おいしいものはどこにある?

イタリアにくることに決めた理由の第一は、私が専門にしている新星の研究者が
たくさんいるからだが、二番目の理由はたべものがおいしいことだった。英米は
論外、ドイツ圏も食事の単調さは有名なので、野菜の種類が豊富なイタリアにした
のだ。


それなのに。。。3月にパドバに来てがっかりしたのは予想外に食べ物のまずいこと!
いくつかレストランに行ってみたが、全然おいしくない。量が多いのは別にしても、
塩味が強すぎたり、油っこかったり、香料が効きすぎたりで気に入らない。まあ日本
でも適当にはいった店では、塩味が強すぎたり、味がいまいちだったりするから、
同じなんだろうけど。日本人の書いたイタリアの旅行記を読むと、イタリアはどこも
おいしくて、適当に入ったトラットリアでもはずれたことがないとあったが、これは
真っ赤な嘘だ。世の中には、話を面白くして本を売るために嘘を平気で書く人もいる
そうだが、それなのか?こちらは科学者だから、論文に嘘を書いたら職を失う世界に
住んでいる。たとえ論文でなくても嘘は書けない。


 アジアゴチーズ
    
大きなアジアゴチーズは熟成1年、2年、、、と選べる。私は1年ものの方がやわらかくて
好きだ。おいしい中心部分を食べてしまったところ。右は生チーズ2種。ステーキにしたり
そのまま食べたり。お豆腐のような食感。

    クリームチーズを買う

適当に入った店で食べてもはずれがないのはピザだけだ。一昨年ローマに滞在したとき
には、持ち帰り用のピザ屋が沢山あった。どの店にも釜で焼いたあつあつのピザがずらっと
並んでいて、それを好きな量だけ切ってもらってホテルで食べた。つけあわせの野菜ソテー
はいただけないが、それも短期間なら我慢できる。近所の人が熱々のできたてを買いにきて、
夕食に持ち帰っていた。だから今回も最低限ピザだけはあるから大丈夫と思っていたが、
なんとパドバではピザをあまり食べなくて、パニーノ(堅めのサンドイッチ)が圧倒的なの
だった。パニーノは街のどこにでも売っているが、おいしくない。ピザ屋は少なく、人気も
ないので、店頭にあるピザは冷めている。イタリアは地方色の違いが激しく、ピザは南部の
たべものらしい。

   
 
ピザ屋さんのメニュー。私が大学時代に通った池袋の甘味屋さんの壁には、みつ豆、
あんみつ、白玉みつまめ、フルーツみつ豆、白玉あんみつ、フルーツ白玉あんみつ、
白玉アイスあんみつ、白玉フルーツアイスあんみつ、、、、、という風に延々と続く
順列組合せ風な張り紙があったが、それと同じ。基本はトマトとチーズで、それに
ハムや野菜やチーズのどれを載せるかで値段が決まる。真中はハムとゴルゴンゾーラ
(チーズの一種)のピザで、右は野菜ピザ。どちらもお皿から大きくはみ出している。
巨大なので私達は2人で分けてちょうど良いが、こっちの人は1人で1枚軽く食べて
いる。これでは太るわけだ。


その後いろいろな都市に行ったが、たしかにピザは当たり外れが少なく、たいてい
おいしいことがわかった。パスタ類ははずれが大きい。それにどうやらレストランの
食事は北部より南部の方がおいしいようだ。というのは、南イタリアに旅行したときに
思ったが、南部は魚が新鮮で、食事がおいしい。というのも、ほとんどゆでただけの
魚にオリーブオイルと酢をかけて食べるので、魚の味が生きていて日本人の口に合う
のだ。パドバでは魚は手にはいるが、鮮度に問題がある。



八百屋     メロンと生ハム  
八百屋にみごとなにんにくがあった。小さなほうれん草はやわらかくて、さっと
ゆでるとおいしい。野菜や肉は日本よりかなり安い。くだものは7月になって
ようやく甘くなった。生ハムは日本で売っているものより塩分がきついので、
メロンといっしょに食べるとちょうど良い。


   いちじく2種。  
5月に出始めのものを買ったら、まずくてがっかりしたが、旬のものはおいしい。
この他にも小さい緑のいちじくもある。



これまでの経験では、レストランよりも、天文学者の家に招かれた時にごちそうに
なった料理がいちばんおいしい。たとえばバーベキューをするから来いと言われて、
アメリカ式の肉のかたまりを予想して行ったら、広い庭で炭火を起こして魚を焼く
のだった。大きな魚はそのままイタリア式に香草をまぶして香ばしく焼き、巨大な
モンゴウイカは肉厚が3センチもあるのに(どこで買ったんだ!)ふっくらとやわら
かく焼けていた。別な家では大きな魚を1箱分の岩塩で固めてオーブンで焼き、
レモン汁で食べた。パスタ(スパゲッティよりペンネやシェル型の時が多い)も
レストランよりおいしい。買ったものを焼くだけになっている肉づめズッキーニ
(丸い種類)なども出たが、それもおいしかった。イタリアの天文学者は男女とも
料理が上手なのかな。食べることが好きで長年同じ街に住んでいれば、良い材料が
どこで手にはいって、どの季節にはどの材料でどのように調理をしたら最適かが
わかるだろう。

これでは新参者の私にはうまく料理できるはずがない。肉料理はいまのところ、前に
紹介した牛テールのほかは、安い骨つきの肉しかうまく料理できない(日本の肉の方が
もちろんおいしくできる)。ああ薄切り肉があったらなあ、と思うがどうせ堅いから
生姜焼きは無理だろう。


  牛肉   しょうゆ味(中華香料)で煮てみた。
牛肉の値段は安く、これは 958 グラムで3.47ユーロ(約560円)。 

肉は巨大な塊かステーキ用の厚切りが売られている。適当に脂肪がついていた方がおいしい
のに、周りの脂肪をきれいに取り去ってあるので、どれもぱさぱさしている。豚肉は
ステーキにしても長時間煮ても固くてぱさぱさで、レストランではこってりソースで
ごまかしているが、私の好みではない。牛も脂肪のない所は固くて、煮てもぱさぱさ
する。一度挽肉だんごにしてみたが、ここではまずパン粉を手にいれるのが大変だ。
アフリカ・アジア食品店でやっとみつけたパン粉は、賞味期限をはるかに過ぎていた。
鳥肉は少し固いが、もも肉はやわらかくてジューシーで味が良い。


ふっくらポテト入りポタージュスープ
タマネギの芯だけ使ったらわりとうまく出来た

レタスは芯に近いところが苦いので注意。タマネギは日本のものと比べてとても頑丈で
いくら煮ても固いので、ポタージュには芯の軟らかいところを使うべきなのだと悟る。
中ほどは炒めものやパスタ料理に、外は固いので、肉を長時間煮る時の臭みとりに
使うことにした。


これではあんまりなので、最後にひとつだけパドバをほめておこう。

イタリアで一番ケーキがおいしい街はパドバだそうだ。創意工夫があるからという理由
だ。いろいろな国や都市に行った味のうるさい天文学者が口をそろえるのだから本当
なのだろう。私もローマやナポリや他の都市にも行ったが、パドバよりおいしいケーキ屋
さんにはめぐりあわなかった。

  

  

上はパドバで一番おいしいと評判の店のケーキ。天文台に重要なお客が来たときは、
ここのケーキを出すそうだ。でもここは街の反対側で遠いので、2番手のお客には、
近くの店で買うとのこと。どこのケーキ屋さんでもカウンターでケーキを立ち食い
できるので、私たちも散歩の途中で寄ることもある。

(2007.7.21)

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Copyright M. Kato 2007