ドナウ河 ブダペストはドナウ川の岸辺に発展した街で、手前がブダ、向こう岸がペスト。王宮
ドナウ川ほとりの小高い丘に王宮がある。彫像は石灰岩でできているので、酸性雨による被害で かなり傷んでいる。王宮の中は現在は博物館と美術館になっている。美術館へ行くつもりが入口を 間違えて歴史博物館へ入る。展示はかなり偏っていて、流れもわからず、二人であれこれ想像しながら 回る。 保護色の私 展示は面白くはなかったが、昔のお城の構造がそのまま使われているのが面白い。王宮の外壁に 登って外が見られるのはここだけだし、地下も写真のようになっている。どのお城にも地下には 礼拝堂と貯蔵庫と牢獄があるものらしいが、ここはカルスト大地を利用して大規模な地下室と 通路が張りめぐらされている。それを「王宮地下迷路」として別途公開しているのだが、 観光客けに音楽と不気味な彫刻で味付けしてあるので、こっちの方が面白い。マーチャーシュ教会
屋根のタイルがハンガリー風で綺麗なのに、残念ながら修理中で全貌がわからなかった。そばの 三位一体の像も解体修理中。どうやって修理するのかのぞけなかったが、どうも表面を少し削って いるようだ。 ここはハンガリーでも由緒ある教会で、1476年にマーチャーシュ王が戴冠式と結婚式をあげた 場所。御本尊は聖母マリア。現在の建物は19世紀に改築されたもの。教会の内部は色大理石では なく、柱に色が塗られている。 エルジェーベト 最初のハンガリー語版完訳聖書。 神聖ローマ皇帝フェレンツ・ヨージェフ一世(ヨーゼフ一世)とエルジェーベト(エリザベート)も ここでハンガリーの国王と王妃となるべく戴冠式をした。アジアゴにいたとき、テレビドラマで 戴冠式のシーンが出てきて、エリザベートがハンガリー語であいさつして人民の人気を得たところ をやっていたが、それから想像したものより小さな教会だった。 何年も前になるが、国際会議でオーストリアに行ったとき、エリザベートの絵のついた マグカップを買って帰り、大学でお茶を飲むのに愛用していた。あるとき、お茶をいれた カップをもって廊下で同僚とすれ違ったら、彼女がカップを見て「エステババア!」と一言だけ 言った。彼女はヨーロッパの歴史と文化に造詣が深く、かつ物事の本質を端的に表現できる 能力の持ち主なのだ。エリザベートは政治には介入せず、自慢の髪とウエスト50センチの体型を 保つために、お城の中で並々ならぬ努力をしたと私が知ったのは、それから何年もたった後 だった。歴史博物館にエリザベートの着た服が展示されていたが、背が高いのに本当に細い。 王冠の両脇にしゃくと宝珠がある(宝珠に横棒が2本の十字架がついている) 本物の王冠は国会議事堂にあるのでこれはコピーだが、こっちの方がキンキラキンで綺麗だ。 この王冠はイシュトバーン国王が初代ハンガリー国王として1000年に戴冠式で使ってから950年間 使われてきた由緒あるもの。周囲にある詳しい解説パネルで、デザインや由来の説明がわかる。 紀元1000年のものなので、キリストや聖人の顔がビザンチン風で子どもっぽく、かわいい。 他の教会や博物館へ行ったときに、注意して歴代国王の絵を見ると、ちゃんとこの王冠をかぶり、 しゃくと宝珠を持っている。イシュトバーン大聖堂の彫像もこの通り。 イシュトバーン国王 ハンガリーのケーキは甘さが控え目でおいしい。電話博物館
電話交換機が発明されたのはハンガリー、ということで発祥の地に電話博物館があった。 マイナーな博物館が好きな私はさっそく行ってみた。最初の方には電話の発明者ベルに 関する展示がある。下の写真は昔の電話機。一番右の電話機には手前に持ち主の名前が 刻まれている。電話機はお金持ちの証だったんですね。 私の子ども時代はどこの家でも電話は3番目のタイプだった(ただし黒色)。中にベルが入って いて、電話がかかってくると、ハンマーがベルを叩いてリリリリンと鳴る。むかし何かで 読んだ話では、電話がかかってくるのを嫌がった人が、音が聞こえないように電話機を毛布で くるんで冷蔵庫に入れたとか。大学院時代の私の友人はもっと賢くて、ドライバーで電話機の カバーをはずして、ベルとハンマーの間に紙をはさんでいた(何しろ工学系人間ですから)。 そうすると電話がかかってきても、コココと小さいハンマー音が聞こえるだけ。今は電子音 だから音量調節もできるし、線を壁から抜けばかかってこない。 電話帳 電話機を持っている人はわずかだったので、電話帳はこれ1枚だけ。電話をかける人は 電話交換手に相手の名前を伝えてつないでもらう。だから電話交換手は自分の街の電話所有者の 名前をすべて覚えなければならない。同姓同名の人は住所で区別した。電話所有者が5000人を 越えたので1901年から電話番号で区別するようになった。 拡大図 電話料金を示すメーターがびっしり並んでいる。1人に1つのカウンターが対応し、数字で電話の 使用度数がわかる。毎月この数字をひとり分ずつ写真撮影して料金を請求する。 交換手 右のパネルには電話交換手になるための条件が書かれている。容姿端麗、理知的、発音の良さ、 礼儀作法、快活で強い声、外国語が1つできること、および上流階級2人の推薦が必要。 電話線を設置する木製人形 電話交換機 電話交換機はハンガリーの発明。ブダペストのこの場所で使われていた電話交換機が展示されて いたが、今でもちゃんと動く(左の机だけはアメリカで使われていたもの)。私達が見ていたら 係の人がきて実際に動かしてくれた。手前の机の上の穴にピンを差し込んでつなぐと奥の装置の ランプが光り、1つづつつながっていく。右手にある電話機の受話器を耳にあてると、雑音が 大きいがちゃんと通る。 ケーブルカー 王宮の丘に登るケーブルカーは小さくてかわいらしい。車体は木製で、1両が3つに分かれている。 右の写真は上からみたところで、1本のケーブルで引っ張られているのがわかる。左の写真にちょっと 見えるハンガリーの国旗(赤白緑)は、イタリアの国旗を横にしたデザイン。昔は真中に労働のシンボル として鎌とハンマーがついていたが現在はない。 王宮 くさり橋 ドナウ川は大河だが水はあまり澄んでいない。「美しき青きドナウ」はもっと上流の ことか、それとも昔のことなのか?ドイツで前に見たはずなのに覚えていない。右の 写真はドナウ川にかかるくさり橋。ブダとペストを結ぶはじめての橋で、ハンガリーに とって大きな意義があるのだが、第二次世界大戦のとき橋は全部落ちてしまったので、 この橋も再建されたもの。隣にあるエルジェーベト橋も再建されたもので、再建後は シンプルな白い橋になったが名前はそのまま残った。皇帝フランツの方はハンガリー 国民に人気がなかったので、橋が再建されたとき、フランツ・ヨージェフ橋から自由橋に 改名されてしまったという話が面白い。 (その2に続く)(2007.8.10)
Copyright M. Kato 2007