我が家の中学受験

                                       慶應大学理工学部助教授  加藤万里子
  娘が小学校5年生のとき、私立中学を受験したいと言い出した。かわいい制服の
中学校に行きたいのだそうだ。親は近くの公立中学でよかったのだが、せっかく勉
強する気になっているので反対はしなかった。するとまず首都圏の全女子校の制服
が写真つきで出ている受験用の本を買ってきて、父親とふたりで制服の検討を始め
た。ここの学校がかわいい、こっちは夏服がいいと付箋をつけて熱心だ。その本に
は、校則や学校案内ものっている。ぱらぱら見ていると、面白いことに気がついた。
いわゆる偏差値の中ほどの学校は、校則がきびしく、髪型も制限がありゴムの色ま
で決められている。偏差値の非常に高い学校は、制服がないところも多いし、髪型
は自由だし、校則もゆるい。わが系列の慶應女子高は超難関高といわれているが、
何と茶髪でロングヘアーの生徒が見本として出演している。うーん、要するに、頭
の良い子は、自分の責任で何をしても許されるけど、普通のできの子には、お嬢様
にしつけて付加価値をつけるということなのだと納得する。わが娘は早くも女の人
生の岐路に立たされているのだ。

  彼女は自分で塾へ行きたいと望み、参考書も買って勉強を始めた。受験直前には
早起きをして親がまだ寝ている間に勉強をしていた。勉強は自分のためにするもの
だから、こちらからは受験勉強しろとは言わないし、食器洗いや風呂掃除の家事も
免除にはならない。受験の準備を通じて、どんな学校に行きたいのかと、自分が将
来どうしたいのかとが関係していることがわかってほしかった。模試の成績に一喜
一憂しつつ志望校を決めた時には、彼女にとって制服は重要な要素ではなくなって
いた。

  ルーズソックスにあこがれていた娘だが、茶髪やパーマが許される学校へは、と
ても偏差値が届かなかった。でも自分で努力して自分で納得できる学校へ入ったこ
とは成長の第一歩である。

                    (川崎市在住)福岡県教育懇話会  1998年5月