『天文学分野での女性研究者をめぐる問題アンケート』添付資料

                                      (日本天文学会 教育委員 加藤万里子@慶応大学)
 男女雇用機会均等法が改正され、職場におけるセクシュアル・ハラスメント防止のために、
事業主の雇用管理上の配慮が義務づけられました。 (平成11年4月施行)そのため各大学
で、ガイドラインの制定と防止組織の設置を急いでいます.

  ガイドラインができ、防止組織ができたことは評価できますが、できたばかりの組織なの
で、問題点はいろいろあります。たとえば防止委員として管理職にある人が任命されるよう
では、職員は訴え出ることもできず、事件の解決や被害者の救済よりも、組織防衛を優先し
ていると言わざるを得ません。また防止委員にセクシュアル・ハラスメントについての知識
や、人権救済の実践経験がないと、迅速で適切な処理が行えるという状況にはないかもしれ
ません。被害者は嫌な体験を思いだすため、訴えること自体が苦痛なのです。人材育成の努
力と経験の蓄積が求められています。
   各大学のガイドラインと全国ネットワーク、本の紹介はホームページを見て下さい。
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セクシュアル・ハラスメントの事例                    

事例1                                 
  上司(男性)に帰宅途中後をつけられたり、自宅におしかけられたりするなどのセクハラ
   を受けた。同僚に相談したところ、醜聞として吹聴されるなどされ、職場内で孤立してし
   まった。そのため、精神的においつめられ、精神面の治療を受ける状態に陥った。
                                       
事例2                                                                 
  朝、エレベーターの中で他課の職員と二人きりになったときに後ろから抱きつかれた。そ
   の日は終日そのことが頭から離れず、仕事も手につかない状態になってしまい早退した。
   その後は一人でその課の近くに行くのが怖くて大変困った。
                                                                           
事例3                                                                 
  アフター5に職場の先輩から仕事の関係で少し話をしたいと飲食に誘われ、断り切れずに
   応じたところ、酒の勢いをかりて好意を直接行動に出された。大変なショックを受け、相
   手の顔を見ると腹が立ち、話をするのが苦痛で仕事にかなりの影響が出た。毎日出勤途上
   で自宅に帰りたくなる日が続いた 。
                                                                           
事例4                                                                 
 お酒の席で突然大きな声で「あんた生理休暇とったよねー。」と言われた。思わず「それ、
  セクハラじゃないんですか」と言い返してしまったところ、それ以来上司もあまり話しか
  けてこなくなり、仕事がやりずらくなってしまった.
                                                                           
事例5                                                                 
  上司から「可愛いね。きれいだ。食べちゃいたい」と仕事中にも連発され、食事にも誘わ
  れた。そういう態度をとり続ける上司が嫌いになり、誘いを断り、距離を置くようにした
  ところ、仕事中に「その態度は何だ。上司に向かって。少しは考えてみろ」と怒鳴られた。
  とっさに言い訳もできずあやまったものの、悔しくて涙が止まらなかった。  
                                                                           
事例6                                                                 
  直接指導をうける上司から一対一で食事などに誘われた。仕事を教えてもらう立場もあり
   応じていたところ、体を触られることが何度かあった。そのため、その後は誘いを断った
   ところ、職場の同僚の前でからかいや批判の対象にされるようになり、毎日の出勤が苦痛
   になった。                             
                                                                           
事例7                                                                 
  職場で「オバサン」といわれたり、短いスカートや流行の服を着ていると、「年甲斐もな
   く若いかっこをして」といわれたりする。注意をすると「コミュニケーションの一環のつ
   もりなのにそう言うならもう話さない」などといわれる。大変傷ついているのだが、上司
   や管理職はさほど深刻に考えていないようにみえる。
                                                                           
事例8                                                                 
  上司が、人と話すとき、男女問わず、もたれかかったり、時には肩をつかんだり、太もも
   を触ったりする。また、名前を知らない人のことを聞く時に「あの○○課にいる胸のデカ
   イ女の人なんてったっけ?」、「あのケツのデカイの誰だ?」などの言い方をするので非
   常に気分が悪くなる。                   

                       「公務職場におけるセクシュアルハラスメント防止対策のてびき」
                    人事院セクシュアル・ハラスメント研究会編、900円、p.135 より
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 セクシュアル・ハラスメントの行為                                        

「性的言動及び掲示等により不快の念を抱かせるような環境を作りだすこと」  
  とは例えば次の行為等を言う。                                            
(1)仕事の途中に、相手の性的魅力や自分の抱く性的関心にかかわる話題等で  
   妨害するなど、正常な業務の遂行を性にかかわる話題、行為等で妨害すること
(2)性的な意図をもって、身体への一方的な接近又は接触するなど、次の行為  
   を行うこと。                                                          
  イ 相手の身体を上から下まで長い間じろじろ眺め又は目で追うこと。        
  ロ 相手の身体の一部(肩、背中、腰,頬、髪等)に意識的に触れること。    
(3)性的な面で、不快感をもよおすような話題、行動及び状況をつくるなど、  
   次の行為を行うこと                                                    
  イ 相手が返答に窮するような性的又は下品な冗談をいうこと。              
  ロ 職場にポルノ写真、わいせつ図画を貼る等の扇情的な雰囲気を作ること。  
  ハ 卑わいな絵画、映像又は文章等を見ることを強要すること。              
  ニ 親睦会、就業後のつきあい等で、集団で下品な行動をとること。          
  ホ 性に関する悪質な冗談やからかいを行うこと。                          
  へ 相手が不快感を表明しているにもかかわらず、その場からの離脱を妨害すること.
  ト 意図的に性的なうわさを流すこと。                                    
  チ 個人的な性体験等を尋ねること又は経験談を話したり、聞いたりすること. 
                                                                            
         鳴門教育大学『セクシュアル・ハラスメントの防止等に関する指針』より抜粋

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環境型セクシュアル・ハラスメント                                    
  明白には具体的、経済的な不利益は伴わないものの、屈辱的、敵対的な発言の繰り返しによ
  り、就業環境を著しく不快なものとし、個人の職業能力の発揮に深刻な影響を及ぼす場合を
  いう.                                                     労働省ホームページより 

対価型セクシュアル・ハラスメント                                 
 権限をもつ上司からの性的な要求を拒否したため、解雇や昇進差別等の職業上の不利益
  が生じた場合をいう (ここで「性的な要求」とは言葉どおりのものに加えて、より軽度の
  ものも含まれる)          

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セカンドレイプ(二次的セクハラ)                                  
 被害者が知人、相談員、警察、医師、弁護士、裁判官などに自分の被害を訴える際、人々の
  無理解のためや、古い社会通念を押し付けられるために、更に傷つくこと。

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性犯罪被害者への心理的サポートの必要性                                
 PTSD症候群(外傷後ストレス障害)                                  
(1)過覚醒状態--緊張と恐怖                                            
  たとえば強姦の被害者が、強姦の恐怖とまた強姦されるのではないか、という不安のた
    めに過度に警戒し、いつもびくびくしてリラックスできない状態のこと。強姦の前と違
    って世界の安全性がつぶれてしまったので、起きている時も寝ているときも、リラック
    スできない。睡眠障害がひどい。    
(2)浸入症状--フラッシュバック                                        
  思い出したくないのに、事件の生々しい状況が頭に浮かんできて、恐怖がよみがえり、
    体がそれに反応してはげしく緊張する。                    
(3)狭窄症状--金縛りになる                                             
  自分が解離している意識になる。外傷性記憶喪失など。                
        『キャンパス・セクシュアル・ハラスメント』より          
               500円、キャンパス・セクシュアルハラスメント全国ネットワーク編

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セクシュアル・ハラスメントに関する文献紹介は
 http://sunrise.hc.keio.ac.jp/~mariko/sexhar.html  にあります。ストレスやセクシュア
ル・ハラスメントにより体調が悪くなった場合に参考書になりそうな本は、    
 http://sunrise.hc.keio.ac.jp/~mariko/feminism/psi.txt   で紹介しています。
知は力です。女性も男性も気持良く普通に働ける社会に、早くなってほしいと思います。
                                                                       (以上)