天文月報2000年3月号
Copyright 日本天文学会
天文月報、2000,93,147-153
天文学分野の女性研究者問題アンケート調査の結果報告<前編>
加藤万里子 (日本学術会議天文研連委員、天文学会教育委員)
<慶応義塾大学 理工学部>
池内 了 (日本学術会議会員、天文研連委員長)
<名古屋大学大学院理学研究科>
アブストラクト
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女性研究者のおかれている現状についてのアンケート調査の結果を
報告する。女性に限らず若手には、就職難からくる不安や、任期つき
ポストしか得られない現状では将来設計ができないことへの不安が強く
みられた。女性ではその他に別姓使用のさいのトラブルとセクシュア
ル・ハラスメントの被害が顕著にみられた。この前編では、結婚、別居、
子育て、別姓などについて報告する。
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1。はじめに
国立大学の大学院重点化にともない、博士課程の定員が増えて、若手
研究者の人数もふえ、就職や別姓使用、育児、別居、セクハラなど、さ
まざまな問題が表面化してきました。この調査は女性研究者が直面して
いる困難をうきぼりにし、研究を続ける上で障害となる問題を解決する
方向をさぐるために、天文学会教育委員会の企画をもとに天文研連の同意
を得て実施されました。女性研究者の直面する問題は、女性に端的に
あらわれていますが、決して女性だけの問題ではなく、男女を問わず
若手研究者に共通する問題ですし、ひいては天文学者全体にとって
非常に大事な問題でもあります。先だって実施された天文学研究人口調査の
結果と今回の調査結果をあわせ、これからの天文学の学術体制のありかたを
考えていく上での基本的資料となるようここに報告いたします。
2。アンケート概要
アンケートは1999年11月に実施しました。アンケート項目は、個人情報
(年齢範囲、職)、結婚形態(パートナーの有無、別居、家事・育児の分担)、
任期つきポストについて、別姓使用の現状と困っていること、セクシュア
ル・ハラスメントの被害、進学・就職のさいの周囲の扱いの男女差、
自由記述です。アンケートの質問文や説明、添付資料などは
http://sunrise.hc.keio.ac.jp/~mariko/feminism/survey99.html
をご覧ください。
送付対象者は、天文学会会員のうち、先に行われた天文学研究人口調査に
回答した博士課程1年以上の方です。女性は把握できた全員の68人に、男性は
任意抽出した100人に送付しました。発送作業は天文学会事務所にご協力
いただきました。回収した数は、女性49通(72%)、男性51通(51%)で、この
種のアンケートとしては高い回収率であり、関心の高さを反映していると
思います。アンケートにご協力いただいた皆様、ありがとうございました。
アンケート結果を理解するうえでの注意点は、年齢分布が女性と男性で
異なっていることです。男性は各年齢層にほぼ平均的にアンケートをとっていま
すが、女性は人口分布がピラミッド型であることを反映して、若い年代に
偏っており、回答者のほぼ半数が30歳以下です。
なお、プライバシー保護のため、集計は加藤が単独でおこない、結果の
まとめについての議論を池内および天文学会教育委員会のメンバーで行いました。
3。任期付きポストについて
初めに最近の大きな研究体制の変化である任期付きポストについての意見を
まとめます。ここでの任期付ポストとは、若手を対象とした、いわゆるポス
ドクや任期付き助手のことで、任期付き教授・助教授は含みません。設問は、
同意するものすべてに○をつける、というもので、項目は
1.プロジェクトや研究組織が活性化してよいと思う。
2.任期が短いと、その期間内に業績をあげなくては
ならないし、次の職をさがす必要もあり、落ち着かない。
3.任期が終わって次のポストがみつかっても、パートナーと
別居になる可能性もあるので困る。
4.結婚や出産といった長期にわたる人生設計ができない。
5.任期の更新や次のポストを得るためには、上司や
まわりに気を使ったり、言いたいことも我慢しなければならない。
6.仕事の内容がはっきりしているので、割り切ることができ、やりやすい。
7.任期付きのポスト(ポスドク等)に応募できるのは35歳まで
なので、それまでに任期のないポストに就職できるか不安だ。
8.任期付きのポストより、条件が少々悪くても、任期のないポストにつきたい。
9.その他(自由記入)
です。若い人を対象にアンケート項目をつくったので、プロジェクトを
実施する側からみた回答例は設定しませんでした(たとえば大学で任期つき
ポストが増えれば、専任者の負担が変化するなど)。
表1 任期つきポストについて同感することがら。男女
それぞれについて、各項目に同感する人の割合。
-----------------------------------------------------
同感する割合(複数回答可) 女性 男性
-----------------------------------------------------
1.プロジェクトの活性化 40% 51%
2.短い期間では落ちつかない 55 65
3.次のポストで別居の可能性 14 8
4.結婚や出産など長期の 41 20
人生設計ができない
5.上司に気をつかう 8 12
6.割り切れてやりやすい 14 4
7.35歳までに任期のないポストに 45 29
つけるか不安
8.条件が悪くても任期のないポストに 29 31
つきたい
9.その他(自由記述) 6 13
-----------------------------------------------------
30歳以下では男女とも「プロジェクトが活性化してよい」という肯定面
の方が、「短い期間でおちつかない」という否定的な面よりもわずかに多く
みられます。これは若い層では、オーバードクター問題が自分の身に迫る
問題であり、任期付きポストにつくときに業績による選別が働くことへの
肯定的な見方が一定あるものと思われます。一方、年齢が上になると
(女性で36歳以上、男性で50歳以上)その傾向は逆転し、項目2,7,8の
ようにネガティブな面を感じるという答えの方が多くなります。
この項およびアンケート全体を通じた自由記述からは、任期付きポストに
ついているため人生設計ができないことへの不安が男女ともに見られました。
特に女性では「いつ子供を生んだらよいのかわからない」「子供を産んだら
次の仕事が得られなくなると心配」「任期付きポストは産休のない男性に圧倒
的に有利」「任期付きでも産休がとれ、その期間を延長できるようなシステム
ができないか」などの意見がありました。
4。進路選択にあたっての周囲の反応
次は大学院に進学するさいの両親の反応について聞きました。表2には、
修士課程と博士課程へ進学するにあたって、両親が賛成したか、反対したかの
割合を示してあります。両親の反応が父母で違う場合や博士課程には進学して
いない場合があるので、数字の合計は100%にはなりません。
表2.進学するにあたって、両親の反応。
--------------------------------------------
修士課程への進学
--------------------------------------------
賛成 反対 どちらでもない
--------------------------------------------
女性 52% 19% 31%
男性 56% 0% 44%
--------------------------------------------
--------------------------------------------
博士課程への進学
--------------------------------------------
賛成 反対 どちらでもない
--------------------------------------------
女性 46% 11% 43%
男性 48% 6% 46%
--------------------------------------------
この表にあるように、女性の方が男性にくらべ、両親や周囲からの
反対をうけることが多いのです。自由記述の内容から判断すると、
「賛成」および「どちらでもない」は、本人が好きな道に進むこ
とを尊重するということのようです。反対の理由は、経済的理由や就職
できるかという心配のためのようでした。
女性ではそれらに加えて、女性が高学歴の道を進むことへの親戚など
からの反対が強く出る場合や、研究室の雰囲気が、女性が進学することにネ
ガティブであるという記述も複数あります。中には大学院進学をする
女性にたいする中傷を経験した人も複数いました。
上記の記述はほとんどが最近のできごとであり、女性の社会進出に対する
抵抗が、決して過去のものにはなっていないことを示しています。
5。結婚、別居、育児など
5。1。天文学研究者どうしのカップルが多い
女性が増えるとともに、天文学研究者どうしのカップルも増えてきました。
同業者のカップルでは、学会や観測などの出張が重なることが多くな
り、行動がともにできる良さがある反面、小さい子供や介護を必要とする
家族がいる場合には、出張期間にどう対策をするか、などの悩みが深刻に
なります。そこで基本的な数字を調査項目に入れました。
まず男女それぞれパートナーがいる割合を表3 にまとめました。ここでは
「パートナーがいる」「いた」をあわせた数字を示してあります。プライバシー
保護のため、数字は5%単位にしてあります。数字を見る時には、男女とも総数
が少ないためのばらつきがあることに注意してください。たとえば女性の36歳
以上の80%という数字は、男性の90%と比べて有意な差があるとは結論できないと
考えられます。
表3.パートナーがいる割合(サンプル数が特に
少ないことに注意)
----------------------- -----------------------
女性 割合 男性 割合
----------------------- -----------------------
30歳以下 20% 30歳以下 10%
31〜35歳 60% 31〜35歳 40%
36歳以上 80% 36〜49歳 90%
----------------------- 50歳以上 90%
-----------------------
厚生省ホームページ(文献1)によれば、日本の女性の未婚率は、25〜29歳が
5割、30〜34歳が2割、35〜39歳が1割です。これと表3の数字を比べる
と、天文分野の女性研究者はより晩婚化がすすんでいると言えるでしょう。ちなみ
に日本の生涯未婚率(50歳時の未婚率)は女性5.12%、男性9.13%です
(平成7年:文献2)から、50歳以上の男性天文学者の数字は全国平均で
あると言えます。
次に天文学研究者どうしのカップルはどのくらいいるかについてまとめます。
表4。 女性の天文学研究者のパートナー
---------------------------------------------------
天文学の研究者(または学生) 50%
理工系分野の研究者(または学生) 25%
理工系以外の分野の研究者(または学生) 0%
研究者ではない 25%
---------------------------------------------------
(この表は天文月報では円グラフ)
パートナーのいる女性研究者のうち、その半数が相手は天文学分野の研究者
(または学生)をパートナーとし、1/4 が天文学以外の理工系の研究者(または
学生)、のこり1/4が研究者ではない、と答えています(図1)。男性の方は、
80%が「研究者ではない」という答えで、残りは「理工系」「その他の分野の
研究者」「無回答」が同数でした。ただし、女性研究者のパートナーだとわかって
いる男性にはアンケート用紙を送付していないので、それを考慮に入れて数字を
みる必要があります。
このように同業者のカップルが多いという傾向は、日本に限らず米国でもみられ
ます。米国の物理学者にたいする調査では、女性の物理学者の半数が結婚しており、
そのうち50%が物理学者と結婚し、29%が物理以外の科学者、残り21%が
科学者以外と結婚しています。男性の方は74%が結婚しており、そのうち7%の
相手が物理学者、11%が物理以外の科学者、82%が科学者以外という結果が出て
います(文献3)。
5。2。子供の数
アンケートをとった女性の年齢分布は、若い年代ほど数が多いため、子供の数や
別居経験など人生設計にかかわる事柄について、全体の平均をとっても意味がある
結果は得られません。数は少なくなりますが、36歳以上にしぼってみると、既婚者
一人あたりの平均の子供の数は、女性が 1.2 人、男性が 1.3人で有意な差はあり
ませんでした(ここでは「妊娠中」の場合は子供一人として計算)。
なお、平成10年の合計特殊出生率(一人の女性が一生の間に生む平均こども数)
は1.38 、全国でもっとも低い東京都が 1.00 です。この特殊出生率は独身の人も
含めた平均数であり、結婚している夫婦の平均のこども数は 2.19 です(平成7年)。
従って天文学研究者は男女にかかわらず子供の数が少ない、と言えます。
厚生省のホームページでは、少子化の原因である晩婚化を導く原因として
(1)仕事をもつ女性が増えて、女性自身の経済力が増した
(2)独身生活の方が自由
(3)世間のこだわりが少ない、
をあげています。しかし天文学研究者についてみると、任期付きのポストが増えて
経済的身分的に不安定であることが若い人が結婚をためらう大きな要因になっている
と考えられます。自由記述では、30歳以下の女性が不安を訴えているのが目立ち
ました。たとえば、任期付きポストについているうちは子供をもつことができない、
産休や育休をとる女性はいやがられる、パートナーと離れることになる任期付きの
ポストに応募するかで大変悩む、別居結婚にふみきれない、結局女性は人生のうえで
研究をとるか家庭をとるかの難しい選択を迫られている、など多数の意見が寄せら
れています。
これについては、経験者との情報交換が必要であると思われます。後編では、
経験者からのアドバイスや研連としてなすべきことについてまとめたいと考えて
います。
天文学者で男性の方も子供の数が少ないことについては、OD問題の影響の可能性が
考えられます。今の50歳前後の人が若い時代には、きびしいOD問題が長年続きま
した。そのために経済状態や身分の不安定が、結婚や子育てなどに影響して、その
結果、子供の数が少なくなっている可能性もあります。ただし今回の調査では、
これに関してつっこんだ設問をしていないため、この調査結果からはっきりした
結論を出すことはできないと思われます。
アンケート調査では、研究を続けるために必要な環境改善について自由に記述して
もらいました。もっとも多かった意見が、子育てへの援助で、男女とも保育所の
充実をあげ、女性ではそれに加えて任期つきポストでの産休の保証をあげた人が
多くみられました。
子供のいる人(特に女性)にとっては、保育所の保育時間が研究時間をきめ、学会に
保育室が設置されているかが出張をきめる大きな要素になっています。子育てを続け
るための援助としては、職場の中か自宅近くに保育所があり、勤務時間に合わせて
保育時間が調整できることが切実な要求です。また出張のさいに毎回子供をつれて
いかざるを得ない場合には、旅費もかかります。こどものための旅費援助や出張
のさいの保育費用の援助などがあれば、経済的にはもちろんのこと、精神的にも
大きな支援となるでしょう。
また、特に若い人からの意見で目立つのは、任期なしポストの数が非常に限られて
おり、任期つきポストかODでいる人が多い現状では、結婚や出産をすることに不安を
感じている人が多いことです。任期つきポストでも安心して出産できるしくみが
切実な要求となっています。産休や育児休暇がとれ、その期間は任期が延長される
ような制度が求められています。また、子供を生んでも、学生の身分では保育
所への応募資格すらない自治体もあるし、社会的に認知されていない任期つきポス
ドクの身分では、保育所に入る時の優先順位が低くなります。若手のかなりの部分が
任期つきポストやODでいるような現状では(文献4)、若手が安心して子育てができる
体制をつくることは切実な要求です。
研究環境の整備も子育てにとって大きな要素になっています。たとえば研究室が
個室なら、子供を職場につれてくることも可能です。子供が重くない病気の場合や
残業の時などには、個室があると大変助かります。子供を職場につれてこれるような
環境をつくることも大切です。
5。3。別居経験
パートナーのいる女性のちょうど半数が「別居経験あり」という回答をしています。
別居の長さはさまざまで、別居の経験が全くないカップルもいれば、逆に同居の経験
がないカップルもいました。別居経験がある女性の中で、別居経験年数を年代別に
見ると、表4のように年齢とともに長くなっています。なお子供の数と別居経験の
有無とは無関係でした。男性の「別居経験あり」の割合は4%でした。
表4.別居の平均年数。「別居経験あり」と回答した
女性一人あたりの平均年数。
---------------------------
女性の年齢 別居年数
---------------------------
30歳以下 1.2年
31〜35歳 2.3年
36歳以上 4.2年
---------------------------
6。別姓について
日本の法律では、結婚するとどちらかが名前を変更しなければなりません。結婚や
離婚をするたびに、研究上・仕事上でつかう名前を変えるのは不便・不利です。
仕事で使う名前についての現状を知り問題点を出すために調査をおこないました。
なお数字はプライバシー保護のため、5%単位で四捨五入してあります。
表5 別姓の現状。パートナーがいる、いたと答えた
女性のうちの割合。英語と日本語で姓を使い分けて
いる場合には、英語の方を集計した。数字は
5%単位でまるめてある。
---------------------------------------------
研究上で使う名前 割合
---------------------------------------------
完全に相手のものに変えた 15%
全く変えない 65%
ハイフンで2つの苗字をつなげる 20%
苗字は変えミドルイニシャルを入れた 少数
無回答 少数
---------------------------------------------
まず、パートナーが「いる」「いた」と答えた女性のうち、戸籍名を変えた人は
75%、相手が戸籍名を変えた人は10%、どちらも変えない15%、無回答
若干でした。
「どちらも変えていない」には、たとえば事実婚(婚姻届を国に出さない結婚)、
国際結婚、ペーパー離婚(いったん婚姻届けを出し、別姓使用のために法律的に
離婚する)などが含まれます。戸籍名を変えた女性のうち、半数は結婚前の姓を
そのまま使用しており、1/4がハイフンで戸籍名と結婚前の苗字をつないで
使用し、1/4が新しい戸籍名を使用していました。
結局、パートナーのいる女性のうち、結婚のさいに得た戸籍名をそのまま研究上
でも使っている人は15%であり、あとは何らかの形で結婚前の名前を残すように
しています。
研究生活において、戸籍上の姓と異なる姓を使っている人に、その理由を聞き
ました。最も多い答えは、
(1)個人としてのアイデンティティーを保ちたい、
(2)研究者として苗字を変えると不便・不利だから、
であり、次が
(3)結婚する前に論文をいくつか書いているので、
というものでした。
(1)の個人のアイデンティティーという理由は、結婚前の姓の使用を人権尊重の
立場から大切にすべきだと考える意見につながり、(2)と(3)は研究者としての
権利として守るべきだという意見につながります。
次に、別姓使用に関して困っていることや同感する事柄に○をつける質問では、
「所属する研究機関が旧姓使用を認めないので困っている」「事務職員が旧姓使用を
認めない、あるいは厭味をいう」が多くみられました。自由記述の部分では、事務
書類が戸籍名でしかおこなわれない場合には、人事発令や出張依頼書などが戸籍名と
なるため、研究上でさまざまな不都合が起こっていることを訴える記述が目立ちます。
学問上で使う姓と戸籍姓が違うと、日常的に2つの判子を使い分ける必要があり
繁雑であるほか、担当の事務職員が変わると扱いが変わり、それまで認められていた
こともできなくなる、などの記述もありました。
結婚のさいに戸籍姓を変えるのは圧倒的に女性の方が多いので、いろいろなトラ
ブル処理は男性には気づかれない部分で、すべて女性が負担することになります。
たとえば、国際会議で予約したホテルの名前がパスポートと違うためのトラブルや、
クレジットカードを得るための手続き上の不便など、研究生活を行う上でのさまざま
な不便が起こっています。このような繁雑さをさけるため、ペーパー離婚して結婚前
の姓を取り戻し、非常にすっきりした、という記述もありました。
表5からわかるように、研究上で戸籍名と異なる名前を使っている人が非常に
多いにもかかわらず、研究体制の中では別姓が認知されているとは言えません。
私立大学では、人事関係を含め、ほとんどの書類が旧姓で通るところもあります。
また文部省も、科研費を申請するさいに必要な研究者番号の登録は旧姓でも認めて
います。国立の組織でも組織の長となる人の理解があれば、かなりの部分で自由がき
くはずです。研究者が、研究上で同一の名前を使い続けることは、研究者としての
基本的な権利であり、研究組織はそれを尊重し保証することが、学問発展のためにも
必要な事柄です。
なお、文部省人事課に問い合わせたところによれば、文部省職員の旧姓等の使用に
ついては、統一した指導はしておらず、「国家公務員として人事や給料などの書類
では戸籍名を使う必要があるが、それ以外のものについては、各研究機関で判断して
かまわない」と考えており、「かなり自由にやっているところもあるのではないか」
との回答でした。つまり別姓使用については、各研究機関が判断すればよいことで
あって、個々の担当事務職員の裁量に左右される事柄ではないということです。
従ってそれぞれの研究組織がこの問題について改善していくことが可能であり、
私たちも研究環境の改善の一環として、積極的に取り組んでいくことが大切であると
思われます。
参考文献
1)厚生省ホームページ http://www.mhw.go.jp/iken/index.html
2)働く女性の実情、平成9年版、労働省女性局編、p。36。
3)L.McNeil, and M.Sher, PHYSICS TODAY, 1999 July p.32
original data from
P.H.Blondin, A.Benedict, R.Y,Chu, American Physical Society Membership
Survey, American Institute of Physics, New York, New York (1990)
4)天文学会研究者人口調査
http://phasms2.auephyas.aichi-edu.ac.jp/~sawa/jinko.html
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A Survey of Women in Astronomy (I)
Mariko Kato, Department of Astonomy, Keio University, Hiyoshi, Kouhoku-ku,
Yokohama, 223-8521
Satoru Ikeuchi, Department of Physics, Graduate School of Science,
Nagoya University, Nagoya, 464-8602
Abstract:
We report the result of our survey on problems and difficulties for
women in astronomy to establish their professional careers.
Many female astronomers are anxious about their future in finding
permanent jobs and planning personal life, e.g., marriage, children,
separation with their spouse and so on.
Many married women are worrying about their everyday use of maiden name
because it is not offcially allowed in Japan.
Finally, it should be seriously indicated that many women are
complainning to suffer sexual harassments.
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(C)日本天文学会
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