科学技術情報の全国的流通体制の整備に関する報告について
昭和49年8月15日

国 務 大 臣
科学技術庁長官 森山欽司 殿

                        科学技術情報懇談会会長
                                加藤 弁三郎

    

科学技術情報の全国的流通体制の整備に関する報告について

1.科学技術情報懇談会は,科学技術情報の全国的流通システム( National Information System for Science and Technology, 以下「NIST」という。)の具体化を図るため,長期的展望のもとにその早期達成を目標としてNISTの整備の進め方に関して審議を進めてまいりましたが,このたび別紙のとおり審議結果をとりまとめましたので御報告いたします。

2.科学技術が高度に発展した今日において科学技術情報を円滑に流通させ,効率的に利用することは,科学技術をさらに伸張させるためにも,また,研究開発の成果を実用的に結びつけるためにもきわめて重要であります。
 現在,科学技術情報の量は,膨大な量に達しており,年間約400万件の論文が生み出されており,さらに約10年で倍増すると見込まれております。このため,研究者や技術者は,ますます多くの時間を情報の入手に費さざるを得ない状況にあり研究開発時間の3ないし5割を情報の入手と調査のために費しているのが現状であります。
 さらに,的確な情報が十分に入手されない場合には,研究開発の重複や遅延を生じ,研究開発効率の低下をきたし,ひいては,わが国の科学技術の健全な進展を損いかねないと考えます。
 以上の事情から情報の利用者から情報の迅速かつ的確な入手のため,情報検索の効率化,網羅性の高い情報提供,クリアリング(総合情報案内)サービス等科学技術情報流通体制の整備に対する要請が高まっております。

3.従って,わが国において,未だ不十分である科学技術情報流通体制の整備は,急務であると考えますが,その整備にあたっては,科学技術情報の円滑な流通,多面的な利用,公共的な分野の情報サービス等を図るために国が主導的に情報流通体制を整備することが緊要であります。 

4.わが国では,すでに日本科学技術情報センター等の情報機関が運営されているほかに,昭和44年の科学技術会議の第4号答申を契機として,関係省庁あるいは民間学協会等において科学技術に関する情報システムの整備の検討が進められ,最近になってそれらが一部具体化する段階に達しております。
 他方,米国,英国,フランス,西ドイツ,ソ連等主要諸国においてはつとに科学技術情報の適切な管理及び利用の重要性が認識され,その体制の整備が進んでおり,科学技術情報政策は科学技術政策の重要な一翼をなしております。
 わが国としましても,これらの諸国に伍して科学技術の振興を図っていくためには,今後,科学技術情報の流通促進を国の科学技術政策の重要な柱の一つとして位置づけ,具体的に推進していくことが急務であると考えます。

5.本報告は,以上のような考え方に立って今後の科学情報の流通体制の整備に関して実施方策を取りまとめたものであります。
 政府におかれては,本報告の線に沿い全体として整合性のある効果的な全国情報流通システムを整備するよう実効のある措置を講ぜられることを要望します。


科学技術情報懇談会委員名簿


  氏  名     現                 職
植 田 幸 雄 (財)日本特許情報センター常務理事
加賀山 国 雄 農林漁業金融公庫理事
影 山 衛 司 日本商工会議所専務理事
加藤 弁三郎 協和醗酵(株)会長(科学情報協議会代表理事)
岸 本 康 共同通信社論説委員
北 川 一 栄 住友電気工業(株)相談役(関西情報センター理事長)
久 保 俊 彦 (株)日立製作所副社長
久 保 文 苗 (財)日本医薬情報センター理事長
小 谷 正 雄 東京理科大学学長
坂 本 武 男 (社)産業機械工業会専務理事
佐々木 即 日本科学技術情報センター常務理事
佐々木 学 中小企業振興事業団副理事長
庄 司 茂 樹 日本電信電話公社前技師長
杉 本 正 雄 (株)常陸総合計画研究所所長(前NIST検討委員会委員長)
田 畑 新太郎 (社)日本鋼鉄協会専務理事
堤 佳 辰 日本経済新聞社論説委員
中 村 幸 雄 日本通信協力(株)常務取締役
松 尾 正 雄 (財)食品薬品安全センター理事
三 輪 大 作 (株)外国文献社顧問
村 田 浩 日本原子力研究所副理事長
百 田 恒 夫 (財)日本産業技術振興協会専務理事
渡 辺 茂 東京大学工学部教授
(杠 文吉) (財)日本特許情報センター前常務理事

目次
第1章 科学技術情報活動振興の基本的構想
 第1節 NISTの整備推進の基本的考え方
 第2節 NISTの基本的フレームワーク

第2章 科学技術情報活動振興のために構ずべき施策
 第1節 NISTを構成する機構の整備
  1.総合センターの整備方策
  2.専門センター  〃  
  3.データセンター 〃  
  4.地域サービスセンター 〃
  5.クリアリング機構 〃 
  6.中央デポジトリー 〃 
  7.その他の機構   〃 
 第2節 NISTにおける分担協力の推進方策
 第3節 NISTにおける民間活動とその育成方策
 第4節 国際協力の推進方策
 第5節 NISTにおける基盤の整備
  1.NISTにおける研究開発
  2.NISTにおける人材の養成・確保
 第6節 審議・行政機構の整備方策
 参考資料


第1章 科学技術情報の振興の基本的構想

第1節 NISTの整備推進の基本的考え方
 科学技術情報は,科学技術の急速な進歩とともに急激にその量が増加し,またこれに対する需要もますます増大と多様化の様相を呈してきている。
 科学技術情報の円滑な流通は,科学技術の進歩の不可欠な要素であるとされてきたところであり,また,とりわけ近年においては,社会開発関連の各種プロジェクトの推進や環境公害問題の顕在化及び,資源エネルギー問題の深刻化等に伴い,関係する多様な科学技術情報を的確に処理し,利用することの要請が高まっている。したがって科学技術情報活動の振興は,科学技術政策の一環として強力に推進が図られなければならない。
  NISTの構想はこのような基本的背景のもとに打ち出されたものであるが,この構想の具体化にあたってはNISTそれ自体を単一のシステムというよりは,むしろ多くのサブシステムないしは異なったいろいろな要素を包合する一体的なシステムとみなしてこれを進めるべきであろうと考えられる。
 次節以降においては,その具体的な整備の進め方をとりまとめているが,このための基本的考え方を示すと以下のとおりである。

 第1は,科学技術情報活動は,総合的かつ長期的観点に立ってこれを計画的にすすめるべきことである。科学技術情報活動は複雑多岐にわたっており,NISTの整備には多額の資金と多数のマンパワーを必要とする一方,その活動が,極めて基礎的なものであるためにその成果を正確に把握しこれを評価することが容易ではない。
 したがって,これを推進していくにあたっては基本的な方向づけを明確化し,資金と人材を効率的に活用するために,総合的な観点から計画的に進めることが必要である。

 第2は,NIST計画は関係機関の緊密な協力のもとに国家的視野から進めるべきことである。NISTには民間における情報活動ならびに政府や地方自治体等による多様な活動が含まれている。またその機能の面からみても,いろいろな要素から成り立っている。したがってNISTの効率的な運営のためには各機関が広い視野に立って連携を図り相互に補完し,近時発展の著しい電子計算機,通信技術等の情報処理技術も利用して全体として整合性をもったシステムが形成されるようにする必要がある。

 第3はユーザーの情報需要に密着した活動を展開すべきことである。
 情報活動の推進においては,研究者,技術者をはじめとする国民各層のユーザーのニーズに的確に対応しうるようにしなければならない。すなわち,迅速かつ的確な情報の提供・入手に資するための情報活動の高度化,情報サービスの内容の多様化,情報流通における地域的格差の是正等がこれである。このため全体の効率性の尊重は当然としても,目前の経済性のみを前面に押し出すことは必ずしも妥当ではないと考えられる。

 第4はNISTと他の情報システムとの連携である。行政情報システムをはじめとするいくつかの全国的な情報システムが形成される動きにあるが,可能な限りこれらとの協力を進めることとし,将来におけるオンラインネットワーク等を想定した場合においても,通信回路の共用等により,他のシステムを容易に接続できるよう配慮し,国としての投資効率を高めうるようにする必要がある。

 第5は,科学技術情報の流通活動は,国際的な協調の理念に基づいてこれを推進すべきことである。
 科学技術情報は,本質的に国際性を有するものであり,わが国としてもその交流による利点が非常に大きいことから,国際機関等を通じて積極的にその推進に参画し,国際交流活動全般の円滑化に資することが必要である。とりわけ,わが国の国際的な地位の向上に伴い,相応な国際的責務を果たし,世界の科学技術水準の向上に寄与することが重要である。

第2節 NISTの基本的フレームワークについて
 NISTにおいて対象とする情報は,科学技術(人文科学のみに係るものを除く。以下同じ。)に関する公開された情報である。
 この科学技術情報は,定期刊行物,技術レポート,学術論文,学会会議録等の文献類,調査や観測等から得られる数値データ,図表等に関する資料類,特許公報,カタログ,技術基準等の資料類などのようにその種類と態様がさまざまであり,また,それぞれの科学技術活動の目的や任務などによってこれらに対する情報需要の内容や処理方法もさまざまである。
 このため,NISTとしては,文献,数値データ等の対象物,取扱い分野,あるいは特に重点を置く処理工程などによって類型化されるいくつかの機能が必要となってくる。
 NISTは,このような諸機能とこれらの担い手である諸機関を全国的に緊密なネットワークによって有機的に結合させた科学技術情報の流通システムであり,その基本的フレームワークは,図1のように構成される。

 また,NISTを構成する諸機能の役割は表1のとおりである。


表1. NIST構成機構の役割

NIST構成機構 主な役割
中央調整機構 NIST整備の総合的推進、各種構成機関の総合調整
クリアリング機構 情報の加工を主要素とする 情報源、進行中テーマなどの非文献的情報 情報源等に関する情報の収集、整理、加工、提供
データセンター 主として数値データ 数値データの収集、整理、分析、評価、提供
専門センター 主として文献資料類  特定専門分野の文献資料 ① 専門分野の文献資料類の収集、整理、加工、提供
② 情報の専門的分析、評価
総合センター 科学技術分野の共通基盤的文献資料 ① 共通的、基盤的情報の収集、整理、加工、提供
② 専門センター等のバックアップ
地域サービス センター 情報の提供を主要素とする
提供
各地域における利用者への情報サービス
 
ターミナル
中継
情報サービスの中継
 
中央デポジトリー NIST構成機関の活動基盤作りを主要素とする 文献資料等の保管
人材養成機構 情報専門家の養成訓練
研究開発機構 情報処理技術の研究開発

第2章 科学技術情報活動振興のために講ずべき施策

 NISTとして長期的展望のもとに科学技術情報活動全般を振興し,所期の目標をできるだけ早期に達成することが本計画の基本的なねらいとするところである。
 このためには,前述した基本的考え方に沿ってそれぞれの政策運営を図っていく必要があるが,具体的には以下のような施策を講じていくことがのぞまれる。
 これらは,当面の施策の進め方を示したものであるが,NISTのトータルの枠組みを念頭におきながらも,現段階としては各種の情報活動レベルの差が著しいなどの事情により,個別の事項の推進に重点をおいて考え方を整理せざるをえなかった。
 この点については,今後各般の施策を進めていく上で,中央調整機構を中心に関係機関の間で連絡協議を行い,全体として効率的な情報流通システムの形成が図られるようにすることがのぞまれる。
 また,本報告のなかには,十分に具体策を示せなかった点があり,あるいは今後の情勢の変化により計画にズレを生ずる可能性もあるので,逐次,計画のフォローアップを行っていくことが必要である。
 このためには,とりわけ中央調整機構を中心に科学技術情報活動の振興全般について毎年フォローアップを行い,その結果を年次報告にとりまとめて公表し,次年度以降の事業運営に資することとすべきであり,また,時期に応じて計画の改訂を行うことが望まれる。
 また,NISTの総合的推進を図り必要に応じて連絡調整を行う中核となるのは,中央調整機構である。この機構としては,早期に適切な審議組織および行政機構の整備を図りその任務を果たすようにすることがのぞまれる。当面は,本懇談会,各省庁連絡会議および事務局による現行の機能を継承する組織が関係機関の協力のもとにその役割を果たすようにすべきであろう。
 なお,中央調整機構の運営に当っては関係省庁及びその他の関係者の連絡協議のうえ,それぞれの立場および意見が十分に反映されるようにするものとする。


第1節 NISTを構成する機構の整備
 1. 総合センターの整備方策
(1) 役割と業務
 総合センターは,NISTの中核機関として科学技術全分野に係る共通基本的な文献情報(以下「基盤情報」といい,基盤情報のファイルを「基盤情報ファイル」という。)を処理し,一般の幅広い情報ニーズ対応することを主眼とする。これに合わせて,国全体からみてNISTの中心となる機関が実施することが効率的と思われる事業(地域サービスセンターの整備,クリアリング事業の推進など)及びNISTの基盤的な業務(人材の養成,中央デポジトリーの整備など)を行うこととする。
 このような役割を果たすために,総合センターは,次のような業務を行う(地域サービスセンターの整備,人材の養成等上記の後半の内容については,それぞれの項で述べられることになるので,ここでは前者の基盤情報の処理やその成果を利用したサービス等を中心に述べることとする)
① 科学技術全分野にわたって基盤情報を総合的に収集し,整理し,これらを用いて複写,翻訳等のサービスを行う。
② 収集整理した情報について,抄録化,索引づけなどの加工をし,コンピューターの利用は可能な形で基盤情報ファイルを作成し,これを用いて検索,調査などのサービスを行う。
(注) 基盤情報ファイルは,基盤情報について書誌事項,分類,キーワード索引や可能な限り抄録がつけられ,電子計算機の利用が可能な形に処理したファイルとする。
③ 科学技術情報活動に関する広範かつ高度なポテンシャリティにもとづき他の情報機関等に対する各種のコンサルタントサービス等を実施する。
(2) 総合センターの整備の進め方
総合センターについては,わが国における中核的な情報機関として日本科学技術情報センターが設置され,有効な活動をしているので,この活動の充実あるいは必要な機能の付加により総合センターとしての内容の充実をはかることが効率的である。
 このため,日本科学技術情報センターの業務についてはおおむね次のような整備を行う。
① 情報ファイルの充実
 基盤情報の収集規模については,世界で発生する科学技術文献情報の15~20%を収集処理することを目標に順次その拡大に務める。
 日本科学技術情報センターは,現在,理工系情報を中心に収集処理しているが,生物医農系等その他の情報についても,それぞれの専門センター等との分担,協力を通じて基盤情報ファイルの充実をはかる必要がある。
 なお,総合センターは,各分野に共通して用いられるもの,利用頻度が高いものはもちろん,それ以外でも基盤情報として重要な情報を収集する必要があるので,事業の採算性よりも網羅性を重視する必要がある。
② サービス機能の強化
 ファイル処理量,取り扱う分野等の拡大に対処するため検索効率,検索精度の向上を図ることとし,効率的なファイル構成,多重ファイル処理技術,オンライン会話システム等の開発及び利用を進める。
 また,レファラルサービスの充実や情報管理システム,ドキュメンテーション技術などに関するコンサルタントサービスのようなNISTの中核機関として指向すべき事業の推進を図る。
③ 調査分析機能の充実
 科学技術の動向の総合的な調査,これを踏まえた各種の分析解説誌の作成等を実施しうるようにすることとし,必要な体制の整備を行う。
 また,海外における科学技術情報活動の動向の調査ならびに国内における一般的な情報の需要動向の調査等を実施するための機能を強化する。
④ 基盤情報の情報源(一次資料)を入手保管し,閲覧に供する。
 なお,情報の処理に関しては,科学技術の当該分野が総合的な領域あるいは新しい領域であるために専門センターによる十分な活動が行いえないような場合には必要に応じ総合センターがこれらを補完し,全体としてバランスのとれた情報活動がなされるようにするための機能を果たすようにすることがのぞまれる。

【図2 総合センターの現状と将来(略)】
2. 専門センターの整備方策
(1) 専門センターは,NISTにおける基幹的な機構として重要な位置を占めている。専門センターは,それぞれの専門分野に関係する情報について専門的なサービスを円滑に行うことが可能となるよう実態に応じ次のような役割を果たす必要がある。
① それぞれの専門分野に関係する情報を可能な限り網羅的に収集し,専門的かつ細密
な情報サービスを行う。
② 総合センターが基盤的情報についてサービスするのに対して,専門センターは当該分野の専門家と密接に連携し,その専門的ニーズに対応する。
③ 専門センターは,それぞれの専門分野の情報のうち,基盤情報については,これを総合センターに提供する等総合センターをバックアップし,また,データセンターに必要な情報を提供する等データセンターのバックアップを行う。
 このような役割を果たすため,専門センターは,主として次のような業務を行う。
① それぞれの専門分野の情報を収集し,整理し,これらを用いて複写,翻訳等のサービスを行う。
② 収集整理した情報について,分析,評価して,技術動向予測,レビュー誌等の編集などを行う。
③ 収集整理した情報について抄録化,索引づけなどの加工を行って,できる限りコンピューター利用が可能な形で専門ファイルを作成し,これを用いて検索,調査,分析等のサービスを行う。
(注) 専門ファイルは,当該分野のみに係る情報について書誌的事項や可能な限り抄録,キーワード索引などをつけたファイルとする。

表3. 専門センターの整備に関する対処方針

    表3. 専門センターの整備に関する対処方針  
       
  整備上の責任  対   象   分    野   セ ン タ ー の 例
       
  国または公共機関が主導的に整備 ① 環境、防災等本来的に国の業務に属する科学技術分野 (環境公害、防災、都市など)
       
    ② 先導的科学技術分野 (原子力、宇宙、海洋、ライフサイエンスなど)
       
    ③ 医療保険など民間が情報活動を行うことが困難で、国の負うべき役割が大きい科学技術分野 (医療、医薬品、食品添加物等化学物質、保険 教育など)
専門情報      
    ④ 農林水産、中小企業など民間みずから情報活動を行うことが困難な科学技術分野 (農林水産、中小企業など)
       
    ⑤ 電気通信、交通など国や公共的機関が果たす役割の大きい科学技術分野 (電気通信、交通など)
       
    ⑥ 基礎的、基盤的で民間では実施することが困難な科学技術分野 (地球科学、資源、エネルギーなど)
       
  民間が主導的に整備 ⑦ 産業科学分野 (化学、鉄鋼、特許など)

(2) 専門センターの整備の進め方
① 専門センターを構成する機関
 専門センターの主たる任務は,当該分野の専門家のニーズに的確に対応する情報活動を行うことにあるが,このような情報活動は,研究開発活動の一部とみなされる面も少なくないので,各分野の情報活動の中心となる専門センターは,その運営において当該分野の科学技術者との接触が不断に維持され,科学技術者が情報活動の一部を担いうるように,その関連分野の研究開発の中心となっている機関あるいはその分野の専門家が参集しうる機関(学協会等)がその役割を果たすようにすることが適切と考えられる。
② 各専門分野における整備方策
 従来,科学技術活動全体について明確に体系づけたものはないが,専門センターの整備に当っては,便宜的に科学技術会議第5号答申(昭和46年4月)で使用されている区分を利用して,表3のように区分し,それぞれ次のような方針に従って整備を進める。
 なお,科学技術情報活動はまだ全般的に十分行われているとはいい難いので,当面の間は国が主導的に整備すべき分野からまず重点的に整備を進めることとする。
 また,実際の機関としては,専門センターがデータセンター活動を合わせ行うものがあるが,これらについては,この専門センターの項に掲記することとする。
(ⅰ) 本来的に国の業務に属する分野
○ 環境公害情報
 国立公害研究所(昭和48年度発足)を中心とした環境公害情報システムの整備を図る。
 昭和49年度においては,システムの中核となる国立公害研究所環境情報部の組織の整備,文献の収集,国際レファラルサービス(IRS)との協力関係の調査を行い,関係省庁に対して一部サービスを開始する。
 引続き次年度以降において,専用電算機の導入,大気汚染測定データの収集整備,情報提供範囲の地方自治体及び関係試験研究機関への拡大等を行い,オンラインネットワークの構成を図る。
○ 防災科学技術情報
 国立防災科学技術センターを中核機関とした情報流通ネットワークの整備を行うことを目標に連絡協調体制の確立,資料の収集整理の充実強化およびこれらの流通の円滑化を図る。また,これに合わせて,所要の組織の整備を進める。
(ⅱ) 先導的科学技術分野
○ 原子力情報
 日本原子力研究所は,国内の原子に関する情報を一元的に処理し,流通させることとし,その組織,活動の充実を図るとともに,国際原子力機関の推進している国際原子力情報システム(INIS)に積極的に協力する。また,放射線医学総合研究所はこれを補完する形で医学的見地からみた放射線の影響に関する資料の収集,調査,分析等を実施するため組織等を整備する。
○ 宇宙関連情報
 宇宙開発事業団は宇宙開発業務の効率的な推進に資するため,宇宙開発に関する情報の収集,分析等の強化を図るとともに関連機関との情報交換等の強化を図る。
 また,航空宇宙技術研究所等の関係各機関においても宇宙科学技術に関する資料の収集,整理等の強化を図る。
○ 海洋関連情報
 海洋開発の円滑かつ効率的な推進のためには,海洋関連情報の適切な管理システムを確立する必要があり,このためまず各種観測機関等の情報処理システムおよび情報を機能的に利用しうる体制を整備する必要がある。
 海洋科学技術センターは,海洋開発に係る科学技術の中心的機関であることから海洋工学技術,海洋環境保全技術,潜水技術を中心とした文献の収集,整理,提供ならびにクリアリング活動を推進する。
○ ライフサイエンス情報
 対象領域が広いライフサイエンス分野においては,特に的確に研究を進める上で十分な情報管理が必要である。このため科学技術会議ライフサイエンス懇談会報告に基づくライフサイエンス研究推進センター構想の線に沿って,本分野の科学技術情報の収集,分析,提供サービス等に関する体制整備を図る必要がある。
(ⅲ) 医療など民間が情報活動を行うことが困難で,国の負うべき役割が大きい科学技術分野
○ 医療情報
 医療に関する資料,データ等の収集,処理,提供を行うために医療情報システムを整備することを目標に必要な研究開発を行うとともに,中央および地方の医療情報組織を整備し,ネットワークの形成を図る。
 このため,(財)医療情報システム開発センターを活用し情報システムに関する研究開発を行う。なお,医学文献に関しては(財)国際医学情報センターの能力を十分活用する。
○ 医薬関連情報
 医薬品,食品添加物,農薬等化学物質の安全性に関する情報を迅速かつ的確に収集処理し,必要な場合にこれを利用して適切な行政措置をとるとともに,医療機関,都道府県等に対して安全性に関する情報を提供するような情報の管理制度を整備することが必要である。
 このため,その整備計画の検討およびシステム開発を進め,さらに中心となる組織(国立衛星試験所)の整備とともに(財)食品薬品安全センターの強化を図る。
 また,医薬品については安全性のみならず有効性についての情報が医療において重要な役割を果すため,前期医療情報システムの整備とともに(財)日本医薬情報センターの強化を図りその能力を活用する。
(ⅳ) 農林水産,中小企業など民間みずから情報活動を行うことが困難な科学技術分野
○ 農林水産情報
 農林水産に関する試験研究の効率的な推進および研究成果の活用の促進に資するために情報流通のネットワークを整備することとし,この中核的役割を果たす組織を筑波研究学園都市に設置する。
 昭和49年度においては,文献の収集整理,二次情報活動の強化,情報処理のための検索用語作成,試験研究課題機械検索システムの開発,資料のマイクロ化等農学情報システム構成のための基盤的事業を推進し,昭和51年度に業務を開始することを目途に所要の整備を進める。
 また,国連食糧農業機関(FAO)が推進している農学および農業技術に関する国際情報システム(AGRIS)の事業に協力するためにそのインプットを分担する。
○ 中小企業のための技術情報
 昭和48年度に中小企業振興事業団に設置された中小企業情報センターを中心としたネットワークの形成を行う。中小企業情報センターはみずから中小企業活動に密着した情報収集を行い,また,地方で発生する情報を全国的に集約し,加工する業務を実施するとともに地方の技術情報室に対する各種の基本情報の提供,クリアリングサービス等を行う。
(ⅴ) 電気通信等国や公共的機関が情報活動において果す役割の大きい分野
 電気通信,輸送等公共性の高い分野における全体的な情報活動に関しては,国もしくは公共的機関が主導的にニーズの調査,システム整備上の諸問題の検討等を行い,情報流通問題に対処していくべきである。
 電気通信の分野については,技術革新の速度が大きく,技術情報の円滑な流通の要請が極めて強いのでこの分野の専門センターを設置することについての諸問題の調査を実施する。
(ⅵ) 基礎的,基盤的科学技術分野
 各分野の研究開発等の基礎となる物理,数学等の分野あるいは天文学,地球科学等の純粋科学的な分野の情報の流通の問題に関しては,総合センターにおいても一部取り扱うこととするが,数学,天文学等に関しては,現在学協会においても一次情報の処理提供を中心とした活動がなされているので,これらについては可能な限り各学会が中心となって情報活動を推進検討することとし,国においては,学協会における二次情報活動の強化等に対して必要に応じて助成を行う。また,エネルギー,鉱物,水,食糧および木材をはじめとする各種資源に関する情報の有効利用を図るため,国が主体となって所要の専門センター活動を充実強化する必要がある。
(ⅶ) 産業技術の分野
 組立技術,加工技術,材料技術や特許,規格等の産業技術が中心となる分野については,情報需要は民間企業からでる場合が多く,ある程度民間で自主的に活動を進められるものもあるので,基本的には民間が主導的に整備を進める。
 しかしながら,このような場合の情報活動は産業学協会を中心として行われており,現在の活動も一次情報を中心としたもので,情報活動の高度化の基盤が脆弱なものが少なくない。
 このため,国は,民間における情報活動の高度化に資するために誘導的な施策を講ずることとし,補助金等適切な助成策ならびに情報活動の円滑化に資するための研究開発,情報の流通技術基準の作成および普及等基盤的活動を行い,また,必要に応じ総合センターを通じ情報の処理加工,人材の交流等の実務ベースにおける活動の助長を行う。
○ 特許情報
 特許情報は産業技術情報として重要な価値を有するものであり,この分野では(財)日本特許情報センターが中心となって活動を行っている。(財)日本特許情報センターにおいては,索引誌,抄録誌の発行,電子計算機を用いた書誌的データの検索サービス(第1検索システムサービス)および技術内容からの特許情報検索サービス(第2検索システムサービス)等を実施しており,また,国際特許情報センター(INPADOC)を通じての特許情報の国際交換事業に対する分担協力を行っている。
 国としては,今後とも,第2検索システムサービスの対象分野の拡大等その機能の強化を図るため,補助金等適切な助成策を講じていく必要がある。

3. データセンターの整備方策
(1) 役割と業務
 科学技術に係わる諸数値データは,それだけであるいは文献その他の情報とともに研究開発等科学技術活動の基礎として重要な意義を有している。このため,各分野における関連データを収集処理し,そのアウトプットが一般的に利用できるような形で提供サービスがなされるような体制の整備がのぞまれている。また,データの明確な選別には高度な専門的識見を要すると同時にそれ自体が本質的な科学活動であり,多量のデータを取捨選択する課程でしばしば新しい法則化,体系化が導き出されてきている。しかし,わが国においては,データの処理活動は,多大なマンパワーおよび研究時間を要するわりには,研究あるいは技術開発とはみなされずこれに対する評価もかならずしも高くなかったために従来,国公立試験研究機関大学の研究室等において一部の分野につき自発的かつ分散的に行われてきたにすぎない。
 今後においては,わが国としても各分野におけるデータの処理活動の推進を図るとともに,これらを体系化し,総合的見地からその育成を進めていく必要がある。
 このような趣旨を背景に本活動の中心となるデータセンターは,各種数値データを収集し,処理し,さらに情報の流通経路に乗せる役割を果すことになる。
 この役割を果たすため,データセンターは,
① 特定分野の刊行あるいは非刊行のデータやデータ集を収集する。
② 収集したデータを整理し,内容を検討し,取捨選択する。必要な場合には,追試験,補足試験などによってデータを吟味する。
③ 収集整理したデータを用いてデータのクリアリングサービスや複写,提供等のサービスを行う。
④ 取捨選択し,分析評価したデータに基づいて標準データブックなどを編集し,刊行する。
⑤ 海外関係機関や国際機関の行うデータ交換サービス,データ収集配布サービス等の活動と協力し,国内データの提供を行い,また,国外データの国内利用者への提供を行う。

 (2) 整備の進め方
① データセンターを構成する機関
 データセンターが備えるべき条件として
(ⅰ) 当該分野及び情報処理に関する高度な知識を有する者を十分確保しうること。
(ⅱ) 当該分野における情報源たる各試験研究機関等と情報の収集に関する有機的なネットワークを構成しうる組織体であること。
(ⅲ) 評価方法を検討するための試験や追試等を通じて最確値を設定したり,データの欠損を補うための試験を必要とする分野においては,適切な研究設備,測定装置等を有すること。
(ⅳ) 蓄積したデータを利用したサービスが可能であり,ユーザーに対して質問応答サービス,調査サービス,検索サービス,複写・提供サービス等の機能を有すること。
(ⅴ) データの交換,データの発表方式及び評価形式の定型化,センター活動のテーマの国際的な分担協力等国際的な交流・協力活動を行いうること。
  等がある。
 これらの条件を満たし,センターの業務を効率的に実施するため,データセンターとしては,それぞれの科学技術分野の研究開発目的やプロジェクトに応じて実際に研究開発,調査観測等を行う機関が中心となってその機能を果たすようにすることが適切と考えられる。

表4. データの区分とデータセンターの整備方針

  データの分類 対象分野 整備方法
数値データ 自然観測データ 天文・気象・地象・水象・海象・自然環境などの自然観測の分野(自然を対象として基本的には再現性がないデータ) 主として国公立調査観測機関や大学などの活動の一部として発展させる。 宇宙船、電離層、地震、海洋観測など
  物性データ 物質の物理的、化学的特性の分野(物質の特性に関するデータで定数、定性等として整理されるデータ) 主として国公立試験研究機関や大学、学協会活動の一部として発展させる。 熱力学特性、物性スペクトルなど
  生物系データ 医学・農学などの分野 主として、国公立試験研究機関、学協会の活動の一部あるいは専門センターの活動の一部として発展させる。 ライフサイエンス、医療、農学など
  工学系データ 物品、装置等の性能・解析・試験基準などの工学的分野 学協会や民間機関が活動の主体となることもあるが、主として国公立試験研究機関の活動の一部として発展させる。(ノウハウ等として扱われるものは除く)。 材料試験、工学的基準値など
  その他のデータ 災害調査・事故調査等のデータ、自然科学の基礎データあるいはこれと複合して用いられるその他のデータ 各実体に即して適宜対処する。  

② 各分野における整備方策
 上記の諸条件をふまえて,データ処理活動は試験研究機関,学協会,大学のうちからその業績,スタッフ等を勘案し,当該分野について最適なところをえらんで育成すべきであり,従来から,個々の分野や機関で公式もしくは非公式に活動が行われている場合には,それぞれの活動を支援し,逐次それを強化する方向で体制の整備を進める。
 一部の自然観測分野においては,国際学術連合会議(ICSU)によってグローバルなネットワークが構成されており,当該データについてすでに海外関係機関との連絡協調を行っている国内機関もあるが,これらについてはその機能を充実させ,公共的なデータセンターとしてサービス活動等をさらに円滑に行いうるように整備していくことが必要である。
 データ活動は基本的には,あらゆる専門分野について考えられるが,NISTの整備にあたっては,表4のような区分のもとにそれらの整備を進めていくことが適切と考えられる。
(ⅰ) 自然観測データ
 この分野のデータ処理活動は,公共性,純粋な学術的性格等にかんがみ,国公立調査観測機関や大学における調査研究活動の一環として発展させることが適切であり,その主たるものを例示すれば,表5のようなものが考えられる。
 特に,この分野においては,担当機関の指定とその整備だけでなく,観測網の充実,データの収集処理ネットワークの整備,対外的な協調等の積極的な推進が合わせて行われる必要がある。
 今後の整備としては,各担当機関におけるデータセンターとしての諸条件を逐次満たすように努めることのほか,
① 気象,地震等のデータは,当該分野の専門家だけでなく,幅広い分野からの利用の要望が強いこと,
② 環境公害,防災等のデータについては,中心的な処理機関のほか各特定目的をもつ多くの期間に諸データが分散されているので,これら諸データの集約化ないしクリアリングが求められていること,
③ 地球観測データについては,研究観測主題ごとのそれぞれの担当機関のもとに収集・流通ネットワークが構成される傾向にあるが,この種のデータ活動は,本来統一的な事業であるべきことから全主題にわたる集約的なサービス機関の存在がのぞまれていること,
 など種々の現実の問題があるのでその対策としては,個別の担当機関の間で協議し,データベースの形成,流通ネットワークの整備等が効率的に行われるような体制を整備するなどの措置を講じていくことが必要であろう。
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表5. データの区分とデータセンターの整備方針

区分 担当機関 備考
天文 東京天文台  
宇宙船 理化学研究所  
電離層 電波研究所  
高層物理・気象 気象庁  
緯度・経度 経度観測所  
地形・地図 国土地理院  
地質 地質調査所  
火山 気象庁  
極地 国立極地研究所  
海洋 海上保安庁海洋資料センター 海洋に関する重力、海底地形、地質、地磁気、汚染、生物を含む。
強震 国立防災科学技術センター  
地震 気象庁など  
地球観測(IGY) 日本学術会議事務局  


(ⅱ) 物性データ
 物質の物理的,科学的特性に関するデータは科学技術の全分野にわたり,基礎的に重要性が極めて高いものであるがその収集,分析,評価に要する多大なマンパワーのためにわが国においては従来系統的な処理活動は行われておらず,一部研究者により小規模かつ離散的に進められてきているにすぎない。
 今後においては,国公立試研研究機関,大学および学協会を中心として組織的活動が展開されることがのぞましいが国においては,このための活動基盤の強化に資する施策を講じていく必要がある。現在わが国で行われているおもな物性データ活動は,表6のとおりである。
 なお,物性データの処理においては,相互に関連する各分野の専門家の専門知識の投入による評価作業が必要なことに加えて,本来物性データは,担当部分各分野相互に関連して利用されることが多いことから,これらの各データ活動の進捗に応じて物性の幅広い分野にわたるデータ処理システムを開発し,中核的なデータバンクの整備をはかることが全体的にみて効率的と考えられる。
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表6. 主な物性データセンター活動

   区     分 担当団体等   備   考
高圧データ 日本材料学会高圧分科会 科学技術庁委託
核磁気共鳴 日本化学会
ラマンスペクトル 日本分析化学会
赤外吸収スペクトル 赤外データ委員会  
ガスクロマトグラフィデータ ガスクロマトグラフィデータ委員会  
スティームテーブル 慶応大学  
核データ 日本原子力研究所  

(ⅲ) 生物系データ
   生物系データは,主として生物学,医学,農学等の分野に係るデータである。
 この分野におけるデータ活動としては,医療情報について新しい計画が検討されているが,従来数値データの蓄積が少なかったこと,また,データはあっても一般に流通されていないこと等から現段階では全般的にあまり推進されていない状況にある。しかし,最近における医療技術の進歩に伴う関連データの増加および環境,公害防止に関する研究の推進やライフサイエンス研究の進展等に伴うそれら蓄積データへの利用ニーズの増大等にかんがみ,専門センター活動の整備とともに国公立試験研究機関や関係学協会その他関係機関において,本分野におけるデータ活動推進のための基盤を強化していくことが必要である。
(ⅳ) 工学系データ
 工学系データは,部品材料,装置等の性能,解析,試験,基準などに関するもので,個々の対象物の個性が重要であると同時に再現率が重要となるデータである。
 このため,この分野のデータセンターの整備にあたっては,基準データを得るための追試験や補足実験と同時に個々の対象物の検定等を行うための材料試験その他の工学系試験が必要とされる場合が多いので,これらの設備の整備またはこれらの利用体制の整備等を合わせて行うことについても検討しなければならない。
 この分野のデータセンター活動は,利用者が国公立試験研究機関や大学のほか民間企業等のウエイトも大きく,民間が整備の主体となることも考えられるが,本分野のデータは客観性,信頼性が強く要望される場合が多いので,そのニーズに応じ逐次国公立の専門機関等が中心となってその活動の推進を図ることが適切と考えられる。
 今後,データ活動の推進が期待される分野としては,次のようなものが考えられる。
 a 材料強度データ(金属など)
 b 材質データ(無機材料など)
 c 信頼性データ

4. 地域サービスセンターの整備方策
(1) 地域サービスセンターの役割と業務
 地域サービスセンターは,NISTにおける情報の提供サービスおよび情報活動の普及促進等についての重要な役割を果たすものであり,この整備にあたっては,情報流通における地域的格差を解消しうるよう配慮されなければならない。
 このために,地域サービスセンターの役割は,それぞれの地域内における情報流通活動の中核的機関として,
① 総合センター,専門センター,データセンターおよびクリアリング機構等が処理加工した情報を直接,またはターミナルを通じて情報利用者にサービスすること,
② それぞれの地域の情報需要に即応した地域特性のある情報ファイルを保持し,当該地域の情報利用者の情報需要に即応したせービスを行うこと,
③ それぞれの地域の情報利用者に対し,情報活動の普及促進を図ること,
 などである
 このような役割を果たすため,地域サービスセンターは,次のような業務を実施する。
① 当該地域において必要となる一次情報および総合センター,専門センター,デー
タセンター等が作成した二次情報を収集し,整理し,閲覧や複写等のサービスに供する。
② 当該地域の情報利用者からの要求を受け入れ,みずから所有する情報ファイルを用い,あるいは総合センター,専門センター,データセンター,クリアリング機構その他の機関を利用して検索,調査等のサービスを行う。
③ 当該地域内の情報利用者集団の情報需要の実態を把握し,総合センター,専門センター,データセンター等にそれをフィードバックするとともに,情報利用者に対して情報利用等に関する知識の向上,普及等をはかり,そのための助言,指導等を行う。

(2) 地域サービスセンターの整備の進め方
 地域サービスセンターがカバーする範囲について地理的,行政的な関係や産業立地,通信手段等の事情から数個の地方自治体にまたがるブロック(広域行政圏)単位のもの,地方自治体(都道府県)単位のもの,および情報活動を必要とする特定地域単位のものの三つが考えられる。
① ブロック単位地域サービスセンター
 ブロック単位の地域サービスセンターは,ターミナル機関等が発達している地域ブロックの利用者に対し,総合センターや専門センターの加工した情報を流通させることを主眼として整備されるものである。ブロック単位の地位サービスセンターは,いくつかの地方自治体にまたがって,情報活動を進めるものであるので,国が主体となって整備する必要がある。地域ブロックとしては全国を10程度に区分し,それぞれに1ヵ所づつセンターを整備していくことになるが,その場合,それぞれの地域ブロックの情報需要の動向,地域的格差等を考慮し,逐次整備を進めていくことが望ましい。
 このブロック単位の地域サービスセンターについては,日本科学技術情報センターの支所(現在,大阪,名古屋,九州,中国の4ヵ所)が,その役割を果たすこととし,今後,その拡充を図っていくべきである。
② 地方自治体単位地域サービスセンター
 自治体単位の地域サービスセンターは,当該地域の中小企業者や農林漁業者等を対象として,単に情報資料を提供するだけでなく,これらに対する業務の指導や技術の普及等の事業と合体してサービスする形をとることが多いと考えられる。
 この地域サービスセンターは,地方自治体が単位となるので,地方自治体が主体となって整備を進めることがのぞまれるが,ここでは,国の政策に密接に関連した情報サービスを担当する面が少なくないので,その整備に当っては,国の助成についての考慮も必要であり,同時に技術指導等を行いうる公設試験研究機関やこれらと密密な協力関係を確立しうる諸機関の情報関連部門の強化を進め,効果的なサービスを行いうるネットワークを形成していく必要がある。
 具体的には,
(ⅰ) 中小企業に関しては,地方自治体の工業試験場等に技術情報室を設け,これを充実強化して中小企業振興事業団内に設けられた中小企業情報センターを中核としたサービスネットワークの形成を図り,
(ⅱ) 農林水産に関しては,筑波研究学園都市内に中核機関を設け,地域の国立試験研究機関等と連携を保ちつつ公立試験研究機関にいたるまでのサービスネットワークを整備し,
(ⅲ) 医療分野ならびに薬品等化学物質を扱う分野においては,それぞれ中核機関を設け,保健所ならびに衛星試験所等との間に合理的なサービスネットワークを形成し,さらに
(ⅳ) 環境公害に関しては,国立公害研究所環境情報部を中核として地方自治体との間にネットワークの形成を図る。
③ 特定地域単位地域サービスセンター
 特定地域単位の地域サービスセンターは,研究学園都市および産業地帯等のように,情報の生産者または情報の利用者が大規模に集中する地域について,これらの地域におけるサービスを行うセンターである。
 この特定地域における地域サービスセンターの整備の進め方は情報活動を必要とするそれぞれの地域構成者集団の態様によって異なるが,筑波研究学園都市のように,国の試験研究機関が主体となって形成される都市においては,国が中心となり,産業地帯では,民間が主体となって整備を進めることが適当であろう。
 なお,筑波研究学園都市においては,この都市における情報活動の中核として“研究交流センター(仮称)”が設置されるので,このセンターを中心に研究者等に対する情報サービスを充実するとともに,この都市内での研究成果を内外の利用者に対して紹介する機能も充実させていく。

5. クリアリング機構の整備方策
 (1) 業務とその性格
 クリアリング機構は必要な情報の入手の方法について利用者に対して総合的に情報を提供しようとするものである。
 クリアリング機構の主たる業務は,
① 科学技術の幅広い分野における研究開発活動等に関する情報(活動機関,研究事項および内容,研究者)の収集,処理およびアウトプットの提供
② 情報機関案内(情報サービス機関,情報システム等)
③ 入手が難しい文献その他の資料(会議録等)および政府関係試験研究機関から発生する文献等の公知と提供
④ 海外のクリアリング機構をはじめとする情報機関等との連絡協力
であり,したがってその性格として
① 関係機関との間で,本機構を中心としたネットワークが構成される必要があり,NISTにおいては,基幹的な組織としての位置づけが必要であること,
② 科学技術に関する各種の情報流通システムと競合的関係にあるのではなく,NIST全体からみると補完的であり,両者は,同様にNISTに不可欠なものであること,
③ 公共性が高く,民間における経済ベースでの運営が困難であること。
 等が挙げられる。
 なお,その業務の性格上クリアリング機構は,国際交流面(海外情報機関との連携,情報の国際交流等)においても極めて重要である。
(2) 整備の進め方
 クリアリング活動には,多様なレベルがあり,NISTにおける個別のサブシステムが形成されるのに伴ってクリアリング活動にも重点を置いて進められる傾向にある(農学,環境等の分野)が,さらに今後に期待される面が少なくなく,NISTを構成する各機関において積極的な振興を図っていくことが期待される。
 このような活動の全般的な推進とともに,NISTのように分野および組織の異なる多様な情報提供機関を包含し,かつ全体としての有機的な運営を求められているシステムでは,そのネットワーク化の中核となる総合的なクリアリング機関の整備が必要とされる。このためには,すでに一部その業務を進めている総合センターにこの機能を併設するか,または新機関を設立することによりNIST全体としてのクリアリングネットワーク形成に資することがのぞましい。
6. 中央デポジトリーの整備方策
(1) 基本的考え方
 デポジトリーは,本来利用者に対してそれらが要求する情報を的確に提供するため,各試験研究機関等で生産されるあらゆる文献等を収集し,保持することを任務とする機関であるので,情報流通の高度化を図っていくためには,この機能の充実と活用を重視しなければならない。
 NISTにおける各種センターは,当該分野の情報を広く収集し処理し,保持し,提供するので,多少なりとも,この機能を有するが,各種センターにおいて収集し,または処理された情報のうち,長期保管を必要とし,それらでは保管できないものについては,これを保管する中央的なデポジトリーが必要となる。
 この場合,中央デポジトリーにおいては,当然,その蓄積情報の公知が行われ,しかも利用者が必要とする情報の容易な検索が可能であるような機能の整備が行われなければならない。

(2) 整備の進め方
 公表年月がさほど古くなく,ある程度の利用頻度のある情報については,各種センター等で必要に応じて保管されることになるが,その場合,当該情報の所在が明らかにされ,利用者が容易にアクセスできるようにすることが必要である。情報等の急増のためそれらの機関において保管することが,困難な情報については,その原資料またはコピーを保管する中央デポジトリーの整備が望まれる。このような中央デポジトリーはその網羅性の点もあり,総合センターに併設することが実際的である。
 なお,デポジトリー機能の整備にあたっては,各種センター等の相互間およびそれらと中央デポジトリーとの間でそれぞれの保持する情報の無用な重複を排除しつつ,しかも密接な連携を保っていくことが必要とされるので,その点についての今後の具体的方策については,中央調整機構において逐次検討を進めていくことがのぞましい。

7. その他の機構の整備方策
(1) 人材養成機構および研究開発機構
 これらNISTの基盤を構成する機構については,本格的に業務を実施する機関の整備が必要であると考えられるが,その整備の進め方については,人材の養成・確保および研究開発の項目でそれぞれ述べることとする。

(2) ターミナル
 大学,試験研究機関,企業など情報利用者の所属する機関や公立図書館などのいわゆる利用者のための窓口機関は,一般的にはターミナルとしての機能を有する。NISTの整備を進めるに当たっては,各種センターの整備はもちろんであるが,ターミナルの機能もきわめて重要であり,これらのネットワーキングについての検討が必要と考えられる。

(3) 図書館
 主題別資料案内,資料の所在案内,書誌的事項の調査サービス等は,資料の保管・閲覧サービスとともに図書館の重要なレファレンス活動の一環として進められてきたものであるが,このようなレファレンス機能は二次情報を主要な流通媒体とするNISTにおいても重要な役割を果たすものであり,総合センター,専門センターを通じて検索・提供される二次情報をもとに国立国会図書館,大学図書館,専門図書館等の科学技術部門のレファレンス機能を積極的に活用することによりユーザーは求める一次情報に迅速かつ的確にアクセスすることが可能となる。
 このようなことから,図書館,総合センター,専門センター,その他のNIST関連機関は,自機関所蔵の資料目録を早急に整備するとともに,国においては,和洋図書・逐次刊行物の所蔵機関ファイル(ユニオンカタログ)の整備を行い,NISTにおいて利用可能なユニオンカタログを完成させることにより一次情報せービスと二次情報サービスが一体となった高度な科学技術情報流通システムの運営を図る必要がある。
 また,上記手段を通じてユーザーおよび各種情報機関がアクセスしてくる図書館においても資料の収集規模の拡大,相互賃借の推進等を通じて業務の充実強化につとめるとともに,資料の閲覧ならびに複写サービスに積極的に応えるようその体制を強化・整備することが重要と考えられる。


第2節 NISTにおける分担協力の推進方策
 NISTは科学技術情報の全般にわたり,その全国的な流通を可能とするシステムとして,これを構成する機関ならびに機能のもつ目的や特性を生かしつつ,かつ全体としての整合性に配慮し,ユーザーオリエンテッドなサービスを可能とする一体的なシステムとして完成されることがのぞまれる。
 このためには,NISTを構成する機関相互の分担協力体制の確立が不可欠である。以下,これらの分担協力体制の整備の進め方についてとりまとめる。
 1. 総合センターと専門センターの関係
 総合センターと専門センターは文献情報を加工する機構であるため,相互に重複する部分も出てくると考えられる。
 このため,それぞれが処理する対象については,次のような分担協力関係を確立する必要がある。
(1) 基盤情報については,抄録化等の加工を総合センターが自ら行うほか,専門センターが加工したものを総合センターに提供するなどの相互協力のもとに基礎情報ファイルを作成する。

(2) 専門情報については,専門センター自ら抄録化等の加工を行なうほか,当該分野に係る基盤情報について総合センターからの提供を受け,また,利用可能な他の専門センターのファイルの一部の提供を受けるなどの相互協力のもとに専門情報ファイルを作成する。

(3) このような相互協力が可能となるようこれらの機関は,可能な限り情報の処理体系などの標準化を進めることが望まれる。
 またこれらの機関は収集,加工,提供にわたる工程について相互に分担しあうことも考えられる。
 (例・化学における日本科学技術情報センターと化学情報協議会,医学における日本科学技術情報センターと国際医学情報センターなど)
 一方,これらの機関は,利用者がどちらの機関にきても相互にサービスが可能となるように業務提携を行ったり,電子計算機その他の設備や役割等の相互の共用をはかるなどの種々の形での協力体制の確立も必要である。

2. データセンターと他の機関の関係
 数値データの整理・分析・評価は,文献情報の処理・加工とは作業内容と必要な専門知識を異にしている。
 すなわち,数値データは,全分野のものを総合的・一元的に収集することは不可能 に近く,また,総合的に編集する利点もほとんどないため総合センターでこれを処理する意義は乏しいが,専門家と密着した活動を行う専門センターについては,研究活 動の一環として,数値データの評価,集積活動が可能なこと,関係研究者等の協力関係の活用などの観点からデータセンター活動を合わせて行うことも多いと考えられる。
 また,文献とデータは,それぞれ処理方法等を異にしているが,総合センター,専門センターとデータセンターは必要な資料の交換,サービスに関する業務提携,電子計算機その他の施設設備の相互利用を行うなどの種々の形での協力体制の確立が必要であると考えられる。
 また,データセンターは,関連する大学,試験研究機関,学協会等との間に,データの交換,確認試験の依頼や試験設備の利用その他相互協力関係の確立を図る必要がある。

3. 地域サービスセンターと他の機関の協力関係
 地域サービスセンターと他の機関の協力関係については,基本的には表7のように考えられる。

     表7  地域サービスセンターと他の機関との協力関係

       相手機関         地域センターを中心とした相互協力関係

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       クリアリング機構- 調査シートの作成送付,ディレクトリーの譲り受け

                  ① 抄録等の譲り受け,調査等の依頼

       総合センター - ② 技術指導を受けること,職員の研修の委託

                  ③ 将来はオンラインで結合

中央的機関

       専門センター - ① 抄録等の譲り受け,調査等の依頼,技術指導を

                    受けること

                  ② 特定分野の情報について編集提供を受けること,

                    活動助成を受けること(例 中小企業,農林水産)                     

      国会図書館 --- 科学技術資料館の指定を受けて一次資料等の定期的

                  配布を受け取ること

 

      ターミナル --- 需要の把握に協力を受け,資料の提供や技術指導を行

                  うこと

地域的機関 大学試験研究機関  専門的需要に対処するための協力を受けること

      各種図書館 --- 資料利用

 なお,将来,経済的な情報伝送手段が開発され,また,相当量以上の情報の伝送量がある地域サービスセンターがある場合には,総合センターが専門センター等の情報もとりまとめて,総合センターと当該地域サービスセンターとの間を通信回路で結合することが必要となろう。


第3節 NISTにおける民間活動とその育成方策
 1. 民間活動振興の基本的考え方
 NISTにおける情報の処理流通については,民間(学協会,産業団体等)の活動が大きな比重を占めている。
 このうち,国全体からみて民間における活動が主体となっている産業活動等の分野では,情報活動も民間が主導的に行っていくべきであると考えられる。
 しかし,そのような活動にもレベルに差があり,専門センター的機能を果しうるような機関がある一方,その必要性にもかかわらず,科学技術情報活動が必ずしも収益性に結びつかないために,新機関の設立や既存機関の強化には困難を伴っていることが少なくない。
 このため,このような民間活動に対しては,必要に応じ国が積極的な助成措置をとってその振興を図り,NISTがバランスのとれた一体的なシステムとして機能しうるようにすることがのぞまれる。

2. 期待される推進方策
(1) 関係機関の整備強化
① 学協会
 学協会は,各分野で科学技術活動を行っている専門家の大半がそれに参加し,当該専門サークルに対し発生情報を提供してきているが,今後はその会員からの多様な情報に関する要求に的確に対処しうるように当該分野の研究者,技術者が中心となって情報活動の円滑・高度化を図っていく必要がある。
 このような観点に立って学協会はNISTにおける専門センターやデータセンターあるいはこれらに対する主要な協力機関として可能な限り情報活動面での体制整備を推進することが期待される。
② 産業団体
 組立技術,加工技術,材料技術等産業技術の各分野においては情報需要に関する民間企業の比率が高いことから,これらの協会等が専門センターあるいはデータセンターとして本来自主的に活動を推進すべきである。
 この分野の中には,化学,鉄鋼等の分野のようにすでにある程度情報センター的な活動がなされ,また,その方向に活動が推進されようとしているところはあるが,全体として情報活動の高度化の観点からするとまだ不十分なレベルにあり,各分野における情報の処理加工の分担協力化等を推進し,情報活動を効率化するための基礎の整備を図ることが必要である。なお,特許情報の利用基盤の整備は,特許行政の一部をなすものであり,この分野については,今後とも国と民間とが協力して,(財)日本特許情報センターの強化育成を軸に,情報の活用を図っていくことが必要である。

(2) 分担協力関係の整備
 以上のような各分野における整備基盤の確立等を図るとともに,NISTとして全体の有機的連携を図るためには,総合センターと各専門センター間等の分担協力の調整,各分野における情報活動の組織化等に関する検討が必要である。
 これらについては,当面は情報センター的な活動がなされている分野および機関の間でケーススタデイを行い,この結果を通じて実際に適用していくことも適当な方法であろう。
 このような検討の結果を踏まえて民間関係機関がNISTの中において,十分機能しうるよう必要な措置を講ずるべきである。

3. 国としてとるべき施策
(1) NIST運営の総合調整
 NISTにおいて,専門センター,データセンター等関係機関の分担協力及びこれらの機関が十分機能しうるための施策については,NIST全般の総合調整を行う中央調整機構において,総合的かつ基本的観点から育成方策等を中心に検討することが必要である。
 なお,審議に資するため,必要に応じて,これらの機関の活動状況や事業計画等について調査し,実態を十分把握しておくことが必要であると考えられる。

(2) NISTにおける助成方策
① 国家的な大規模開発事業,環境公害問題への対応等国の果たすべき役割の大きい分野においては,情報の収集処理にも重点が置かれ機構の整備等が進められている一方,民間学協会等における情報活動の推進においては,人材,資金の十分な投入が困難な場合が多い。従って,国においては研究開発,人材養成等の基盤的な活動の強化を図るとともに,民間の自立的な情報活動を助成する形で何らかの措置をとることが必要とされる。
② 研究開発,人材養成等NIST基盤の整備により得られる成果は民間における情報活動の円滑化にも大きく貢献するものであることから,国としても整備を積極的に推進しなければならない。
③ 一方,民間における自立的な情報活動を助成するための具体的な方法としては,補助金,業務調査委託などの制度の利用が考えられる。
 このような国の助成は,基本的には各分野にわたって幅広くなされるべきであるが,当面は,公共性,緊急性,費用対効果の検討を踏まえて逐次実施されることになる。
 これら民間活動の円滑化に資するための主たる具体的助成の様態としては,当該科学技術分野で行う需要調査,システム分析およびシステム設計,二次情報活動の推進、設備に係る補助等の助成ならびに研究開発等民間活動の円滑化に資するNIST基盤の整備を行うとともに,情報の処理加工,人材の育成等の実務ベースにおける活動にも重点を置いて助成を実施することが考えられる。

第4節 国際協力の推進方策
 1. 国際協力の基本的考え方
 科学技術情報は,本質的に国際性を有するものであるので,その流通活動については,国際的な視野に立って積極的に推進していくことがのぞましい。とりわけ,近年,世界で発生する科学技術情報の量が著しく増大しつつあり,情報の網羅的収集とその二次情報化が一国の力では,事実上,不可能となっていることから,国際的な相互分担協力は今後において一層重要度を増してくるものと思われる。
 わが国のように言語的にも他国と隔絶している国においては特に国際協力への対応のあり方については十分な検討を進めていかなければならない。
 2. 国際協力の様態とその現状
 海外における科学技術情報活動に対する様態としては,①情報活動に関する国際機関,②国際機関(または会議)を通して行われる科学技術情報流通の国際システムおよび③特定の国の情報流通システム(または情報機関)の三つの形態がある。これを国際協力の立場から区分すれば,前二者は多国間協力に相当し,第三者は二国間協力に相当するものである。
 現在,科学技術情報政策または情報に関する一般的事項を取り扱っている国際機関としては,OECDの科学技術政策委員会(CSTPおよびその下部機構のIPG,CUG),国際学術連合会議(ICSU)国際ドキユメンテーション連盟(FID),国際標準化機構(ISO)などがあり,わが国からも関係機関の積極的な参加が行われている。
 一方,情報流通の国際流通システムに関しては,UNISIST(世界科学情報システム),AGRIS(農学および農業技術に関する国際情報システム),INIS(国際原子力情報システム),INPADOC(国際特許情報センター)等があり,その数は,今後さらに増大していく傾向にある。
 また,特定の国の情報流通システムには,医学文献分析検索システム(MEDLARS),ケミカルアプストラクツサービス(CAS),物理・電気・制御工学情報サービス(INSPEC),教育資源情報センター(ERIC)等があるが,現在わが国と協力関係にあるものとしては,入力は(財)国際医学情報センターが担当し,出力を日本科学技術情報センターが受け持っているMEDLARSや国立国会図書館が米国議会図書館より寄贈を受けているMARC等のほか,CASのようにわが国の関係機関が出力を購入して利用者に提供サービスを行っているような事例もみられる。

3. NISTにおける国際協力のあり方
 このような科学技術情報の流通における国際協力の重要性とその動向にかんがみ,わが国の科学技術情報の全国流通システムであるNISTにおいても国際協力の問題に対しては十分な対応策を検討していく必要がある。
(1) 情報活動に関する国際機関
 国際機関の果たすべき任務は,加盟国間で科学技術情報政策に関する意見交換を行い,情報活動全般のレベルの向上に資するとともに,科学技術情報の国際的な流通を円滑にするための基礎的,共通的な諸問題を検討し,必要に応じ,関係諸国の了解を取り付けることであるから,わが国としても国内の関係機関の意見を調整し,国際協力のための事務を円滑に進め,それに積極的に参画しうるようにする必要がある。

(2) 科学技術情報流通に関する国際システム
 国際システムは一国の力で全世界における発生情報を網羅的に収集して二次情報化することが困難であるとの観点から必要であり,しかも国内の情報を提供することによって全世界の情報が入手できることを考えれば,わが国にとっても利点は大きいと考えられるので,NISTにおいては国際システムに対して積極的に参画して情報流通活動の効率化を図っていく必要がある。

(3) 科学技術情報に関する特定の国のシステムまたは機関
 現在,世界諸国には数多くの情報機関があり,それぞれがその国内の情報流通に寄与しているが,その中にはその国の内部の情報流通システムを背景として国際的に積極的に進出しているところもある。
 NISTにおいて各種のファイルを充実していく際には,これらの海外フアイルを活用していくことが効率的である面も多いので,その導入に対して十分な対応策を検討していく必要がある。
 しかし,特定の国の情報システムまたは情報機関に対する入力-出力の関係には,入力の代償として出力を受けるギブ・アンド・テイク方式や出力を購入する方式等があり,その関係は多様であるので,海外ファイルの導入に関するNISTとしての対応策については,その実態と将来の動向見通しをふまえながら検討を進めていかなければならない。
 このため,上記(1),(2)および(3)項に対する科学技術情報流通悲観する国際協力においては,NISTを構成する各種機関の育成充実ならびに海外ファイルの導入による科学技術情報の流通活動の効率化の観点に立って,これをすすめていくことがのぞましい。
 このような国際的な協力とともに,近年特に発展途上諸国との技術協力が要請されていることから,それを踏まえた施策の推進も必要である。これらの諸国への情報の流通は,技術協力の基本をなすものである。このため,国際機関であるUNESCO(UNISIST),FAO(AGRIS)等による情報活動には発展途上国援助を含む場合が少なくないが,国際機関の活動には,おのずから限界があり,また,特定分野しかカバーできない面もある。したがってわが国としても,国際的地位の向上にかんがみ,適宜,東南アジア諸国をはじめとする発展途上諸国との情報分野での協力(情報のトランスフアー,技術指導,人材の養成など)を推進することが望まれる。
 この際,中央調整機構においては,必要に応じ,国際協力の具体的な対応策を検討するものとするが,その前提として海外における科学技術情報活動に関する動向等の諸調査,ならびに国内における科学技術情報の需要動向の諸調査が不可欠である。
 従って,中央調整機構においても海外における状況の把握に努めるとともに,本活動に資するため,既存組織の活用という点において総合センター等におけるこの種の調査部門の拡充を図っていく必要がある。
 さらに,アタッシエ機能の充実や国際機関等への人材派遣または招へい等による海外との人材交流の活発化を図るとともに,科学技術情報に関する国際会議等にも積極的に参加し,海外の動向把握に努めることによって,わが国の国際協力に関する基盤の強化を図り,科学技術情報分野における国際協調に資するようにすることがのぞまれる。

第5節 NISTの基盤準備
 1. NISTにおける研究開発
(1) 研究開発の基本的考え方
 科学技術情報の発生量の増大と需要対象の拡大ならびに要求の多様化に対処し,また,科学技術情報の迅速かつ的確な入手に対する要望にこたえ,情報流通の円滑化を図っていくためには,情報の処理流通を可能なかぎり機械化していくとともに必要な事項について極力標準化を図っていくことが望ましい。
 このためには,既存の機関,精度等の活用も考慮しつつ,それぞれの処理流通過程において必要とされる情報処理技術および情報流通技術の研究開発を進めていかなければならない。
 とりわけ,NISTは現存する個別サブシステムおよび将来確立される個別サブシステムを包括するトータルシステムであるから,これらの個別サブシステム間において情報流通が円滑に行われるように技術開発を進めていく必要がある。また,国際的な情報交流の重要性にかんがみ,国際情報システムとの整合性も十分ふまえて,その計画の推進を図らなければならない。

(2) 研究開発課題の展開
 科学技術情報をこれらの個別サブシステム間において円滑に流通させるためには,それらサブシステム間における整合性を重視する必要があり,さらにそのサービス対象が研究者や技術者をはじめとする広範なものであるので,NIST整備上の研究開発課題の展開にあたっては,
① NIST内サブシステム相互間における情報交換が容易に行えること,
② 多量情報,多種情報を効率的に処理し,利用者の需要に応じた形態でのサービス提供が可能なこと,
③ この際,日本語処理を効率的に行うハードウエア,ソフトウエア両面における技術開発を行なうこと,
④ 広域にわたる情報伝達を可能とするため電子計算機技術と電気通信技術の高度な組合わせ技術等の適切な手段が必要であること,
⑤ 幅広い利用者の利用を可能にするための利用者とシステム間のマン・マシンインタラクシヨンが勘案されていること,
などを特に考慮し,NISTの整備にあたっては,個別システムにおける研究開発課題とトータルシステム形成における研究開発課題を的確に抽出し,その解決を図っていかなければならない。
  このような観点に立ち,今後における情報処理の機械化および電子通信技術の利用を前提として,NISTの整備上必要とされる情報処理流通技術の研究開発課題を整理すると,表8,表9および表10のようになる。

表8 情報処理の機械化と電気通信技術の利用を前提とした研究開発課題の展開


表9 一般情報検索システムの形成に係わる技術


表10 トータルシステムの形成に係わる技術

 (3) NISTにおける研究開発の進め方
  前掲した表8,表9および表10に見られるように,情報処理の機械化および電気通信技術の利用を前提としたNISTの整備に必要な情報処理流通技術上の研究開発は複雑多岐である。このなかには今後の調査および研究開発にゆだねなければならない課題が多くあり,特にそれらの課題解決にあたっては,基礎から実用にいたる各段階において相互に関連させながら,並行的に調査・研究開発をすすめ,これを効率的に行っていく必要がある。
 このため,必要に応じ中央機構が中心となって,既存制度の活用も考慮しつつ,
① NISTにおける調査・研究開発課題の相互関連性を明確化し,その優先度決定とそれをふまえた実施計画の策定,
② その実施にあたっての各種情報活動機関や研究機関または大学等との間における相互連絡,協力関係の促進等の企画調整と情報処理流通技術の研究開発機構についての検討,
③ 情報流通の円滑化と互換性の維持のため,必要な事項についての日本工業規格ならびにNIST内流通技術基準の設定,
④ 研究開発された技術の普及,
等について検討を進めるとともに,NISTをサブシステムを包括する一体的なシステムとして整備するために国が中心となって
① サブシステムである多くの個別システムについて,それぞれのシステム構成要件を明確にするための調査分析に早期に着手し,
② それぞれのシステム間におけるインターフエイス上の問題を解決するとともに,
③ 例えば,筑波研究学園都市のように,サブシステムの集中する適当な地域を選定し,モデル実験を行い,最適ネツトワークを形成していく必要がある。

2. NISTにおける人材の養成・確保
(1) 基本的考え方
 NISTを確立して科学技術情報の流通を円滑に促進していくためには,NISTに携わる人材の養成・確保を図らなければならない。
 科学技術情報の流通に関しては,基本的には情報生産者が科学技術情報をそれが流通されることを指向して生産し,情報処理専門家がこれを的確に処理し,情報需要者がこれを有効に利用しうるようにすることが必要である。このためには,関係者が必要な情報科学技術上の素養を保持し,適切な処理方法について訓練されていなければならない。
 NISTにおける人材の養成・確保に関する方策としては,学校教育と卒後教育の体制の整備拡充および科学技術情報従事者の処遇の改善が考えられる。
 また,これらと合わせて,一般に対して科学技術情報活動に関する啓発ならびに意識の高揚を図り,幅広い理解と認識を得るようにすることも必要である。

 (2) NISTにおける人材の養成・確保に対する方策
  NISTに携わる人材は,おおむね表11のように階層わけして考えることができる。これらの人材の養成・確保を推進するためには,以下のような施策をとることがのぞまれる。

① 学校教育の充実
 現在の高等教育機関における教育は,図書館学を主体にしたものといわゆる情報工学を主体にしたものが大部分であり,ドキユメンテーションを専門としているものは,きわめて限られている現状にある。NISTにおける科学技術情報関係者には,情報工学とドキユメンテーションの両方の知識が必要とされるので,今後この面での学校教育の整備充実を進めなければならない。また科学技術情報学に関する教育者が少ないので,その層の拡大を図る等の措置を講ずる必要がある。
 なお,情報生産者および情報利用者にも科学技術論文の書き方やデータの整理方法ないしは情報利用に関する知識をさずけるよう,カリキュラムの充実を図る必要がある。 
② 卒後教育の充実
 卒後教育に関連するものとしては,各種機関でそれぞれの目的に応じた講習会等が行われているが,科学技術情報関係者の養成訓練カリキュラムからみれば,これらは系統化されているとはいい難い。このため,国が主体となって,的確なマンパワー需要の把握を行い,人材養成プログラムを開発するとともに,科学技術情報研修に関する体制の整備を図る必要がある。
 この種の教育については,既存機関の活用も考慮しつつ,必要に応じて総合センターが中核的役割を担うのが適当と考えられる。なお,国際協力の観点から,海外からの科学技術情報に関する研修生の受け入れ等も十分考慮する必要がある。
③ 科学技術情報活動従事者の処遇
 科学技術情報の処理流通業務には高度の知識と経験が要求されるので科学技術情報活動従事者に対する適正な処遇について検討し,その地位の向上を図るとともに,高度な専門家としての特定の資格制度の整備について検討する必要がある。
④ 科学技術情報活動に関する普及啓発
 NISTにおける科学技術情報活動は,幅広い内容を包含するものであることから,これに関する広報活動を展開する必要があるが,とりわけ,従来わが国での科学技術情報活動が立ち遅れていることにかんがみ,一般への普及啓発を行い,この種の活動に関する意識の高揚を図ることがのぞまれる。
第6節 審議・行政組織の整備方策
(1) 基本的考え方
 現在わが国では,科学技術情報に係る情報活動に関して総合的に審議し,その結果を行政に移していくための組織が未整備であるために,情報活動の振興が低調であり,したがって調和のとれた情報流通体制の整備がむずかしい状況にあるが,このことは,また,科学技術情報活動全般を比較的低いレベルにとどめる一因となっている。
 本来,科学技術情報活動は,研究者や技術者が自己の携わる専門分野のみならず,科学技術のすべての分野にわたって必要とする情報にアクセスできるようにすることをその目的とするものであるが,とりわけ,近年においては発生する情報の量が著しく増大しているのに加えて,社会活動の高度化・多様化により科学技術に対する要請の幅が広がっているために,情報活動自体の態様も複雑化してきているので,このような実態に的確に対処して円滑な情報流通をはかっていくためには,必要とされる諸事業(各個別情報システムの整備やそれらのネツトワーク化等)を全体として調和のとれた形で総合的に推進していくための制度や組織を整備していくことが緊要とされる。
 したがって,NISTの推進にあたっては,それにふさわしい審議・行政組織の整備を図ることが望まれる。わが国では,この面でも欧米諸国に比べて立ち遅れが目立つが,これらのギヤツプを埋めるとともに,わが国に適した情報政策を立案実施していくために,以下のような措置がとられるべきである。  
(2) 審議組織の整備
 現在,わが国の情報流通活動は,当該分野の専門家のサークル間のみで運営されているものが多く,オープンシステムとなっていても,一般利用者にとってアクセスのむずかしい面が大きく,国全体からみると分野間における情報の相互交流の円滑性の欠如や情報活動自体の重複の問題がある。そこでNISTを総合的計画的に推進するために国の科学技術情報活動に関する基本的かつ総合的な計画の作成,共通基本的な事項の研究開発等の基礎的な活動の推進,情報活動の高度化のための助成策の検討等について,総合的観点から検討を進めることの要請が高まってきている。
 このためには,科学技術情報活動の振興方策全般について総合的見地から継続的に調査審議し,その基本的方向を示し,結果を行政に反映させるための組織が必要とされる。
 本組織においては,基本的には次の事項を審議することが適切である。
① 科学技術情報活動振興一般のための基本的かつ総合的な諸方策について
② 科学技術情報活動に関する基本的かつ総合的な中期及び長期の整備計画について
③ 科学技術情報活動に関与する機関間の連絡協調施策について

(3) 行政機構の整備
 科学技術情報活動に関する基本方策の具体化,各種センターの育成,情報流通に関する制度上の整備等行政面から情報活動の振興を図るためには行政機構の整備が必要であり,とりわけ上記審議組織とあいまって関係省庁間における緊密な協力及び調整の中心となる行政機構を整備することが必要である。
 このような機構においては,
① 科学技術情報活動振興のための基本的かつ総合的な政策の企画,立案及び推進
② 関係行政機関における科学技術情報活動の推進に関する事務の総合調整
③ 科学技術情報活動に関する内外の動向の調査及び分析
 などを進めていくこととし,必要に応じ,調整のために必要な資金の支出等により的確な情報活動の推進のための誘導策を講じて講じていくことがのぞましい。