おすすめの映画


以前、英語の勉強のために映画を見たいので何か紹介してほしい、というような意味のことが英作文の宿題に書いてあったことがあります。学生さんは洋画好きな人多いですね。大学教員の中には洋画、中でも「ミニシアターでやってるっぽい」芸術性の高いものが好きな人も少なくないのですが、私は明らかに違います。

近年見た映画は「少林サッカー」とか「ラスト・サムライ」とか「名探偵コナン・銀翼の奇術師」とかです。こんなラインナップでは、とても教員の映画話には入れてもらえません。(「ラスト・サムライ」は最後の10分がなぜあんなことになっちゃってるのかを考えることで、アメリカ人の国民性について興味深い洞察が得られるような気もしましたが。)そんな人間が紹介する映画ではありますが、2種類2本ずつおすすめします。


ポップカルチャー

"The Blues Brothers"(1980年米) 監督:John Landis, 出演:John Belushi, Dan Aykroid他

ミュージカルコメディーですが、音楽で参加しているアーティストのレベルがただごとではないのと(後で有名になった曲がいっぱいあります。特にソウル好きは必見)とにかくアクションが豪快で、ギャグもナイスにバカバカしくて、ある意味「伝説」の映画ではあるだろうと思います。人気TV番組"Saturday Night Live"のキャラの「映画編」だということもあって、今でもアメリカ人でBlues Brothersを知らない人はあまりいなさそうです。アメリカのポップカルチャーの中では「常識」に近い位置づけかと思うので、推薦することにしました。

"Fame" (1980年米) 監督:Alan Parker, 出演:Irene Carra他

NYCに(←New York City。"New York"だけでは正確にはNY州のことになってしまうので注意。)High School for the Performing Artsという公立高校があり、音楽・演劇・ダンスが相当本格的に勉強できます。というか、ほとんどプロになるための学校です。そんな学校であれこれ奮闘する名もない生徒達の話なんですが、現実としてあの業界で本当にやっていける人なんてそうそういないし、努力した分報われるという世界でもないわけですよね。それがわかっていても「自分には何とかなるんじゃないか」という気持ち、そして同時に「でも本当に何とかなるのか?」という気持ちがないまぜになったまま、どんどん出される課題をこなしていかないといけないという生活に、非常に共感をおぼえます。芸能人じゃないけど自分も若いときはわりとそうだったしなあ、みたいな。主題歌が有名ですが、挿入歌もいいのがいっぱいあります。



ドキュメンタリー

"Bowling for Columbine" (2002年米) 監督:Michael Moore

何かと話題になったマイケル・ムーア監督ですが、私としては「華氏911」よりもまずこちらを見ていただきたいです。こちらはマイケル・ムーア自身が行ったインタビューや体験映像がふんだんに入っているので、彼がどういうスタンスでドキュメンタリーを作っているのかがよくわかると思います。切ない映画ですが、アメリカという国を理解する一助にはなるように思います。

「チョムスキー 911 Power and Terror」
(2002年日本) 監督:ジャン・ユンカーマン 出演:ノーム・チョムスキー

私が専門としている言語理論はチョムスキーが提唱したものですが、この人には言語学と政治活動の2つのものすごいキャリアがあって、映画はタイトル通りの政治的な内容です。アメリカにいた頃、言語学に関するもの、政治に関するものの両方の本人の講演を何度も聴いていますが、どちらをやるときもスタンスは同じだなあとよく感じます。具体的に言えば、どんなに「当時の一般常識や権威」から外れた発想であっても、徹底的に調べあげた事実(データ)を用いて相手を説得しようとする態度、そして人間の理性に対する「素朴にポジティブな」信頼です。題材はヘビーですが、そのポジティブな気持ちがあるから見終わっても救いがあるような気がしました。音楽が忌野清志郎っていうのはびっくりしましたがいいチョイスですね。