スローライフ--イタリア鉄道

遅れることで有名なイタリア鉄道。イギリスの鉄道だって遅れたりキャンセルになったり
するらしいが、なぜかイタリアのだけが悪名高い。のんびりしたイタリアを強調したい
のか、遅れない国(ドイツ)と線路がつながっているから目立つのか、本当のところは
不明だ。何しろパドヴァからヴェネツィア大学へ通っている学生が、パドヴァのバスは
あてにならないが、列車はもっとひどい、と嘆いていたくらいだから。

 パドヴァ駅のホーム

駅の切符売場にはいつも長い行列ができていて、みんな辛抱強く待っている。券売機も
あるのだが、この行列も待たされる。何故かと言うと切符を買うためには、まず画面に
出ている伊仏英独の国旗をさわって言語を選び、切符を買うか印刷なのか等の選択をし、
駅名が出てきたらそれを押すが、画面に駅名がなかったらアルファベットをいれ、出発と
行き先の駅名を選び、今日の切符か明日以降かを選ぶ。列車のリストが出てくるので選び
(各駅停車でも指定する必要がある)、1等か2等かを選び、年齢割引などの条件があるか、
国鉄のカードをもっているか、寄付をするか、払いはカードか現金か、等とえんえんと
続く。ようやく最後の画面までいっても安心はできない。機械の中におつりがなくて現金
払いは受けつけないことが最後の最後にわかって、また最初からやりなおしたり、なぜか
キャッシュカードがはじかれたりで、旅行者でなくてもやり直している。パドヴァは旅行
者が多いから、まごまごして列がちっとも縮まらない。そのうえ故障もけっこう多いので、
やりかたが悪いのか、故障なのかの区別がつかないところが始末が悪い。

   パドヴァ駅

パドバからベネチアに通う学生やその逆の学生でホームは混んでいる。家が近くでも
友達といっしょにアパートを借りて、月曜日から金曜日まで大学の近くに住み、週末に
自宅に帰る学生も多いようだ。


特急が5分遅れるとの表示(中段右)
ホームの掲示。「遅れ時間」の欄がちゃんとあるのがイタリア的。イギリスの列車もよく
遅れるのでやっぱり表示があった。


さすがにこのごろは私も慣れてきて、失敗せずにちゃんと列車に乗れるようになった。
まるで小学生並だが、こちらの習慣をしらず言葉もわからないとこうなるのだ。
切符を買ったら刻印して、掲示をみて何番線に電車がくるかを確かめる。列車がくる
時刻が近くなったら、おしゃべりせず、本も読まずにイタリア語の放送を注意して待つ。
直前に番線が変更になって乗り損なうこともあるので、油断は禁物なのだ。こちとら
イタリア語の放送がわからないので、同じ列車を待っている乗客を観察するだけ。
みんなが急に別のホームへ移動したのを気づかずに、そのままホームで待っていて、
来た列車に乗ったら特急で、行き先は同じだったから乗ったのだが、切符の追加料金
(ペナルティーを含むので高額)をとられたこともある。指定席をとった場合は、駅の
掲示でこっちが先頭だから、12号車はこのあたりだろうと見当をつけて待っていると、
直前に列車の前後が逆になり、12号車は遥かかなたであわてて走ったこともある。
最近はホームのまんなかあたりで待っていて、走る距離を少なくしている。言葉が
わからないとはこういうことだ。


大きな駅(ローマやミラノ)では直前まで列車の番線が出ないことも多い。重いスーツ
ケースを抱えた1列車分の人々が、掲示の前に集まってきて、列車が入る直前にみんなで
移動するはめになる。ホームの番線くらい早く決めろ!と言いたいが、列車が遅れると
番線を入れ換えるらしく、長距離ほど遅く決まる。ローカル列車の方が番線が早く確定
して入線も早いから、早めに座っていられて楽だ。ちなみに大きな駅では英語の放送が
ある(こともある)。


 ミラノ駅の掲示。
右から2番目が遅れの時間を示す。
5分遅れなんて大したことではない。20分とか40分の時もある。いくら遅れても、
ここはイタリアだからと、怒る気を通りこしてあきらめるだけだ。(決して人間が
出来てきたわけではない) ただしいつも遅れるわけではなく、ちゃんと定時に着く
こともある。特急でローマに行った時は、なんと20分も早く着いた。

トイレはどこでも有料。パドヴァ駅では0.6ユーロ、何でも高いヴェネツィアでは
トイレは駅でも市内でも1ユーロ。じゃあ列車の中のトイレを使えばいいかというと、
きれいな時もあるが、電気がつかなかったり(その場合完全に真っ暗)、汚れていたり、
使用中止だったりで、あてにはできない。長距離バスの発着所のトイレは無料だが、
とっても汚くて鍵も壊れてかからない。それでも仕方ないのでみんな平気で(?)使って
いる。

このようにのんびりしたイタリア鉄道だが、日本よりずっと便利なこともある。列車の
切符はWebでも買うことができて(払いはクレジットカード)、切符をメールで送ってくる
ので、それを印刷して持っていけば、駅の窓口で待たなくて済む。指定券でもふつうの
乗車券でも研究室のパソコンから買えるので便利だ(つまり日本からでも買える)。紙に
印刷して持っていかなくても駅の券売機でちゃんとした切符に印刷できるし、切符をなく
しても、予約番号がわかればそれで乗れる。使い方に慣れればすごく便利だ。

航空券も同じようにしてWebですぐ買える(ただし航空会社のサーバーが途中で止まること
もある)。これも旅行代理店(英語が通じない)に頼まなくてすむから非常に便利。まず
航空会社を選ぶ。ヨーロッパ内なら行き先の都市へ「直行」する飛行機はどちらかの国の
航空会社だから選択肢は限られる。パリへ行くならエアフランス(仏)かアリタリア(伊)だ。
空港名と日にちを入れると便名リストと値段が出てくる。1日違いで安くなる場合も
多のでそれも画面に出てくる。払いはクレジットカード。予約番号とパスポート(等)で
空港で搭乗券に換えられる。その時も機械でやれば待たずにできるし(乗り換えなしの場合)
荷物も専用カウンターは待たされない。
 
 パドヴァ駅のまんが売場

ヨーロッパは日本の漫画が人気で、セリフを翻訳したものが売られている。フランス語が
もっとも多く、イタリア語に翻訳されたものはあまり多くない。一条ゆかりや山岸涼子は
みかけない。あったらそれでイタリア語の勉強をするのに。。。。


イタリアではたまに鉄道のストライキがあるそうだが、幸い私はめぐりあったことがない。
パリでは地下鉄のストはめずらしくないそうで、私がパリに行く直前にもストが予定され
ていて(何日続くか不明だった)相手の天文学者が心配してくれた。去年の春にローマ大学に
行ったときのこと。前の日は大学の門が開いていたのに、次の日は閉まっていて入れない。
通りがかりの学生に別の入口を教えてもらったが、大学のスタッフでも事前には知らず、
門の張り紙で知ったらしい。その日は急に守衛さんのストライキがあった(年金か何かの
要求)。このような部門別の小さなストライキはめずらしくないそうだ。パドヴァ天文台の
門もいきなり閉まることがよくあり、法則性がいまだにつかめない。ストライキなのか、
守衛さんが臨時に休んで(予算がないから)代わりの人が来ないのか、果てはローカルな
祝日か何かの日か全くわからないが、スタッフも私も鍵をもっているから誰も気にしない。

(2008.2.10)

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