学術用語制定について(要望)
                                庶発697号 昭和26年11月5日

内閣総理大臣 吉田茂 殿

                                  日本学術会議会長 亀山直人

      

学術用語制定について(要望)

本会議は,その第11回総会の議決に基づき,下記のとおり要望します。

 学術用語制定のことは,学問と進歩とその正しい普及にとってきわめて重要なことであるから,現在文部省学術用語分科審議会において実施している事業は,これを完成に至るまで,必ず継続せられたい。

学術用語の制定及びその平易化について(申入)
                                庶発195号 昭和27年5月8日

各協会あて

                                  日本学術会議会長

      

学術用語の制定及びその平易化について(申入)

 標記のことについて,本会議は,4月24日その第12回総会の議を経て,下記のとおり希望いたします。

 日本における科学の進歩と普及をはかるために,各学,協会においては学術用語分科審議会の事業に協力し,すみやかに学術用語の制定をはかられたく,かつ,その際,用語はできるかぎり平易なものとするよう特に注意されたい。


公文書散逸防止について(勧告)
                                 庶発891号 昭和34年11月28日

内閣総理大臣 岸信介殿

                                日本学術会議会長 兼重寛九郎

   

公文書散逸防止について(勧告)

 標記のことについて,本会議第29回総会の議に基づき,下記のとおり勧告します。

 わが国においては,諸外国の例に見られるような国立公文書館のないことが,保管期限の過ぎた官公庁の公文書の散逸消滅の最も重要な原因をなしている。これらの公文書の中には,学術資料として価値あるものが多く含まれているので,その散逸消滅は,将来の学術発展の上に憂慮にたえない。そこで究極の目標として,政府による国立文書館の設置を切望するものであるが,その前提として,政府において公文書散逸防止ならびにその一般利用のため,有効適切な措置を講ぜられるよう要望する。

理 由

(1) ここに,公文書と称するのは,官公庁において(市町村役場に至るまで,中央・地方を問わず)起案授受された学問的重要な意義をもった書類,議事録,帳簿類をいい,活版印刷されたものは除外する。
(2) こうした公文書が明治以来どのように処理されてきているかといえば,学術上の価値とは全く違った観点で,永年保存,20年,10年,5年,1年保存など,それぞれの官公庁が行政上,審議上の必要に応じた区分で保管され,その期限をきれたものは,出入りの屑業を通じ製紙原料として流出している。しかも,明治以来の震火災,戦災によって永年保存のはずだったものも省滅している。天災によるのみならず,官公庁の総合廃絶などによる人為的な破棄消滅もはなはだしい。近年進捗した市町村合併の結果,整理と称して,破棄された文書帳簿の点数はおびただしいものがある。これらの文書は,一般学術資料として,また近代日本の発展過程をあとづける史料として,きわめて重要な根本資料であるが,それがすこぶる無造作に処理されている憾みが濃い。
(3) 幸いに,暫時保存されているものでは,各官庁「記録課」「文書課」の管理のもとに,一応の整理分類が行われているけれども,その基準が各庁で区々であるし,ごく一部のところを除いては,一般研究者への公開利用の途が閉ざされている。どの役所にどういう文書記録があるか,中央・地方を問わず,完璧なリストすら作成され公開されないため,研究に支障が多く,そのような効率を妨げている。
(4) このような状況であるため,諸外国から来日する研究者で,近代日本の実績を調べ研究しようとするばあいにも,恰好な手引きを用意することができず,各国とくらべて,余りにも粗雑な公文書整理の実態,政府のこれにたいする無策を慨嘆させている。諸外国では,文明国,後進国の別を問わず,公文書館が設立されている場合が多い。イギリス,フランス,オランダ,アメリカ合衆国の国立文書館は,その模範とするに足ろう。かって植民地治下にあった印度にも,整備した国立文書館があり,中華民国は台湾にその政権を移すにあたり,清朝時代の文書を台湾大学に移し,近代史研究所を設立している。日本の文書記録は,一種の文化財としてこれを国の責任において保存することが,国民にたいする義務である。

参考意見
○A まず,政府において,例えば適当な構成をもつ審議会を設けて,公文書類の散逸防止ならびにその一般利用をはかるための有効適切な対策を研究し,その審議等に基づき「国立文書館法」ともいうべき公文書保管ならびに,公開利用をはかるとともに,諸外国同様の国立公文書館の設立に進む必要があると考える。
 これが単に中央行政官庁内の文書記録だけに止まるならば,閣議決定だけでも可能だろうが,立法,司法関係のもの,地方自治体の公文書となると法律をもってせねばなるまい。
○B ○Aと相まって,中央,地方に公文書を公共の運営によって設置できるよう似せねばならない。既存の内閣文書,文部省資料館,総理府総務課,政府刊行物サービスセンターおよび各官公庁の記録保管担当課室は,すべて国立支書館の分室という扱いにするとともに,各々の保管期限を越えた公文書を一括して,収集整理するとともに,たとえ小部数でもこれを活版印刷に付するとか,マイクロフィルム化して永久保存の道を講じるようにするべきである。こうした国立文書館は,内閣直属のものであるべきである。
  因みに,国立国会図書館は,あくまで図書館であり,印刷物の収集においては,十分の活動可能であるが,刊行物以前の公文書は全然別の施設機構で整理活用されねばならない。
  外国の例に徴しても,国立文書館は兼ねて研究者に利便を供する性質を帯びるものであり,単に倉庫ではない。そこに当然相当数の研究者,技術者が配置されている必要がある。また研究者のためのサービス機関として十分な設備を具えていなければならない。
  すなわち,この国立文書館は,新しい法規を立てることにより,官公庁は或る年限を経た文書記録類を一切そこに収蔵するものとし,これを中心として,とくに近代日本の各方面の動向をうかがうに足る民間の諸文書をも収めることにする。またやがては,各都道府県にも一つの公立文書館を建て,市町村関係文書記録の所蔵にあて,相互の連絡を蜜にし,研究者のために民主的運営をはかるべきである。
国立文書館の機能としては,
○A 国立文書館は,官公の文書記録(伝承,無形文化の録音化)を収集し,整理,刊行あるいはマイクロフィルム化して保管し,その目録を刊行する。
○B 国立文書館は,前記の文書記録の状態の調査および収集資料についての研究調査を行う。
○C 国立文書館は,ひろく内外の研究者に公開利用させる。
○D 国立文書館は,研究者の研修を行う。研究調査の連絡にあたる。
 というわけである。このような文書館の具体的現実化のために,○Aの法規とともに,種々検討して案を構成する審議会を内閣総理大臣のもとに組織すべきである。それは,官公庁の文書記録関係者と学術会議会員とを代表するもので構成すべきであろう。

大学図書館の整備,拡充について(勧告)
                                庶発354号 昭和36年5月13日

内閣総理大臣 池田勇人殿

                               日本学術会議会長 桑原武夫

     

大学図書館の整備,拡充について(勧告)

 標記のことについて,本会議第33回総会に基づき,下記のとおり勧告します。

 大学教育の効果を有効ならしめるためには,附属図書館が十分にその機能を発揮するよう,その充実と運営の適正を期することが重要であることはいうまでもない。しかるに現在の大学図書館は,一般にその蔵書数がきわめて貧弱であり,その書庫,閲覧室その他の施設設備がはなはだしく不完全であリ,さらにその職員の数,待遇,身分が不十分かつ不適正であるために,大学図書館としての機能を十分に発揮すろ上に.重大な支障を来している実情にある。
 よって,攻府は大学における図書館の機能の重要性にかんがみ,次の諸点について適切な措置を講ずるよう勧告する。

1.大学図書館の蔵書を充実するために,必要な財政的措置を講ずること。
2.大学図書館の書庫,閲覧室その他の施設設備の拡充と整備をはかるために必要な措置を講ずること。
3.大学図書館の職員数を適切な水準まで増員し,かつ大学図書館職員としての専門職の制度を確立することを講ずること。

理由・説明
Ⅰ.蔵書数について
A 大学図書館は,大学が研究機関である点から大学教官の研究に必要な多数の図書資料を収集して利用に供すべきことはもちろんであるが,わが国の大学はきわめて少数の大学を除いては,この面での蔵書数がきわめて貧弱である。計画的に蔵書数の拡充を図る措置を講じない限り,大学教育の効果を高めることはおぼつかない。
B 新制大学は.いわゆる単位制による教育を行っているが.これは1時間の講義に対して2時間の自習を課することを建て前としている。この制度の特色を生かして教育効果を高めるには,これまでの大学とは飛躍的に異った水準において,学生の自習のための図書を多数に用意して学生の自由な利用に供し,自習に支障のないようにすることが必須の条件である。しかるにこの面での図書の拡充は,予算の関係上きわめて困難な実状にあり,そのために学生の自習を重んずる単位制そのものを有名無実になり,学生の学力低下の重要な一因となっている。学生用図書の拡充はきわめて急務である。

II.施設について
A 大学図書館は図書の倉庫であってはならない。研究,教育の機能の中心として,書庫,閲覧室,特殊施設室を有機的に設置し拡充すベきである。
B 現在なお多くの大学図書館が木造であることは,むしろ非常識である。速やかに不燃性建築とすべきである。
C 書庫面積が蔵書数の増加に対応して増加していない大学図書館が大部分を占めている。図書の格納の場所としても不十分であるのみならず,管理,運営に重大な支障をもたらしている現状は改善さるべきである。
D 学生数の増加に対応する閲覧室の増加はほとんどの大学において実現していない。マイクロフィルム,視聴覚などの特殊施設も早急に整備する必要がある。

III 図書館職員について
A 図書館職員の定員は,教官,学生数および蔵書数の増加,利用度の上昇に対応する増加を示していない。最少限の臨時職員を加えて辛うじて運営しているものが大部分である。職員1人当りの冊数,利用者数は過重であって,そのために有効な運用ができていないことは改めるべきである。
B 図書館職員の業務は,一般事務職員の業務と異り,特殊専門の知識と技能を要し,熟練を要する。とくに研究者に対するサービスにおいては高度の知識を要する。そのために専門職員,司書等を養成する機関が設置さるべきである。現在は文部省図書館職員養成所のほか二,三の私立大学に図書館学科があるにすぎない。より高度の養成機関を必要とする。
C 専門的に訓練された図書館職員を,一般事務職員と区別し,特殊職種(例えば教官職に準じた職種)として,待遇の向上を図るべきである。現在,図書館職員養成所等において司書の資格を与えられても,現実に大学図書館においては,一般職員と区別されていない。したがって長く図書館にあって,高度の専門職能をもつとかえって,一般事務職員よりも不利益になるという予盾が生じている。そのために図書館職員を確保して熟練と技能をたかめることを不可能としている。このような状態では図書館機能が麻痺するのが当然てあろ。速やかに司書職のごとき職種を設定すべきである。

IV. 予算について
 図書館予算は大学において,独立しておらず.本部予算に依存しているのが一般の状態であるが,図書館はその性質上独立の予算とすべきである。とくに図書数や利用度も漸次増加し,新しい機能(マイクロフィルム.視聴覚利用)も発達し,大学間の相互利用の機能も必要となるなど,独自に予算をもって運営することを要する事業が激増している。
 ついては,図書館独自の予算を計上し,施設費,図書購入費.物件費,修理整本費,目録作成費等,図書館において専門的に予算を組み,その経費を独自に行うように制度を改めるべきてある。