成は,大学及びその関連する研究機関やそれらの研究者が中心となるのが適当であると考えられる。
 データベースの形成のためにはいろいろの組織体制があり得るが,国立大学共同利用機関,国立大学附置全国共同利用研究所その他の研究機関等がその本来の研究活動に伴うものとして分担実施し,その発展を図ることが適当である。学協会等もそれぞれの分野での形成の組織として適当なものの一つであるが,このような継続的な事業を行うには会員その他の関係者の積極的な支援が得られるものに限定されよう。また,特殊な専門領域では,データベース形成に継続的に意欲と実行力を有する個人の研究者またはそのグループの自主的努力に待つところが多い。これらデータベース形成を推進するため,既存の研究費等の充実を図っていく必要があろう。
 なお,国際的二次情報への入力を推進する方策についても上述のデータベース形成に準じて考えられるべきである。
 形成されるデータベースを利用価値の高いものとするためには,入力するデータそのものの質の維持・確保を図ることが重要であり,特に実験・観測データ等の原情報についてはその評価のための機能について配慮する必要がある。
 また,このようなデータベースの形成にかかわる諸活動は,それぞれの学問分野の専門家が中心となって行われる必要があるが,この事業の重要性にかんがみ,この面での活動を正当に評価することが望ましい。

(3) 学術情報システムの構成

 学術情報システムは人的,物的の各種資源の共有を基調としたネットワーク構造とし,学術情報にかかわる各機関はその固有の機能を高度に発揮することによってシステム全体の一翼を担うものとする。このネットワークを構成する要素としては,主として大学その他の教育・研究機関における図書館,大型計算機センター,国立大学共同利用の研究機関等がある。
 これとともに,これら多数の要素によって構成されるネットワークは,従来予期されなかった新しいものであり,これを円滑に運官し,その諸活動を効果的に遂行するためには,次の各種の機能が有機的,総合的に発揮できるような方策を講ずることが必要となろう。
 すなわち,第1に,学術情報活動にかかわる関係諸機関と連携し,システム内の各種活動に関する整合性の確保等について連絡調整する機能,第2に,システム全体の適切な運営やその将来のあるべき姿について計画する機能,第3に,システム全体からみて集中化することが効率的と考えられる幾つかのデータベースを管理・運用し必要な情報を提供する機能,第4に,学術情報及びそのシステムに関し研究開発する機能,及び第5に,利用者や情報サービス関係職員等に対して高次の技術的教育訓練に当たる機能の諸機能である。このような諸機能を集中的,効率的に達成するため,全国的な学術情報システムの中枢となる機関が必要である。
 次に,学術情報ネットワーク構造における重要な役割を果たすものとして結節点(ノード)の機能がある。データベースの形成やその形成に便宜を供与するほか,特殊専門領域のデータベースの保管,運用に当たる機能である。結節点の機能を果たすものとしては,既存の七つの大型計算機センターのほか,幾つかの共同利用機関等がこれに当たることが適当であろう。これらの機関は,もとよりその本来の大学共同利用のそれぞれの機能を引き続き果たすものであるが,学術情報ネットワークにおいてもその役割の一端を担うものとなる。
 更に,学術情報システムと利用者である研究者との媒介の役割を果たす窓口またはターミナルの機能が必須である。この機能は,国公私立の大学等の各図書館が担うことが最も適切であろう。各図書館は,一次情報の流通においては,蓄積・供給する機能と夕一ミナル機能の双方を有し,所在情報の形成においては,入カの機能をもつ言わば情報の形成者である。同時に,このネットワークを通じて総合的なデータベース化によって図書館業務の抜本的な合理化が図られる。これらによって大学図書館は学術情報システムの重要な構成機関としての新しい発展が期待される。
 上述のような,各種の要素によって構成される学術情報ネットワークが実体として総合的な機能を果たすためには,各種の機関が物理的にも連結していなければならない。今日における情報交換の大部分は,効率性,即時性,経済性等の観点から通信綱によるものが根幹となっている。学術情報ネットワークの連結のために適用すべき通信網としては,基本的には,東京大学及び京都大学の大型計算機センターと日本電信電話公社との協力により開発された方式を基にした新データ網の利用が適当と考えられるが,地域の事情により従来の通信網との組合わせ等も考慮されることとなろう。

(4)将来の展望

 学術情報システムにおける情報検索ネットワークは,学術研究に適合した高度にしてかつ多様な情報需要に対応するだけでなく,将来における我が国全体のより適正な情報流通システムの一環をなすものともなろう。
 学術情報システムの各種の機能の発展は今後の技術革新に大きく依存しており,特に一次情報の記録媒体の開発とその効果的な伝送技術の開発が待たれている。コンピュータネットワークによる効果的な情報検索システムと連動して,記録された一次情報を夕一ミナル間に迅速に伝送するメカニズムができるだけ早く実現することを期待したい。これについては既にファクシミリが開発されているが,一次情報の蓄積・検索・伝送を一貫して行うシステムとしてはまだ十分でない。また,我が国の学術情報活動の基礎技術としての日本語,特に漢字の情報処理等についても,なお改良すべきことが多く残されている。これらの面での改良,開発を含め,学術情報システムの運用にかかわる情報科学的研究や技術開発を促進するとともに,組織化された情報を前提として行われるような研究活動の進展を図る必要があろう。

4 人材の養成・確保

(1)人材養成の必要性
 学術情報のみならず,一般的に情報の流通体制にかかわる高度の専門家の養成は,今後の我が国の重要な課題の一つである。必要とされる入材としては,第1に情報処理・情報管理に携わる高度な情報サービスの専門家,第2に特定の学問分野を専攻しかつ情報技術についても知識と理解を有する者,第3に情報科学の研究者の三つの種別がある。これらのそれぞれの領域に対応する養成の方途が整備されるべきである。特に学術情報システムの将来の円滑な運用発展のためにも情報関係の専門家の新しい養成の方途を整備することが必要である。学術情報システムにおける専門的な職務に携わる人員群を大別すると,データベースによる情報提供サービスのための要員,図書館等において情報収集や提供に携わる要員及びデータベースの形成にかかわる要員に分けられる。更に,これらのシステム機能全体の在り方等についての研究,開発に従事する要員が必要とされる。
(2)養成の現状と将来の方策
 従来,情報にかかわる専門家の養成は,大学等高等教育機関において理工学関係の学部等の関係分野や,伝統的な図書館学の分野などで別個に行われ,高度な情報サービスに携わる専門家の養成・確保の方策としては必ずしも十分ではなかつた。このため,総合的な図書館情報学を中心とする新しい高等教育機関の確立が待たれていた。これについては昭和54年10月に開学した図書館情報大学の発展が期待される。また,既存の教育機関の改組,充実も図られるべきであり,各種の情報シスデムを担うべき専門要員として必要な高度の能力を開発していくために,教科課程の編成上十分な配慮がなされることを望むものである。このことは,我が国における一般の情報活動にかかわる専門職能者の資質の向上に大きく稗益するものである。
 一方,学術情報システムにおいては,一般の情報サービスより学術研究に深くかかわった,高次の情報サービスを提供する必要があり,その業務の中には主題分析その他学術の各分野の主題の内容についてかなりの専門的知識を必要とする業務が多い。したがって,それらを分担する要員の養成についても十分な考慮が払われるべきである。学術情報システムを運用していく中で,それぞれの学問分野を専攻した者に対して情報処理・情報管理等についての教育をも並行して行うことが考えられる。このことはまた,この領域の情報要員の養成のためのみならず,一般の研究者に対する高度の情報利用教育ともなる。
 更に学術情報サービスに携わる現職者の資質の維持向上を図ることもまた重要な課題であり,そのためには,現在文部省関係において実施されている研修・講習会等を,より効果的に行うため総合的な企画,調整を図るとともに,その実施に当たっては図書館情報大学がその重要な教育機能の一つとして協カし分担することを期待したい。