2021日本近世文学会 春季大会を終えて

オンライン大会運営備忘録

文責:津田眞弓(慶應義塾大学) 2021/06/29

 大会の会場校になりまして、立派なメンバーがあつまる機会に、壮大な実験をしようと思いました(振り回された皆さん、あいすみません)。だから、このメモは、大会をこのようにすべしというものでは全然無くて、2021年春の時点での試みを記したものです。

 滑った企画もありますが、むしろ、そういう所も書いておこうと思います。これを残すのは、みなさんの為だけではなく、これからのイベントをどうしていこうかと模索する私や、それに積極的に乗ってくれたメンバーのためでもあります。そして、多くの、前に情報を共有して下さった方々への感謝のために。増補・校閲してくれた加藤弓枝・宮川真弥両氏にも感謝。

■オンラインイベント オペレーションの担当

 今回は、イベントをお願いしたことがある文学通信に依頼しました。一番の決め手は、文学に興味のある方々への発信力。シンポジウムをする場合には、その発信力がものを言います。

 文学通信のアカウントでしてくださるので、学会側でZoomアカウントがなくてもOKです。2021年春の段階で、ウェビナーは上限500人、ミーティングは300人とのこと。この人数は応相談(お金……)で変更可能。今回は、結果として、

でしました。これはこれでよかったと思いますが、記憶に残る参加者の声が一つ。非会員も多く来るシンポジウムはともかく、研究発表会はミーティングにしてほしいという意見です。何故なら、誰が、その場にいるかわかるからと。なるほど。そういうことも、臨場感なのかもしれません。確かに、昔、本の中でのみ名前を知る大先生を、遠目にみておおっと思ったものです。人数とその場の人々が信じられるならば、無理にウェビナーにしなくてもいいのかもしれません。

 因みに、参加の実感がわかないウェビナーでのシンポジウムの際、場内・場外を盛り上げる施策について、文学通信・岡田氏よりご提案がありましたが、チャットなどを多様するのは、本学会の現状では難しいとやめました。この他、Slidoも学内イベントで試用しました。

■インターネットができない会員をどうするか

 電子化にふりきって、電子的なやりとりだけにする学会も増えてきましたが、日本近世文学会では、希望さえすれば、学会からの連絡を郵送で受け取ることができるようになっています。しかし、大会に関して、インターネットで参加できない会員には、郵送で発表資料を印刷したものを送るというぐらいしか手当ができていません。ここが、前の事務局時代に、電子化を推進した身としては心が痛いところ。やはり、会費を払う誰もが同じように参加できる大会でないと……。

 気がついたのが間際で実現させられなかったのですが、少しの光明かと思える方法があります。

*電話でオンライン大会に参加する法

 Zoomのイベントを設定する時に、「音声」の「ダイヤル発信元」の編集をクリック。

 例えば「日本」にチェックを入れてみましょう。招待状の中に、電話番号と、ミーティングID(12桁)、パスコード(6桁)が出てきます。

03-6362-8317 または、0524-56-4439 または、03-4578-1488

に電話をかけて、指示にしたがって、12桁と6桁の数字を入力します。これで、参加できます。(参加者には電話のマークが出ます)

 料金や、IDなどが入力可能な電話かどうかなど、状況次第なのですが、予稿集があらかじめ郵送されるような学会(うちは違う……涙)では、より試してみる価値はあるのではと思います。お電話で、お声が聞けるだけでも、会員が喜ぶ先生もいらっしゃいましょう。

■申込みは運営が全体を把握できる形に/hotmailにはhotmail

*Zoomの機能に頼らない(2021春現在)

 Zoomウェビナーには、申込みフォーム機能がついていて、大変便利です。自動的に決めた時間にリマインダーも送ってくれます。学内 イベントで使ってみたところ、参加者全員を把握できる一覧表は、イベントの後でないと手に出来ないということがわかり、大変右往左往しました。例えば、途中で何かあった時に、全員に向けて情報を発信するということもできないのです。(200人のイベントで、Zoomの機能で選択可能な8人ずつ、追加情報を送るはめに。――他にやり方があったんでしょうか?)

 それを踏まえて、今回は、Googleフォームで登録していただきました。必要事項の参加者リストをcsvにしてZoomにインポートし、リンクやリマインダーを送ります。今回のようにミーティングとウェビナーを使い分け、複数日に複数のリンクを使う(URLが複数になる)場合、通知を1通にまとめられるというメリットもあります。

*hotmailの怪(2021春現在)

 hotmail・outlook アカウントのメールはどうしても、複数一斉に送った時に届かない(あるいは届いても迷惑メールに分類される)という事象が起きます。まあ、セキュリティが強いので安心ということかもしれませんが、学会からの、Zoomからのメールはまず届かないと考えておいた方がいいでしょう。注意喚起をHPに書く学会も出てきました。

 今回、文学通信でhotmailアカウントを作り個別に送信することで解決しました(迷惑メールに分類された方もあったようですが)。hotmailにはhotmailを。2021年春の解決策です。

*Googleタイルという関所(2021春現在)

 使用者の多いGoogleのサービスは便利で本学会では従前から色々に使っています。が、時にセキュリティによる関所? が発動します。例えば、Googleフォームで参加登録を受け付ける時。この仕掛け方により、アクセスした人の状況で、Googleの関所が発生します。

 登録を受け付ける側としては、●登録した人のアドレスは連絡用に必須なので収集したい。●回答のコピーを送信したい。だって、いちいち返信はしていられない……。この運営には必要な、「メールアドレスを収集する」かつ「回答のコピーを送信」で設定した時やGoogleドライブにあるファイルにアクセスする時に、セキュリティの関所が現れ得ることを学びました。つまりは、この関所の存在について予告をすべきだったかもしれません。

 それから、この回答のコピーが登録者に送られる真の意味は、登録情報のコピーが送られてこない≒メールアドレスのミスタイプだということです。これは「(迷惑メールフォルダを含め)コピーが送られてこなかったら、メールアドレスのミスタイプの可能性があるので、再登録ください」と注意喚起しておくべきでした。(文学通信の名探偵Wのおかげで、迷子さんたちが事無きを得ました)

 今回、Googleフォームへの参加登録にしたことで、馴れていらっしゃらない方の画面にたくさんのタイルが現れて(信号機だの車などを選ぶもの・reCAPTCHA)、全然クリアできずに途方に暮れるということが発生しました。大会事務局などにヘルプを求めてきた方、個人的に相談してきた方は数人ですが、デジタルが不得意な層に潜在的には多くいらしたのではと思います。参加登録するだけで大変だった……というお声に、本当に心が痛みます。

 学閥でも研究会でも、なんでもいいので互助・相談を気兼ねなくできる空気が、いろんな場所にあることを祈念しています。代理登録ありとか事務局でも代行していますとか、大きく書くべきでしたでしょうか? 目的を果たせればいいのですから、WEB以外のチャンネルの活用も考えておくといいのかもしれません。

*添付ファイルはつけない

 添付ファイルがあると、迷惑メールに入る確率が上がります! ――このこともあって、後述クラウドに書類を置いて、そのリンクをメール本文に示すということが定着しました。

 かつてはURLが記載されているメールは迷惑メール扱い(フィルタリングの対象に)されていましたが、近年ではセキュリティ技術の発展によって、メール本文にURLを記載することが必ずしも禁忌とはいえなくなりつつあるようです。とはいえ、URLを短くできる「短縮URL」は迷惑メールにも多用されつつあるため、使わない方が無難でしょう。

*機械依存文字は使わない

 文学通信のオペレーションで学びました。メール送信文、こういうのでチェックされている模様。https://form.submitmail.jp/tools/check/ 

 とはいえ、何もない空白に変な文字が出没するなど、アプリケーションとOSの怪は個別に残ります。

■クラウド/Slackの大活用?

*みんなで、考えるもの、チェックするもの

 当初は、古式ゆかしく、できた書類をメールで送ってメンバーに見せて、別のバージョンを作っては送るということをしていましたが、途中から、クラウド上で書類を共有してお互いに手を入れるということをして、大変便利でした。(Googleドキュメント、スプレッドシート)この稿もその手法です。

 多くのサービスで、誰かが書類を作って、メンバーを招待するということができます。

*最終版

 上記、クラウドで下書きしたものを、アンカー(担当者)が最終的な形に成形し、後述のSlackにて、できあがりを提出するということが定着していきました。最終的には、Slack上に上げて、みんなに確認して貰ってました。細かいやりとりをSlackでしていたからですが、メールでするより微妙なことのやりとりがスムーズにでき、時間節約になりました。

 なお、清書版の際にも、何回かやりとりが生じます。微修正するファイルは、ファイル名に、日付とバージョンを記載しておくと便利です。

*リンクの活用

 会員や参加者に共有する書類も、クラウドに置いて、リンクを提供しました。その理由は、メールで添付すると迷惑メールになりやすいこと、添付した書類は書き直せませんが、クラウドにおいてある書類は、書き換え可能だということです。何か起こった時に、即座に対応できます。

 学会のGoogleドライブが大活躍しましたが、そのサービスの特徴次第で、使い方が違いますし、置いた書類が、前述タイル問題等で、すぐに見られない人が発生するということなどもあるので、注意が必要です。

 そして。わかる方にはわかる、大失敗をしました! ともあれ、リンクは、リンクのリストを使ってちゃんと管理しないといけないと、心の底から反省しております。

*簡易なホームページもできる

 Googleドライブにこんな使い方があります。ホームページを業者に委託していて頻繁に書き換え等できない場合に便利。メンバーKが発掘した技。

Google DriveでWEBサイトを開設する方法(独自ドメインでホスティング) (lpeg.info)

*当日のシナリオ/TODO

 文学通信が、画面の切り替えなどのために、Googleスプレッドシートで、「シナリオ」の雛形を共有してくださいました。いいアイデアですね。それに書き込んでくださいということでしたが、みんなの動きを把握するために、それを土台に、各人の作業一つ一つを書いたチェックシートを作りました。力尽きてツメが甘かった点は反省ですが、自分のためにはとてもなりました。これは参加メンバー全員が編集、書き込みできる形です。こんな塩梅です。

時間

プログラム

担当者

作業

備考

 えー、好みで言うと、Googleスプレッドシートは見栄えがしなくて好きではありませんで。最近自分の研究に使っている、Airtable もいいかなと思います。ま、要は共有作業です。

*Googleフォームで集めた情報の一部を公開する法

https://roboma.io/blog/marketing/importrange-function-of-google-spreadsheet/

 今回、多くの方に向けて、情報提供をお願いしました。そこで使った便利技(メンバーM教示)。別のスプレッドシートを作って、必要事項だけを転記させます。個人情報を伏せてリアルタイムで、集めつつある情報の公開が可能です。

 みんな使わないかな。私たち、情報共有好きには、おおおお! でした。

■Slackを大活用?

 前大会から、大会運営のメンバーでSlackを使って運営を行っていました。メンバーによって、向き不向きがありますが、メールで長々やりとりする手間と、飛び交うファイルがここに集約されているので、チーフ役としてはとても便利でした。#(チャンネル)で、話題ごとに話を分散させたり、一つのコメントに対してのみ返信できたりするので、LINEより便利です。

 唯一のこつは、「#決定事項」というチャンネルを作ること。決まった事、送信文など決定したら全部、こちらに載せておきます。(共有ボタン一つで、そちらに移せます)

 なお、Slackを議事録として使うこともできます。具体的には次の1でやりとりを全部出力し、Json形式なるものを、2などの方法でCSVに変換すると、Excelなどのソフトで見られるようになるそうです(メンバーM談)。ハイになった夜中の大喜利なんかも入っています……。

1.Slack ワークスペースのデータをエクスポートする

2.JSONをCSVに変換する オンライン フリー - JSON CSV 変換

プログラミングしないでJSONを取り込む Excel/PowerBI (katalog.tokyo)

 このほか、Slackは音声通話ができるので、海外の登壇者と当日の緊急連絡用に使いました。

*スコココの呪い

 Slackは、通知音としてスコココという音が入ります。準備期間、ずーっとこのスコココ通信?(に反応する)をしていたので、本番にこの音が入るという失敗をしました。音をきる!

■参加者のために作った案内

*参加に至る道筋

 今回の一般的な会員の参加に至る道のりは以下の通りです。

  1. 事務局からメールで、開催通知がくる。(申込みフォーム・特設サイト案内・Zoomアップデートの案内)
  2. Googleフォームから申込みをする。
  3. 特設サイト(鍵つき)で情報を得る。
  4. 大会2日前に公開される資料類を入手する。
  5. 参加のリンクをメールで受け取る/リマインダーを受け取る。
  6. Zoomリンク情報から、Zoomにログイン。

……うーん、もっと省略できるかもしれないですね、と思ってました……。特設サイト形式がいいのか、通知メールを長文にしてそこにすべてを書いていくのがいいのか、そこが思案のしどころ。メールは紛れやすいのも難点です……。

――ちなみに同時期に進行していた学内のオンラインイベントはこのくらいでしています。(ZoomウェビナーとVimeo併用、Zoomウェビナーのみ、VimeoとSlido併用)

  1. 情報多めのHPからの、Googleフォームから申込み
  2. 通知と、複数回のリマインダー

 自戒というか反省というか、デジタルに強いメンバーは人に質問されることが多く、心配になるとだんだん説明が細かくなります。こうすると、デジタル嫌いな人の頭に入っていかなくて、負のスパイラルに。過度な心配・案内は要注意。それは、誰にとっても不幸です。

 説明はひとまずシンプルに完結させ、気になる人のために詳細な案内を奥の方に用意しておく、というのがいいのかもしれません。

*作成した通知類(ウェブページ・メール送信・添付ファイル)

 秘事のような、そうでないような、公開するのはちょっといろいろ……という声をうけて、委細は「古今(笑)伝授」と気取ります。が、全然秘匿はしませんので、もし、TODOを含めて、どういうものか見たいという方がいらっしゃったら、学会事務局宛、津田個人宛、おっしゃってくださいませ。何かのお役に立つなら喜んで。

■チーンチン問題

 秋大会で問題が起こったのは、タイマーのベルです。Zoomの仕様では、音声は1つしか拾わず、声の上にベルの音がかぶると、聞こえません。あるいは環境音と判断されて消えてしまうこともあります。今までは、司会者が時間を計ってベルを押して下さいましたが(20分でチン、25分でチーンチン)、今回は運営の側でお声がけすることに。度胸が据わっている&柔らかい声が出せるメンバーを選出(⇦ここ重要!)

*人間タイマー作戦

 運営メンバーの予備機を使ってタイマーにしました。パネラーの1名分の小さい画面(ビデオ・普段は顔が映る画面)に、デジタル時計が出ます。それにZoomで「スポットライト」を当てて、登壇者が確認できるようにしました。

 具体的には、OBSというソフトを使って、以下の画面を、担当者の画面に入れ替えます。(メンバーMの指導で、全3名対応可能に)

Time Keeper (maruta.github.io)

Web Timer (tohoku.ac.jp)

*それでもだめなら声で伝える

 オンラインでの対応は複雑で、登壇者も大変です。発表者が画面共有をした際、設定によってはタイマーが隠れて時間が確認できないということに。特にお困りの方には、無理と判断して、途中から、タイマーを人の声に変えました。(Slackでやりとりをして相談・連絡・GO!)

■リハーサル

 リハーサルを前大会と同じく実施しました。回線スピード・音・共有画面・タイミング・操作方法の確認です。一名だけ、回線のスピードが出なかった方にお願いして、事前の動画撮影をお願いしました。あとはライブでしました。

*マイクに注意

 一番直すことが多かったのが、マイクの位置と音量調節です。マイクは自動調節に☑がついていることが多く、音量が中ぐらいの位置で上がりません。マイクの位置を直して音が小さい場合は、この☑をはずすと、直ることがあります。(ほぼこれしかできることがありません)

 マイクの善し悪しは、人に向けて話すときには重要だと痛感しました。スタンド型やPC内蔵型だと、紙をめくったり、タイピングしたりする手元の音を拾いやすく、雑音が生じやすくなります。登壇される際は、ピンマイク型か、ヘッドセット型をおすすめします。

*Zoom発表資料(共有画面)作成の注意

 Zoomを動画に録画したり、後述のYouTube配信時の注意です。登壇者がビデオオンで話す場合、画面の右上にその画面が常に表示されます。つまり、Zoomで使うスライドや発表資料では、右上に余白をしっかり作っておかないと、せっかくのスライドが隠れてしまうのです。縦横均等に25マスに区切った右上1マス分くらいの余白が目安です。

*Zoomなるもの

 Zoomはライブでやりとりするためのもの。そのため、繋がりにくい場合は、画像や動画・音声の質を犠牲にします。画面で資料を共有して研究発表が快適に視聴できるかは、送り手・受け手の状況によってさまざま、まさに運次第です。学内の美術史の講演で、講演者が高画質で国宝を見せてくださろうとして、音声が上手にはいらない、御本人が落ちるということがありました。この経験がありますので、研究発表者には、軽いファイルを提示するようにお願いし、かつ、参加者の案内には、

回線の遅延を避けるため、発表者には、zoomは資料の場所を示す程度のものとして使うよう、大会事務局よりお願いしています。研究発表については、配付資料をみながらの視聴をおすすめします。

と明記しました。高画質の催しをする場合は、YouTubeやVimeoなどで配信すべきです。

*それでもだめなら腹をくくる

 他学会の、ああいう、こういうと、トラブル情報が入るのはいいのですが、運営側はだんだんと心配になります。が、通常の講演・研究発表でも、当の本人が何かのアクシデントで来れなくなるということは発生します。だからリハーサルの後は、過度の心配はせず、突発的な事故でのごめんなさいと、事後の手当を覚悟して、大会に臨むしかありません。――今回で言えば、仮に誰かの発表が回線の都合でできなかった場合、大会後に可及的速やかに動画を鍵付特設サイトに載せるという対応になりましょうか。(組織の承認も確保できればなおよし)

■Zoomウェビナー機能の使い分け

*質疑応答問題とZoomの機能

 オンライン学会で質疑応答をどのように行うかは、頭が痛い問題だと思います。各学会で、おおよそ方針は決まりつつあるようですが、Zoomウェビナーで開催する場合と、Zoomミーティングで開催する場合とでは、使える機能も違います。ウェビナーで開催した今大会では、以下のような方針で機能を使い分けることにしました。

*「チャット」の使い方

 チャット欄は、大会本部から参加者・登壇者への案内を流すために使いました。具体的には、①発表者の資料、②質問フォームのURL(シンポのみ)、③関連リンクのURL、④アンケートのURL、⑤登壇者への業務連絡という感じです。担当者が手元にチャット用の原稿を用意しておき、適切なタイミングで必要な部分をコピー&ペーストして流すという手順でした。

 ただし、参加者が入室前にチャット欄に流された情報は見られません(再入室時も同じ)。よって、重要な情報は適切なタイミングで繰り返し流す必要があります。

*Zoomのチャットでファイルが届かない怪

 発表者の資料は、特設サイトに用意はしていますが、お・も・て・な・し……で(否、お問い合わせを減らすために)、研究発表時にも参加者にZoom上で送信していました。

 が! Zoomはチャット欄でファイルを送信できる仕様になっていますが、受信者の環境によっては、届かない場合があったのです。原因を探ったところ、スマホでZoomにログインしている場合は、ファイル送信機能は使えないことが分かりました。さらに、PCでログインしている出席者の中にも届かない方がいることが判明。

 そこで当日は、資料を保存していたGoogleドライブの共有用URLをチャットに流すことで対応しました。アンケート結果を見る限り、一部の方だけであったようですが、Zoom上でファイルを送信するのは現時点では避けた方がベターであることを学びました。(司令塔Kとチャット担当Tの心臓に負担が……お見舞い申し上げます)

*「Q&A」の使い方

 「Q&A」とは、Zoomのウェビナーに備わっている質疑応答機能です。この機能を使用すると、参加者がウェビナー中に質問をしたり、パネリスト、共同ホスト、およびホストが質問に回答したりできます。

 「質疑応答用」か「参加者のサポート用」として使用する学会が多いようですが、今大会では後者の役割で使いました。出席者に回答済みの質問のみを表示させるか、すべての質問を表示させるかは設定で選べ、今回は前者の設定に。前述のファイルが表示されない問題についても、この機能で解決方法を出席者へご案内できました。

 しかし、参加者のなかには「書き込んでも良いのかしら?」と躊躇われた方もいたようです。気軽な雰囲気を作ることで、書き込みへのハードルは下げられるかもしれません。

 ただ、Q&Aも参加者は自分の入室前の情報は閲覧できないのです。くどいと思いつつも、結局、丁寧に案内を流すことを試みました。

*「手を挙げる」の使い方

 今回、時間の余裕がないシンポでは、音声による質問は、応答に時間がかかることもあり、専用のGoogleフォームで質問を受け付けましたが、研究発表会では質問者に「手を挙げる」機能で挙手をしていただき、司会者に指名された方を一時的にパネリストにして、音声(+ビデオ)で質問していただきました。リハーサルでも、そこを確認しました。

 ウェビナーではパネリストしかビデオオンにできないため、ビデオによる臨場感確保のため、視聴者からパネリストに一時的に変更したわけです。パネリストに変更するのに数秒のタイムラグが発生するため、2人目以降の質問者は挙手の時点で(司会が指名する前に)ホストがひとまずパネリストに変更していました。しかし、1人目のタイムラグはいかんともしがたい……。

 なお、注意点が1つ。パネリストに変更すると挙手は解除されます。挙手の順番も分からなくなるので、パネリストに変更した時点で、司会に誰が挙手したかをチャットで送っていました。チャットは気付きにくいので、気付いてないかもという場合には音声でも。もちろん、指名は司会の専権事項。あくまで情報提供に徹しました。音声だけならば視聴者のままでも可能なので、音声のみというのも選択肢の一つかもしれません。

 ウェビナーは誰が参加しているか出席者には分からないため、臨場感に欠けると言われます。しかし、研究発表会では多くの方が挙手をしてくださり、音声+ビデオで質問してくださったことで、充実した質疑応答時間となりました。これは、トラブルを想定して、通常の大会よりも長い時間を確保していたことが大きいかもしれません。そして、オンラインならではですが、司会者が積極的に画面共有を使って(別の資料を提示し)、議論を掘り下げて下さったことも、新しい質疑応答の姿を見る思いがしました。このような司会者の皆様のご尽力や、懇親会会場での談話などが、活発な質疑に繋がったのではないかと考えています。

■懇親会はやるべし

*えっ他ではしないの? 

 今回、懇親会の準備をしました。談話室も用意しました。これは、いつもの大会で、みなさんがちょっと顔を合わせてお話ししたり、出来るようにという配慮です。発表者の意見交換や若いみなさんの名刺交換、抜き刷り進呈・自己紹介という機会になればと思ったからです。

 人数は控えめでしたが、使った人からは概ね好評でした。またアンケートにも(よかったので)もっと宣伝すべきとありました。結構、しつこいぐらいに「懇親会」を目立たせていたのですが……、まあ、ここに書いておきます。

 なんでもオンライン大会で懇親会、なさらないそうですね。近世だけって、複数の学会に所属するメンバーに突っ込まれる始末。そうか、私も、前回会場校代表も、近世で懇親会をやらないという選択肢はない人種でした。だって、それが近世イズム? だから、私、ちゃんと今回も、伝統の、鏡割りの映像(於鶴見大学、現状最新)も用意しました。酒樽、割らないと!

 真面目に言えば、対面だと、上梓や就職のお祝いとか、お声がけとかみんなするでしょう? そういう気持ちをオンラインだといって、諦めないで、と願うばかりです。

*懇親会・談話室の仕掛け

 Zoomウェビナーで研究発表をしている間(ホスト:文学通信)、ミーティングで部屋を一つ作っておきました(ホスト:慶應)。二種類のZoomをしかけるだけです。

 Zoomミーティングのブレイクアウトルーム、最新バージョンでは参加者が自由部屋を行き来できるので、それを使いました。ちょっとあの人に話をしたいということであれば、チャットなどでお声がけして決めた部屋にいく、あるいは、あの先生のところへ目指して部屋を移動するという形です。

*伝説のコンシェルジュ

 たまに自分で部屋を移動できない人もいるので、メインの場所には、コンシェルジュを配置。学会発表を聞けないわけでなく、その方の予備機かスマートフォンでアクセスしている感じです。ホスト役として、お困りの方に声がけします。このコンシェルジュ作成の、懇親会の参加の仕方動画は、伝説となりました。(懇親会開始まで説明動画をエンドレスループ)

*共同ホストは複数設ける

 Zoomではホストになる人の他に共同ホストをしかけておく、ホストの回線にトラブルがあっても、イベント自体は続きます。自分たちで主催する場合はぜひ。

■シンポジウムの御披露目

 シンポジウムを文学通信のTwitterと会員の人づてで国内外に御披露目いただきました。海外の学会のメーリングリストに流して頂いたのは、我々にとって大きな一歩です。多謝。

*YouTubeでのライブ配信・記録動画配信

 Zoom画面をYouTube liveでライブ配信しました。連携は思いのほか簡単です。

Zoomでライブ配信する方法【YouTube Liveとの相性が◎】 › Gaiax - ガイアックス オフィシャルサイト

 前回大会ではZoomだけの配信が心配で、YouTubeを万が一のバックアップに使いました。会員だけの限定配信で、YouTubeのライブ配信を行ったのです。質問等ができず、そしてやや遅延する形ではありますが、安定的な配信ができ安心です。

 今回も、アクセス手段の複数確保と、学会への申込みまでは……と尻込みする方に向けて、用意しました。外に広く広報したため、そうした方も、申込不要・匿名閲覧可のYouTubeならば、気軽に視聴できます。今回はシンポジウム特設サイトに画面を埋め込みました。

 なお、事後に簡単なトリミング程度の加工をして同じURLで記録動画を公開することもできます(それ以上の修正は、一度ダウンロードした上で加工し、再アップロード。URLが変わります)。URLが同じだと、ツイートなどのリンクから、再アクセスしやすくなります。

*事前・事後に

 今回のシンポジウムは、時間が短い・延ばせない状況だったので、補足の手立てとして以下のことを行いました。

 文学通信がTwitterで実況もしてくださったので、大会をいろいろな方が盛り上げてくださいました。また、質問については、登壇者が丁寧に事後に答えてくださいました。

 ご協力の皆様、ありがとうございます。ここを一歩に、領域・時代を超えたさまざまな皆さんの「つながる喜び」が広がりますように!

■組織作り

 いろいろな作り方があると思います。個人的には、リーダー役に物が言える、かつなるべくデジタルが不得手な人を必ず一人は配するのがいいと思います。デジタルに詳しい人同士でやると、詳しくない人に伝わらない省筆か、混乱を招く詳述ということに。参加者も多様なら、運営も多様性があった方がいいですよね。

 本学会の慣例で会場校代表という肩書きを使いました。学内の人脈を色々使ったという意味では会場校代表かもしれませんが、大会運営をしたのは、東京・神奈川・愛知・奈良と多様な地域のメンバー。慶應は私一人です。ですから、この肩書きもそろそろ呼び名が変わるかもしれません。地域を越えて、国を越えて、皆でいろいろ出来る日が来ることを祈っています。

■アンケート

 日本語学会のアンケートを参考にさせていただき、私たちも実施してみました。多謝。