相談員の基本姿勢
(0)基本的な理解をもつこと。
まず、フェニミズムの基本的な理解をしていただきたいです。
セクシュアル・ハラスメントとは何か、はもちろんのこと、働く女性を
めぐる諸問題についての理解がないと、とんでもない発言をしたりします。
本の紹介は別のページにありますので参考にして下さい。
また、内心では、実は、女性は働くべきでない、とか、自分の奥さんは専業
主婦でなければ嫌だ、などと思っている人は、相談員としての資質を再考して
みて下さい。気をつけていても、発言が加害者側に偏っていることがあります。
セクハラや性犯罪の被害への対処で特に気をつけなければならないことは、
「被害者にも落度があるのではないか?」と疑う誤った通念です。
このために、被害者は二次的被害にあい、さらに傷つけられやすいのです。
(注:たとえ被害者が美人でセクシーなドレスをいつも着ていても、セクハラは
する方に100%非があり、女性の方には、とがめられる点は全くない。女性の
態度が悪いとか、すきがある、などは加害者の犯罪をを正当化することには
なりません。いろいろな文献を読んでも理解できなければ、相談員をただちに
辞めて下さい。
(1)被害者を傷つけないことを第一に考えて下さい。
口頭やメイルの表現は慎重に。ちょっとした不親切な表現が相談者を傷つける
ことがあります。また、被害者が自分のアドバイスのとおりにしないからと
いって、無理じいしてはいけません。被害者の気持をまず受け入れ、その気持に
そってとるべき行動を考えて下さい。そう、相談にのる方はとても傷つきます。
重い事件ほど相談にのる方も大変です。覚悟しましょう。
くれぐれも自分の面子を第一にしたり、むかっとなったり、被害者を何とか
説得しようと思わないこと。組織にとってみれば、被害者をなだめて黙らせれば
被害は発生しなかったことになるので、被害者を説得するほうがコトは簡単
です。しかし、説得すべき相手は加害者なのです。
また、専門が『女性学』や『カウンセリング心理学』の先生方は、まわりから
セクシュアル・ハラスメント問題の専門家として期待されますが、専門がそう
だからといって、大学の先生(=研究者)として雇われた人が、必ずしもこの種の
相談員に向いているとは限りません。
(はっきり言えば、ほとんどの場合が、セクシュアル・ハラスメントの相談員と
してはしろうとです。心理学やカウンセラーの先生は、フェミニズムの基本的な
ことがらを理解していないことが多く、セクハラ問題を解決するのには不向き
ですし、たとえフェミニズムを専門にしていても、心の傷の対応には慣れて
いません。
大学でカウンセラーがカウンセラーをセクシュアル・ハラスメントしたと
いう事件が裁判になっているケースもありますし、心理学の先生が被害者への
対応を誤って PTSD に追い込んだ例もあります。ひょっとしたら、大学のカウン
セラーの先生に頼るよりは、天文学者の方がよほどまともかもしれないので、
助けは借りても最終判断には自分たちで責任をもつよう、できるだけまともな
解決をしようと覚悟をきめましょう。
何故かというと、心理学の先生は、専門が専門なので、自分の論理が正しいと
思っていますが、セクハラは最近になって提出された概念です。
日本の社会の中で今まで生きぬいてきた経験に自信のある人ほど、従来の古い
観念でことを対処しがちです。その点には十分注意して下さい。
(2)加害者への教育やカウンセリングを熱心に行うこと
ただ罰するだけでは、被害が繰り返されるだけです。加害者が教授だったり
役職者だったり、ひょっとして心理学の先生やカウンセラーだったりすれば、
とってもやりにくいと思いますが、そういう場合こそ、カウンセリングなり
再教育なりが必要とされています。加害者を懲戒免職にする場合以外は、
再び犯罪を繰りかえさないように、必ず再教育を行って下さい。
(ただし、これまで加害者が心を改めて、セクハラやアカハラと無縁になった
という例は聞いたことがありません。いったん加害を起こした人にたいしては
ふたたび加害をすることのないよう、周囲の人間がつねに見張る必要があります。)
(3)自分にできる限界を知ること。
大学内に設置された相談組織は、組織形態にもよりますが、大きな限界が
あります。たとえば、加害者が理事や学部長や学長だった場合には、どれ
ほどのことができるかを考えればわかると思います。セクシュアル・ハラス
メントをした責任を一相談員が、どこまで追求できるでしょうか。かりに
問題がこじれて裁判にでもなった時、自分はどちら側につくのかを考えれば、
限界がわかるでしょう。相談員であれば、その組織の限界の制約がありますが、
限界の中で解決したいとの思いの余り、被害者の気持にそった解決でない方向に
むかってはいけません。
重大な問題こそ解決すべきなのですが、相談員としては、重大な問題こそ
手にあまることがあります。その時には、守秘義務などをふりかざさないで、
組織を超えた解決方法を考えるべきでしょう。学外に訴える、学会に訴える
ことも考えて下さい。加害者が学会で他の人に加害することを防ぐ必要があります。
(4)解決できない問題は、必ず世に出ると思え。
解決できなかったトラブルは、うやむやになって終ったように見えますが、実は
いつまでもトラブルのまま、ナマの事件として存在し続けます。
何年かたてば、日本でもセクシュアル・ハラスメントの問題はもっと
おおっぴらに問題になり、被害をうけた人が名乗り出ることが普通のことに
なるでしょう。そのとき、加害者と、組織の責任者は責任を問われ、学者生命を
失うと思っていたほうが better です(もともと学者生命がない人だったら
どうするか?。。。。うーん)。
(このページは進化の途中です。とりあえず、ここまで)
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