日時:2020年2月8日(土) 13:00~17:00
場所:慶應義塾大学 日吉キャンパス 来往舎 シンポジウムスペース
【シンポジウム趣旨】
既存の書籍を形式を変えて新たに出版することを指す「翻刻」。
かつて珍しい書物の保存・公開のために行われていた翻刻は、古典籍・古文書の文字をそのままでは読めない人が増えるにつれて、人々が読める文字に改めるという役割をも持ち始めました。
これまで専門家の手によりいくつもの古典籍・古文書が翻刻されてきましたが、日本に残されている古典籍・古文書の総数からすれば、それらは実はごく一部でしかありません。昨今、多くの機関がインターネットで公開しはじめている古典籍・古文書の画像の多くは翻刻が存在しないのです。
また、これまでの翻刻の多くは人間が読むために紙に印刷したものでした。現代では機械が読める文字、すなわちデジタルデータの重要性が増してきています。論文リポジトリの拡大によりデジタルデータでの翻刻公開は増加傾向にありますが、アクセス性の向上やなおいっそうの量的拡大が要請されています。
本シンポジウムではデジタル翻刻の最前線に位置する、市民参加型翻刻プロジェクト「みんなで翻刻」の橋本雄太氏、AIを用いた翻刻支援システム「凸版くずし字OCR」の大澤留次郎氏、国文学研究資料館の海野圭介氏をお招きします。
「みんなで翻刻」を推進している橋本氏には、市民参加型翻刻プロジェクト運用で得た知見とプロジェクトの未来像を語っていただきます。
「凸版くずし字OCR」の開発者である大澤氏には、「凸版くずし字OCR」やくずし字教育支援システム「ふみのは」の現状と見通し、企業としての視点からデジタル翻刻の需要と持続可能性とをお話しいただきます。
日本最大級の古典籍目録データベースを運用している国文学研究資料館からは海野氏にお越しいただき、国文学研究資料館のこれまでの取り組みをご紹介の上、日本の古典籍情報の集積地としてのお立場から、これまでの/これからの翻刻についてお話しいただきます。
あわせて、「みんなで翻刻」「凸版くずし字OCR」のデモンストレーションを行い、デジタル翻刻の現状を実際に体感していただく機会も設けます。
討議と体験を通して、デジタル翻刻の現在地と未来像を様々な立場から一緒に考えていきましょう。
【司会/コメンテーター/企画・運営】
司会
■宮川真弥(みやがわしんや、天理大学附属天理図書館司書研究員)
専門は、日本近世文学、北村季吟研究。「Koji 日本語史料のための軽量マークアップ言語」を橋本雄太氏と共同開発。
コメンテーター(登壇順)
■大澤留次郎(おおさわとめじろう、凸版印刷株式会社 情報コミュニケーション事業本部)
各種システムの企画・開発・事業化に従事。2015年より「くずし字OCR」システムを開発中。
■橋本雄太(はしもとゆうた、国立歴史民俗博物館助教)
専門は人文情報学。『歴史情報学の教科書』(共著、文学通信、2019年)。『くずし字学習支援アプリKuLA』、『みんなで翻刻』などを開発。
■海野圭介(うんのけいすけ、国文学研究資料館教授)
専門は和歌文学、書誌学。『和歌を読み解く 和歌を伝える』(勉誠出版、2019)、『デジタル人文学のすすめ』(勉誠出版、2013年/共著)。
■津田眞弓(慶應義塾大学経済学部教授)
専門は、日本近世文学、江戸戯作研究。『山東京山年譜稿』(ぺりかん社、2004)
【プログラム】
13:00 開会
13:00-13:30 津田眞弓「実験授業<マシンと学ぶくずし字>報告」
13:30-13:40 凸版印刷株式会社「くずし字OCR」デモンストレーション
13:40-14:00 大澤留次郎「翻刻とAI-OCR」
14:00-14:30 休憩
14:30-14:40 「みんなで翻刻」デモンストレーション
14:40-15:00 橋本雄太「市民参加型翻刻の現状と将来」
15:00-15:30 海野圭介「新日本古典籍総合データベースの現在と未来-画像・テキスト・共同利用」
15:30-16:00 休憩
16:00-17:00 全体討議