五重塔

更新:2011-01-01

江戸時代以前の五重塔

 五重塔は,近世まで数多くあったようであるが,明治初めにかなり取り壊されたらしい。最近でも,コンクリートで五重塔を建てる人々が数多くいるようだ。江戸時代以前に建造された木造五重塔は22基であり,これが青森県から山口県までに散在している。京都と奈良に4基あるが,東京付近に3基もあることはあまり知られていない。1984年に山口の瑠璃光寺で全国の五重塔を紹介したパンフレットを手に入れた時に,この22基を見て回ることにした。ほぼ5年ほどで,岡山の五重塔以外を見ることができたが,この岡山の国分寺だけは,修理がされたこともあり,見逃していた。先頃(1997年),菜の花が咲く時期にようやく訪れることができ,全五重塔の制覇を果たした。


1 最勝院五重塔 青森県弘前市  江戸時代(1667年)  重要文化財

最も北の地にある五重塔。弘前城の近くにあり。

2 羽黒山  山形県羽黒  南北朝(1377年)  29.4m  国宝

出羽三山神社の参道の途中にあるのだが,参道に行くまでが大変で,さらに険しい参道をかなり登らなければならない。しかし,その参道からはずれて古い杉木立の中にぽつんと聳える素木のままの五重塔の存在感は圧倒的である。

3 妙宣寺  新潟県佐渡  江戸時代   21m

本州以外にある唯一の五重塔。最近までは県指定文化財だったが,ようやく国の重要文化財となったらしい。ここも行くのが大変だったが,おかげで佐渡を見物できた。

4 東照宮  栃木県日光市  江戸時代(1818年)

東照宮は不気味な建物である。陽明門やらなにやらのおかげで,ここの五重塔は,目立たない。

5 法華経寺  千葉県市川市 江戸時代(1622年)    重要文化財

法華経寺は中山競馬場近くの大きな寺。五重塔は細長いなという印象である。

6 旧寛永寺  東京都文京区  江戸時代(1639年)  重要文化財

上野動物園の中にある。場所柄もあって江戸の名残がある。上野にはもう一つ谷中の五重塔があった。幸田露伴の『五重塔』の舞台はこちらである。戦災を免れたが,1957年に塔内で心中した男女が放火して焼けてしまった。迷惑なことである。

7 本門寺  東京都大田区  江戸時代(1608年)  31.8m  重要文化財

東京に住む人は,池上本門寺の名は知っていても,行ったことはないだろう。日蓮宗の本山だけあって大変に立派な寺である。

8 妙成寺  石川県羽昨市  江戸時代(1618)

ここも日蓮宗の七堂伽藍が残る大きな寺である。羽昨までは金沢から七尾線で一時間。

9 大石寺  静岡県富士宮市  江戸時代(1749年)

日蓮正宗の本山である。10年前に行った時は創価学会の人たちが溢れていた。今はどうなっているのだろう。

10 興正寺  名古屋市昭和区  江戸時代(1808年)  30m  重要文化財

名古屋に住む人たちは,テレビ塔はともかく,市内に五重塔のあることなど知らないに違いない。名古屋は観光名所が少ないのだから,もっとprにつとめて欲しい。

11 教王護国寺  京都市南区  江戸時代(1644)年  54.8m  国宝

新幹線からも見えるいわゆる東寺の五重塔である。高さは日本一。京都に行って東寺に行く人は少ないが,行ってみると大きな寺であることに驚く。近くからみてもいかにも堂々とした風格のある五重塔である。最近できた京都駅とは好対照。江戸時代,大宮の民家の土間に塔の影が逆さまに写ったというのが「東寺の倒影」。

12 仁和寺  京都市右京区  江戸時代(1637年)  37.1m 重要文化財

御室仁和寺には4,5回行ったが,五重塔はさほど印象に残らなかった。最近,紅葉の季節に毎年行くようになったが,広々とした本当によい寺だと思うようになった。この五重塔は,2007年11月に撮影。

13 法観寺  京都市東山区  室町時代(1440年)  38.8m  重要文化財

『八坂の塔』と呼ばれる。法観寺という寺はこの塔以外にはもう残っていない。周りは民家である。東山の下河原という,まことにできすぎた場所にある。東山通りから狭い坂を上がっていくと正面にある,しかし,探してもなかなか見付からない。角をまがってふと見上げると立っている。京都に行く度にこの前を通っているので,年4,5回は見ている。中に入ってみたこともある。なにせ,応仁の乱を生き延びているから,伝説も多い。

14 醍醐寺  京都市伏見区  平安時代(952年)  38.2m  国宝

醍醐三宝院前のバス停から門を入り,三宝院を右にみてまっすぐ進み,右側の木立の中にある。「京都府下最古の木造建築」という説明書きがある。羽黒山五重塔や東寺の塔と同じく,堂々としており,風雨に耐えてきた歳月を感じさせる。30年前の学生の時に初めて見た時は,修理後で朱塗りであった。今は,それも色あせている。

15 海住山寺 京都府加茂町  鎌倉時代(1214年)  17.7m 国宝

醍醐寺のさらに南に位置し,「かいじゅうせんじ」と読む。小さいし,最下層の屋根が大きくて,違和感がある。

16 興福寺  奈良市室町  室町時代(1426)  50.8m 国宝

興福寺五重塔と猿沢池の組み合わせにより,観光地奈良のイメージが作られている。実際の猿沢池はちょっとがっかりなのであるが,興福寺五重塔は想像通りの立派な塔である。近くの南円寺三重塔もよい。

17 法隆寺  奈良県法隆寺  飛鳥時代        国宝

ともかく日本最古の五重塔である。最下層にもう一つ屋根がある。法隆寺は2回しか行ったことがない。あまり関心が持てない寺である。聖徳太子は怪しい人物ではなかろうか。

18 室生寺  奈良県室生 奈良時代  16.1m  国宝

昔の伊勢街道に沿って走る中川から桜井間の近鉄本線の景色はよく,桜の頃は特に素晴らしい。室生口大野で降りて,かなり山の中に行ったところに室生寺がある。ここまで行くのは大変であるが,それでも3回ほど行ったことがある。最近は,周辺におかしなものができている。いくつもの階段を登って行くと,正面に最も小さい五重塔があるが,下から眺めるので,そう小さいとは思えない。確かに小振りではあるが,小さいなりに均整のとれた形をしている。1998年9月23日,台風七号により,脇にあった樹齢650年といわれる巨木が倒れ,それに,はたかれて正面から見て左奥の各層の角が,大きく破損してしまったが,無事復興。

19 国分寺 岡山県総社市  江戸時代(1821年頃)  34.3m

吉備路で吉備津神社と並ぶ観光名所である。小高い丘の上に建ち,遠くから望むことができる。最近,4億円かけて解体修理がなされた。吉備路はさほどバスの便がよくない。

20 明王院  広島県福山市  南北朝(1348年)  国宝

福山にはなかなか行く機会がなかった。ある時,博多からの帰りに福山で降り,夕暮れ近くなんとか明王院にたどり着き,あたふたと五重塔を見た。

21 厳島神社  広島県宮島町  室町時代(1407年) 重要文化財

厳島神社に行ったのは子どもの頃なので,もう一度行かなければならない。

22 瑠璃光寺 山口県山口市 室町時代(1442年)   31.2m  国宝

広々とした庭の中に建っていていることもあり,姿の美しさでは一番ではないだろうか。江戸時代に毀されようとしたのを町民が住民運動で防いだという話がある。行ってみると,現在も,とても大事にされていることがよくわかる。