バリアフリー天文学をめざして--目の不自由な人と共に学ぶ天文学

加藤万里子(慶応大)

今年度、全盲の学生が文系の天文学(通年)を受講したのをきっかけに、目の
不自由な人といっしょに学ぶ天文学--バリアフリー天文学--を考えてみた。
試行錯誤の試みを報告する。

(1)授業紹介:授業のなかでは、講義、演習、グループ発表、絵本製作をした。試験は点字で
行った。授業に使用した道具は分度器、点字練習器、レーズライター(手書きで図を作成)と
立体コピー(図を立体化するもの)。

(2)啓蒙とボランティア:クラスメイトへの啓蒙が大切。教職員への啓蒙も大事。
受講や自習を助けるボランティアの組織化が必要。

(3)通信手段:電子メイルが便利(音声出力で読み書きできる)。

(4)天文教材:ほとんど無い。教科書『100億年を翔ける宇宙』の原稿を
フロッピーで渡した。補助教材として高校地学の点字版を用いた。図はレーズライターと
点字で作成したが不便。

(5)教科書の電子出版:『100億年を翔ける宇宙』を電子出版(フロッピー
ディスクと点字の図のセット)する予定(3月)。本文はコンピューターで音声出力して
聞き、図はさわって形を認識する。

(6)Webページを作る:バリアフリーに書く方法。電子メイルでネットサーフィンする方法。
天文学会編学術用語集を修正(かざり文字や不要なリンクを削除)し補助教材とした。
この情報は以下のページに載せてある。
http://sunrise.hc.keio.ac.jp/~mariko/educ/darksky.html

(7)日本の視覚障害者の教育事情、点字図書館のリスト、分度器や点字練習器の値段など
の一般情報。

(8)冊子を作成:以上の情報をあつめた冊子を作成(年会で配布する)。

最後に、tennet への呼びかけに応じて情報提供を下さった多くの方々に感謝します。


日本天文学会1998年3月講演予稿  (C)日本天文学会