パドヴァ滞在も3月までとなり、土曜日の気晴らしに遠出することにした。 パドヴァからミラノへは特急で2〜2.5時間。指定席でも往復で50ユーロ(9000円) くらいだからホテルに泊まるより安い。ミラノには美術館がたくさんあるが、 前にいちおう回っているし、中世の絵は見飽きたところなので、気晴らしする には、ここは科学系の博物館でしょう。やっぱり最低年に1回は科学館と動物 園に行かないと精神安定上よろしくない。電車がミラノに近付いて(それまで 論文を読んでいた)ガイドブックを見たら、昨夜行こうと考えていた動物学博物 館はフィレンツェだったことに気がついて舌うちする。なにせ私は方向音痴の 上に記憶も薄い。あーあ。お昼に餃子が食べられるかと思っていたのに。まあ ミラノも見る所はたくさんあるからと気をとりなおす。ダビンチの発明した 機械類の模型はイタリアのどこかで見たし、「現代の物理」の展示が重力波と 光学望遠鏡と加速器の3つだけに偏っていて、イタリアの得意な分野だけしか ないねと夫と笑いあったが、その科学館はどこだっけ?記憶の薄い私はこういう 時に夫がいないと不便だ。とりあえず絶対に行っていない市立自然博物館へ行く。 入場料は3ユーロと安い(以前は無料だった)。 市立自然博物館。まずは鉱物の展示からはじまる。 最初にきれいな結晶や面白い形の結晶がならび、次に美しくないが科学的に 説明したい結晶がならんでいるような気がするが気のせいか?どうやらイタリアで 産出した結晶を主に展示しているらしいが、イタリア語と英語の説明を読むのが めんどうで全部飛ばす。英語の説明を苦労して読んでも英語の地学用語を知らない から意味がわからん。説明を飛ばしていくので、見るのがすごく早い(友達と 見にいくと1日たっぷりかかる)。 鉱物の次は化石。なんで急に化石に飛ぶ?掘り出すという点では共通だが、ちょっと安易 ではありませんかね。ともかくイタリア半島に出る化石の展示が続く。 左は貝の化石の説明。貝殻が残る場合は内側と外側の形が岩に写しとられる。 左下が貝の内側の形が残った石。 天井 左の巨大化石は触ることができる。 小さなこどもたちが部屋を駆け抜けていく。子どもをつれた家族が多いが、多いと いってもガラガラで、展示室に誰もいないことも多い。右側のお父さんは、いろいろな 化石をこどもに説明していた。いちいちしゃがんで子どもの目線でいっしょに見ている のがえらい。パリの動物園に行ったときもこれを期待したんだけど、家族づれが少なくて がっかりだった。 恐竜の卵の近くにあるパネル 爬虫類の卵。右側はへびの卵から赤ちゃんがかえるまでの標本。 このあたりから説明がイタリア語だけになる。 記念撮影 これこれ、やっぱり科学館には恐竜がなくっちゃ。中世絵画に飽きた私はいっきょに 中世代へ。 ここで恐竜からいきなり哺乳類へ飛ぶ。いちおう少しはつなぎがあるけど、パッと見には、 子どもの好きな恐竜から、誰でも興味をもつ人間へ移行し、その間の生物の進化は割愛 している感じがする。まあしょうがないか。関東の某県立でも飛んでいたし。 さてこれが、今回いちばんの爆笑もの。 人類の進化 ふつう「人類の進化」の図には全身を描いたものが多い。前かがみの姿勢で歩いていた のが、しだいに直立二足歩行に変わる様子を示したいから当然だろう。それにここは ふつう、人類の「代表」として、「フツーの人の顔」を描くべきところ。それなのに イタリア風の超美形に進化している。こんな顔の人、どこにも居ませんて。 人類の進化の図といえば、従来は「男」の進化を描くものだった。つまり女は人類の 代表には成り得ないのだ。日本の高校の教科書には、人類の進化だけでなく、それ以外の さし絵にも男が圧倒的に多かった。科学は女性が勉強すべきものではないという著者の 意識が現れていたからだ。私が「人類の進化」の展示ではじめて女性を見たのがカナダの ロイヤルティレル博物館。猿人から現代人まですべて女性だった。そういう目でみると、 ここの絵には男女のペアが描かれている点が画期的だろう。 石器 洞窟の絵にあるいろいろな色はこういった顔料(石)を使った。 世界の多様性の説明(たぶん) 米国の朝食はシリアル(コーンフレーク)、メキシコの主食はとうもろこし、インドは お米(4色の米)、ヨーロッパはもちろんイタリアのパスタで、イギリスやドイツなど パンを食べる国を軽ーく無視しているところが笑える。 なぜか魚介類の説明が多いと思ったが気のせいか?このほか昆虫の展示もたくさんあった。 哺乳類の体の構造や生活の展示がないなあと思ったていたら、上の階に実物大のジオラマが 展開していた。 獲物を狙う虎 写真では区別がつきにくいが、動物は実物大の模型で、バックは絵。よく見ると手前に 水牛の角が出ているので、動物密度が非常に高い。 なるほど。動物園がないかわりに実物大展示。もちろん生きた動物の動きを見られる方が いいが、ジオラマの特徴は、動物園では見られないシーンを再現していること。たとえば こもうりがこちらへ飛んで来る場面。こうもりの正面の顔をじっくり見られる。それから 狩をする動物の一瞬のシーンを再現したものなど。 熊が鮭をとり、鳥が狙う 撮影したら明るくなってしまったが、実際にはここは薄暗い。他とは仕切られていて、 暗い中に大きな椅子がおいてある。疲れたのでじっと座っていたら、何だかこの場に いるような気がしてきた。何しろわたし一人だし、すいていて誰も来ないから。 こうして延々とジオラマが続き、各種の動物が見られて動物園の代わりの役目も果して いるのかも?と思えてきた。 人類の先祖が描いたらしい岩の絵に注目。 よく見ると芸が細かい。メインの動物の他に、かならず周囲に小動物がいる。左のは 蟻とふんころがし、右は蠍と蜥蜴がにらみあっているところ。おまけのようでいて、 動物が生きている環境を表している。これ以後、おまけの小動物を見るのが楽しみに なった。チョウや鳥、小さいへびなどがひっそりと2、3種づつ必ずいる。 狙いを定める猫科動物と逃げる兎 狩のシーンばかりあるのでちょっと何かと思ったけど、野性動物は「食べる=生きる」 だから、肉食動物にとって、日常生活で最も重要なことは狩であることは間違いない。 男ってどうしようもないねえ。 自然博物館はこれで終り。さて、もう1つ美術館へ行くには疲れたし時間もない。繁華街に も行ってみたが(日本人旅行者がたくさんいた)、ファッションには興味がないし、ガイド ブックおすすめの老舗の店のプチケーキもそれほどおいしくはないし、小雨だし、つまら ないので公園へ行く。 プッブリチ公園 いくら冬で雨だからといって、池には鴨が遊んでいるし、街のど真中なのに、なんで誰も いないのか不思議だ。ミラノの若者はデートコースにしないのか?もったいない。 さてパドヴァに帰ろうと駅に行ったら、乗るはずの特急が30分遅れだった。あーあ。 (R はローカル、ESやCISが特急) 上は出発、下は到着する列車の案内。私の列車は上から3番目のトリエステ行き。まだ 列車が着いてないので番線も出ていない。上の3本とも30分遅れの表示が出ているが、 このあとで、2番目の特急は50分遅れに変わった。私の列車も結局は40分遅れた。長距離 列車は遠くから来るので遅れることが多いのかも。イタリアだと怒る気にもなれず、あきら めてカックロ(ペンシルパズル)をして待つ。 ようやく列車が到着して番線が出た。いざ行ってみると、車両に号車の番号がついてない。 他の乗客もとまどっている。とりあえず適当に2等の車両にすわる。がらがらだったから 座れたけど、座席指定をとったのになぜ?車掌さんが検札に来たとき、おばちゃん達が 口々に座席指定の3ユーロはどうなる?と交渉していたがだめだった。それにしてもいくら すいているからといって、車掌さんがのんびり10分も乗客と話しこんでていいのかな。(2008.1.13)
Copyright M. Kato 2007