託児室を設置する学会が関心を集めている。女性の社会進出とともに、育児と研究の両立に悩む女性研究者が増えていることがその背景。「子供連れではちょっと…」と学会出席をためらってきた女性研究者には朗報で、「託児室完備」の学会には問い合わせが相次いでいるという。
先月二十日から二十二日まで日本天文学会年会が開かれた東大駒場キャンパス(東京都目黒区)に、雰囲気の違う一室があった。
ベビーベッドとカーペット、壁には色紙の花が飾られている。入り口には「保育室」。中をのぞくと、三人の乳幼児が二人のベビーシッターと遊んでいた。
保育室は同学会として初めての試みだ。年会実行委員の加藤万里子・慶応大助教授が提唱。三家族の子供四人が利用した。専門のベビーシッターを派遣、親の居場所の確認や保険などもしっかりさせた。
近年女性会員が増え、今回の学会では参加者六百人のうち三十−四十人が女性だ。三年ほど前から子供連れで会場に来る会員もみられるようになった。
今回保育室を利用した女性研究者は同業の夫婦。保育室で子供が遊ぶ姿をながめながら「これまでは学会参加をあきらめたりしていた」と話す。
昨年十月二十日に横浜市で開催された日本産科婦人科学会関東連合地方部会総会でも託児室が設けられた。
小児科医、看護婦、調乳師、保母など万全の体制を組み、保険もつけた。総会の参加者二百五十六人中、六十五人が女性で、十四人の子供が預けられた。
総会の会長を務めた牧野恒久・東海大教授は「産婦人科医の三−四割、医学部学生の三−四割は女性だ。男女とも対等の立場だから、育児で研修ができないとなると好ましくない」と話す。五日に開かれる日本産科婦人科学会総会でも託児室が設置される。
これらの試みに対して「うちでもやりたい」という学会からの問い合わせが相次いでいる。加藤さんは今回の実施方法や論議を掲載したホームページを開設した。牧野さんらは作成した三十−四十ページのマニュアルを、要求のあった三、四の学会に送付済みだ。
利用者からは「このような企画が増えてほしい」と広がりを望む意見が出ている。日本天文学会年会実行委員長の田中培生・東大助教授は、男性の立場からも「われわれに共通の問題だ。今後は継続的にできたらいい」と話している。