推薦図書


最近の授業に関連したもの


【手話・手話学】

「ろう文化」 現代思想編集部編 2000年 青土社 1900円
この分野では有名な(そして議論の的である)「ろう文化宣言」が収録されています。それほど長い読みものでもないですし、手話の言語学のあり方・日本のろう者が置かれている現状がよく理解できる内容かと思うので、「ろう文化宣言」の部分だけでも読んでみるとよいのではと思います。

「聾教育の脱構築」金澤貴之編著 2001年 明石書店 3200円
これも論文集なので、興味がある章を読んでいけばよいでしょう。日本手話の統語論について(はしょりすぎで読みにくいとは思いますが)書かれた章は一般書では珍しいと思います。また、現代の日本のろう学校やインテグレーションをめぐる問題についても貴重な情報がたくさん載っています。

「『ろう文化』案内」パッデン&ハンフリーズ著・森壮也・森亜美訳 2003年 晶文社 1800円
原著はアメリカではろう者とその文化に関心がある人の入門書として広く読まれています。聴者にはなかなか想像がつかないポイントを、アメリカに生きるろう者の立場からとてもわかりやすく解説してあります。


「もうひとつの手話 ろう者の豊かな世界」1999年 斉藤 道雄 晶文社 1900円
聴者のジャーナリストがネイティブサイナーの使う手話(アメリカ手話・日本手話)について書いたノンフィクションです。取材が非常に丁寧ですし、また、初めて「手話」について知った段階、そしてだんだんろう者のコミュニティへの接触が増えていく段階での聴者の気持ちが素直に表されています。

「はじめての手話 初歩からやさしく学べる手話の本」  1995年 木村 晴美・市田 泰弘著 日本文芸社 1200円
予習文献にも紹介がありました。日本手話の入門書ですが、冒頭に語学入門書についてはやたら力の入った解説がついており、筆者の熱意がうかがえます(この著者は下の文献に収録されている「ろう文化宣言」の執筆者でもあります)。シムコムではなく日本手話について知りたい人におすすめです。(似たようなタイトルの本が多いので注意してください)

【脳と言語】
「言語の脳科学:脳はどのようにことばを生み出すか」 酒井 邦嘉 2002年 中公新書 900円
脳科学者の視点から、言語学と脳科学との関連性を要領よくまとめてあります。言語学の部分が少ないページでまとめられているので、言語学をまったく知らない人には少しツラいものがあるかもしれませんが、概論をとっているような人なら問題ないでしょう。手話学に関する章もあります。



授業の内容に関連したもの(順不同)
【語彙の獲得】

「ことばの学習のパラドックス」今井 むつみ 1997年 共立出版 2600円
授業の参考文献にも載っていた今井むつみさん(SFC所属)の著書です。マークマンの制約に関する議論に興味を持った人はぜひ読んでみてください。

【乳幼児の言語獲得一般】

『赤ちゃん学を知っていますか』 産経新聞「新・赤ちゃん学」取材班 新潮文庫 514円
新しい研究成果が一般の人にもわかりやすく簡潔に紹介されています。言語に関する記述はごく一部ですが、他の章も非常に興味深い内容で、言語発達の生得的側面の考察にも示唆を与えてくれる内容だと思います。

◆Golinkoff, Roberta Michnick and Kathy Hirsh-Pasek (2000) How Babies Talk : The Magic and Mystery of Language in the First Three Years of Life. Plume.
一般読者(特に子供がいる人)向けに書かれた言語発達の概論書です。胎児や乳児の知覚に関する研究は1〜2章にあります。


【科学論】
「新しい自然学ー非線形科学の可能性」蔵本由紀 2003年 岩波書店 2300円
学生さんと話していて「身近なことや、人々の関心が高いことでもまだわからないことがたくさんあるのですね」というコメントをいただきましたが、このコメントは実は他の学問分野にもあてはまることです。素朴な科学信仰を脱することの大切さ、新しい科学はどうあるべきかについての考察です。やや難解な書き方ですが、せっかく大学に来たのですからこのレベルの書籍に挑戦してみるのもよいのではと思います。

【言語学一般】
「言語を生み出す本能(上・下)」スティーブン・ピンカー 1995年 NHKブックス 各1280円
身近な実例や(当時の)最新の研究成果をまじえつつ、言語学の問題意識を一般の人と共有するために書かれた本です。社会言語学に関する議論もいろいろ入っています。下巻に言語相対説・ピジンとクリオールに関する議論があります。また、手話学や脳と言語についてもいろいろな場所でふれています。翻訳では原著のくだけた感じが失われてしまっているので、可能であれば原著 'The Language Instinct' を読むことを強くおすすめします。


◆「生成文法を学ぶ人のために」中井悟・上田雅信編 2004年 世界思想社 
第1章は近代科学の発展と言語学の発展を対比させた、貴重な解説がわかりやすく提示されています。言語獲得・言語処理などの言語学関連分野の紹介もあります。

「メノン」プラトン著・藤沢令夫訳・岩波文庫
授業で紹介した生得説の原型(想起説)が提示されています。全体が短く、対話の形をとっているので比較的読みやすいと思います。

【関連性理論】
「語用論への招待」今井 邦彦 2001年 大修館書店 2200円
語用論の回の予習用文献です。関連性理論について丁寧に紹介してあります。構成を考えるとタイトルは「関連性理論への招待」の方がいいような気もするぐらいです。

【動物のコミュニケーション】
「そんなバカな!遺伝子と神について」竹内 久美子 1994年 文芸春秋 448円
動物のさまざまな行動(コミュニケーション含む)がおもしろく紹介されています。紹介されている研究は本当に驚くべき発見が多いです。ただし著者自身の分析(応用?)にはかなり難あり、とみました。

【言語と遺伝子】
「やわらかな遺伝子」マット・リドレー 紀伊国屋書店
第7章の一部を授業プリントにして配布しました。一般向けではあるのですが、生物学の記述が少し詳しめなので、そういう分野に馴染みのない人には少し読みにくいかもしれませんが、言語学も含む認知科学についての新しい知見がうまく紹介されています。

「心を生み出す遺伝子」ゲイリー・マーカス 岩波書店
遺伝子・脳・言語を含む人間の認知機能について、最新の知見が紹介されています。生物学になじみのない人には少し大変かもしれませんが、とばし読みでも十分おもしろいと思います。

【言語音の認知の発達】
◆Jusczyk, Peter. (1997) The Discovery of Spoken Language. MIT Press.
アイマスの一連の研究が、他の研究との関連性をふまえてわかりやすく書かれています。


【統語論の獲得】
◆ビデオ「Acquiring the human language "Playing the language game"」メディアセンター分類番号  =  NDC8: 807 
著者標目  =  Searchinger, Gene
55分のビデオ番組です。三田・日吉どちらのメディアセンターでも視聴できます。トランスクリプト(ナレーションなどがそのまま印刷されたもの)も同時に借り出すことができます。今回と次回の授業の内容が扱われており、実験風景も見られます。

【統語論の獲得】
「心理言語学」大津由紀雄 (1989)(太田朗〔編〕 『英語学大系6 英語学の関連分野)』)大修館書店
授業で扱った言語使用の創造性、刺激の貧困、ハイアムズの研究についての大変詳しい紹介があります。ちょっとスタイルは固めですが、予備知識のある人なら大丈夫ではと思います。

【生成文法の言語哲学】
「言語と思考」ノーム・チョムスキー著・大石正幸訳 (1999) 松柏社 2800円
哲学に詳しい人が、その知識を用いて生成文法の考え方を理解するのに役立つ資料かと思います。チョムスキーが哲学という分野に与えた影響に興味がある人にもよいかもしれません。言語哲学の予備知識がない人は『生成文法を学ぶ人のために』(世界思想社)の第1章とその文献案内に載っているものにまず取り組んだ方がよいかと思います。

【バイリンガリズム】

「バイリンガル教育の方法 増補改訂版」 中島和子 2001年 アルク

英語を子どもに教えるな」市川力 2004年 中央公論新社 
十分な配慮をせずに外国語環境に子どもを置く(というか放り出す)結果生じる「セミリンガル」状態を、具体例を交えて指摘した重要な本です。同じ著者の「『教えない』英語教育」もおすすめです。

Cunningham-Andersson, Una and Staffan Andersson. 1999. Growing Up with Two Languages. Raoutledge.
バイリンガル環境で子どもを育てる両親へのガイドブックです。学術的なアプローチではありませんが、体験談が非常に充実しており、バイリンガル環境にいかに個人差があるかがうかがえる良書です。

「バイリンガル(ニ言語使用者):その実像と問題点」山本雅代 1991年 大修館書店
やや古めの本ですが、分野の知識を得るためにまず和書で1冊ということならこれからスタートというのがよいのではないでしょうか。

◆ Romaine, Suzanne 1995 Bilingualism (second edition) Blackwell.
第2版まで出ているということは、広く読まれている本だと推察されます。分野を概観するのに便利な本です。

「小学校でなぜ英語?学校英語教育を考える」大津由紀雄・鳥飼玖美子 2002年 岩波書店(岩波ブックレット) 480円
年齢と外国語学習について、授業で扱った内容も出てきます。あまり長くないのですぐ読めます。



【性差と言語】
「わかりあえる理由(わけ) わかりあえない理由(わけ)―男と女が傷つけあわないための口のきき方8章」デボラ・タネン 田丸美寿々【訳】 2003年 講談社 780円
男女のコミュニケーションがなぜ一種の「異文化コミュニケーション」なのかを、著名な社会言語学者が一般読者向けに解説したアメリカのベストセラー本です。


「脳にいどむ言語学」萩原 裕子 1998年 岩波書店 1100円
言語理論と脳研究との関係について大変読みやすく解説してあります。事象関連電位についても詳しい紹介が含まれています。


【音声学その他】
◆「ダーリンの頭ン中:英語と語学」小栗左多里&トニー・ラズロ 2005年 メディアファクトリー 950円
言語オタクもここまで高じると、言語学概論の参考文献になりえる内容になるということでしょうか。左多里さんとのかけあい形式のマンガなので、初心者もとっつきやすいと思います。


【形態論】
◆「新語はこうして作られる」 窪園 晴夫 2002年 岩波書店 1500円
語形成のプロセスについては、実例をたくさん見てもらった方がわかりやすいように思います。言語学の知識がない読者でも読める内容なのですが、参考文献も少しついていて、概論履修者には気軽に楽しめて役に立つ文献かと思います。


辞書

◆「英語学用語辞典」
 荒木一雄(編著) 三省堂 5300円
サイズがコンパクトなので、ちょっと用語を調べたいときにとても便利です。見出し部分は英語ですが、巻末に日英対照用語表がついている ので問題ないかと思います(英語の文献を読むときにも便利)。そして参考文献リストも充実しています。 今後も言語学の授業をとる予定のある人は買ってしまってもよいかもしれません。

「英語学」というのは日本では政治的な経緯もあって、あたかも 「言語学」とは違う分野のように分類されてしまっています。この辞書も実際には英語データに特有の用語と いうよりも、言語学全般の主要な分野の用語がうまくまとめ られた内容となっています。特に近年の統語論の情報を検索する場合は、 たいていの「言語学辞典」よりもずっと適切かと思います。
雑誌

「月刊言語」大修館書店
毎回、言語学に関するいろいろな特集を、わかりやすく提示してあります。さまざまな分野をカバーしているので、言語学を勉強した学生なら、どこかに興味をひかれる記事があると思います。バックナンバーも要チェック。関連学会情報、大学院受験情報もよく載ります。
書籍
「言語」30周年記念別冊「日本の言語学:30年の歩みと今世紀の展望」 2002年 大修館書店 2286円 

日本における言語学の状況を俯瞰したい人におすすめ。やや専門性高し。

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