授業評価:「言語情報科学特殊演習IV」
2007年度冬学期
 (東京大学教養学部)


この授業の目的は、言語獲得研究の異なるアプローチの基本的な知識を得たうえで、乳幼児の母語獲得研究の成果を概観し、認知科学の一分野としての言語研究についての知識を深めることである。
主なトピックは以下のとおりである:言語獲得の過程のモデル・人間言語の特性とその獲得・連続仮説と成熟仮説・ブートストラッピング・経験的アプローチと合理主義的アプローチ・脳と言語の発達・障害児の言語獲得とモジュール仮説・養育放棄事例と臨界期・インプットと言語獲得との関係・刺激の貧困とプラトンの問題・言語獲得研究の方法論・言語音の知覚(音韻的特徴の弁別能力)・喃語の発達・幼児言語における音韻的規則性・乳児の言語認識における統語知識・形態規則の適用(活用語尾・階層構造)・過剰一般化・幼児の言語と構造依存性・初期の句構造規則・原理とパラメータのアプローチ(束縛理論)・幼児の数量詞の解釈・手話のクリオール化・心の理論。

Lust, Barbara. 2006. Child Language:Acquisition and Growth (Cambridge).

学期末試験・宿題・平常点を組み合わせて評価する。



評価対象となる課題を完了した履修者:7
アンケート有効回答数:7 

このクラスの評点の分布
A:4(57%)  B:3(43%)  C:0(0%)  D:0(0%)


言語情報科学特殊演習IV 1(全然そう思わない) 2 3 4 5(とてもそう思う) 9(わからない・無回答) 平均
教員は熱意を持って教科の内容を提示した 0 0 0 0 6 0 5.00
教員の説明はわかりやすかった 0 0 0 5 1 0 4.17
教室内外で質問しやすかった 0 0 0 5 1 0 4.17
教員は授業に関わる悩みなど、学生の気持ちを理解しようとしていた 0 0 1 3 2 0 4.17
平均値(教員の教授態度) 4.38
授業は全体的にうまく構成されていた 0 0 0 4 2 0 4.33
教員の使った例や体験談は内容の理解に役立った 0 0 0 1 5 0 4.83
授業で扱おうとした内容の量は適切だった 0 2 2 1 1 0 3.17
教員の授業のペースは適切だった 0 1 2 1 2 0 3.67
課題など学生のやるべきことは明確だった 0 0 0 3 3 0 4.50
教員は毎回のクラスの準備を充分行っていた 0 0 0 0 6 0 5.00
教員は学生の授業への参加を奨励した 0 0 0 5 1 0 4.17
全般的に見て、教員はこの教科を効率よく教える能力を持っていると思えた 0 0 0 2 4 0 4.67
平均値(授業の構成・教授能力) 4.29
課題の量は授業の内容を考えると適切だった 0 0 1 3 2 0 4.17
予習文献のレベルは適切だった 0 2 1 1 2 0 3.50
あなたが書いたものに教員は有用なコメントや提案を返してくれた 0 0 0 2 4 0 4.67
ライティング課題(レポート、練習問題など)は内容の理解や新しい知識を応用する力の養成に役立った 0 0 3 2 1 0 3.67
試験・小テストは内容の理解や新しい知識を応用する力の養成に役立った 0 0 1 2 2 1 4.20
平均値(課題・評価) 4.03
60%以下 約60% 約70% 約80% 90%以上 無回答
授業で扱われた内容の何パーセントぐらいを実際に「学んだ」と感じましたか? 0 1 3 1 1 0

良いと思った点:講義・発表・テストのバランスがよかった。ホームページのフォローもあり誠意を感じた。生徒から出た、1つ1つの質問に大事に答えてくれる点。質問しやすい環境。次の週に授業のフォローをする点。レジュメの作り方の指導。内容に比べて時間が少ない分、ミニットペーパーによるフォローがあったのは良かったです(他1名)。教科書に出てこない例まで詳しく説明してもらったのが理解の助けになった。

改善してほしい点:全体的に扱う量が多く、授業がつまっている感じだった。もう少し扱う量を減らしても(章をとばすなど)よかったと思う(他2名)。Minute paperの回答は、古いのを消さず蓄積してほしい。補足情報をプリントにする(板書だと書くのと聞くののバランスが難しいので)。実験の紹介をするときに、目的を伝えずに具体的な内容に入っていたので、全体像がつかみにくかった。生成文法以外のパラダイムへの言及があればよいかと思う。

その他コメント:L1獲得については断片的知識しかなかったが、一度体系的に学べたのが良かった。今まで学んだ知識が結びついたのがよかった。手話にとても興味を持った。



教員からのコメント
他大学での学部クラスで、概論レベルの知識がある学生、昨年出たばかりの教科書と、初めてづくしの仕事で、毎回バタバタしていたような気がしますが、温かく迎えていただいて無事に終わることができました。扱うトピックが半期クラスの割に広すぎたのは確かです。実験的に導入したミニットペーパーが思いがけずその問題のフォローになったようで、何事もやってみるものだと思います。