リーディング

リーディングとリスニングの「指導」が難しい理由は2つあります。
  • 学習者のスキル(特に一つのタスクにかかる時間)の個人差がとにかく激しい
  • スキルの評価が難題である(理解は頭の中で起こることだから)
よって、これらは普通の英語の授業で一斉に指導することには向かないスキル、言い換えれば学生さんが家で自習する方が向いているスキルであるということです。

訓練のポイント

 辞書は使わない。わからない単語やフレーズがあってもいちいち気にしない。

その理由は「時間がかかってめんどくさい」からです。文学研究者や翻訳者にでもならない限り、みなさんが英語リーディングを訓練する理由は「効率的に情報を得る」ことに尽きると思います(私も同じです)。たらたら辞書を引いている間にどんどん新しい情報が世の中に出てくるわけで、そんな使えないリーディングはそれこそ「趣味」で英語を勉強する人がやったらいいんじゃないかと思います。

ではわからない単語が出てきたらどうする?と思う人もいるかもしれませんが、ズバリ「文脈から推測する」しかないです。実際、上級学習者やネイティブはそのようにして英文を読んでいます。推測しようとしても80%がわからない単語ばかり、という人は、選んだ教材のレベルが少し高すぎるということになります。

情報の配置・構造に注意して、自分が欲しい情報がどこにあるかを早く見抜く。
いわゆる「スキミング+リーディング」のテクニックです。

1.章とセクションのタイトルをチェックし、情報の流れをつかむ。タイトルに含まれているのは大事なキーワードなので、辞書でひいてもよい。

2.各パラグラフの最初の文(トピックセンテンス)だけを読む。線を引くのもよい。(ただし最初の文がトピックセンテンスではない場合もあるので注意。)辞書なしで文の意味がつかめない場合は、周辺の文を読んでだいたいの意味を推測する。具体例など、次の文にヒントがあることが多い。肯定的か否定的か、ぐらいの推測でOK。それでもよくわからないときは、そのパラグラフをとばして次へ進む。

3.セクションの最後までその方法で進んでから、始めに戻って例などの細かいところを読む。各パラグラフのメインとなる情報+主な例などのサポート情報がわかれば、すべての文がわからなくてもよい。わかった部分の情報を組み合わせて、わからない部分を自分で推測する。推測に自信がないところ、その他気になるところを辞書を使って確認する。

小ワザ編
  • 出来事が起こった年代は線を引いたり、丸をつけたりしてチェックする。出来事の「流れ」をつかむ。
  • 「例」がでてきたら自分で@,A・・・などと番号をふる。"First""Second"など、列挙のヒントとなる数字がある場合は丸で囲んでおく。"Two factors""Three reasons"など、「これから列挙します」と予告するフレーズも丸で囲み、その2つやら3つやらが何なのかを先に検索して印をつける。それから詳しい説明を読む。
  • 数字の羅列がある場合は、余白などに簡単な表にして書き込む。
  • 全体を通して何度も出てくる難し目の単語は「キーワード」であることが多い。迷わず辞書で引く。

 読むものの種類と量を増やして、単語との「出会い体験」の頻度を上げる

中級から上級へのレベルアップを目指している人にとっては、「一つレベルが上」の英単語や表現が今ひとつ不十分と感じる人も多いと思います。関連する研究によると、まとまった読みものの中で(つまり文脈の中で)同じ単語に数十回出会わないとその単語の習得につながらないということらしいです。そして同じ表現が自分で使えるようになるまでには、さらに数十回の「出会い体験」が必要ということです。

なので、とにかく80%程度わかるようなマテリアルをとにかくいろいろ読み、さまざまな単語と出会う「機会」を増やすように心がけるしかないということみたいです。(下の多読教材の情報も参考にしてください)

ボキャブラリーを増やすためのテコ入れ策としては、読んでいてわからなかった単語をカードなどに書いて(単語だけ取り出さず、それが含まれていた「文」を書くことも用法を学ぶための重要ポイント)何度も見直す、もしくは文自体を暗記してしまうという方法もあげられます。


教材の選び方

リスニングとほとんど同じアドバイスです。

 個人的に興味を持っているトピックについて書かれたものを選ぶ
たとえば、「サッカー」とか「音楽ネタ」とか「食べもの」とか「行ったことのある街」とか「映画」とか、何でもいいのです。ちょっとぐらいわからない部分があっても、予備知識である程度カバーできる可能性が高いからです。駅の売店で売ってる英字新聞は150円ぐらいですから、興味のある記事を1〜2本、そして広告をいくつか読むだけで「もと」は十分とれるのではと思います。

 20%しかわからないものを根性で読もうとするより、80%わかるマテリアルを気軽にいろいろ読む

おすすめ教材

 Timed Readings, Third Edition (Book One-Ten) Glencoe/McGraw-Hill
 Timed Readings Plus in Social Studies, (Book 1-10) Glencoe/McGraw-Hill

スキャニング・スキミングというテクニックを使った速読自習用教材です。400語ぐらいの短い英文を、時間を計りながら読み、内容に関する10問の質問に答えるというフォーマットです。それをどんどん自分でこなしていくということになります。速読のためのテクニックや本の使い方は最初に解説してあります。

基本シリーズの内容は主にノンフィクションですが、同じ会社から「文学編」「社会科学編」「自然科学編」シリーズが出ています。このほとんどすべてが10巻シリーズになっているのですが、難易度は大きく異なっており、8〜10巻あたりが英検1級レベルだそうです。

なかなかのロングセラーらしく、日本の大きい書店の洋書コーナーの英語教材(ESL)セクションにはよくそろっています(丸善がおすすめ)。自分でぱらぱら見て、ちょうどよいレベルのものを使うとよいでしょう。お値段は1冊1500円〜3000円程度です。

多読関連のサイト(メディアセンター3階東「語学学習コーナー」に多読教材があります)

単語数の数え方(SSS多読研究会サイト)
ピアソンジャパン(ペンギンリーダーズの各タイトルを選択してクリックすると語数が確認できます)