サマータイムと時差


イタリアでは3月25日からサマータイムが始まった。この日に時計を
1時間進めて、昨日まで10時だった時刻を11時ということにする。
つまり昨日まで朝6時に夜が明けていたのが、今日からは7時に夜が
明けるということだ。朝が暗いかわり、夕方は遅くまで明るくなる。

私は徹夜ができない体質のようで、夜更しは苦手だ。たとえ夜遅く寝
ても、朝はいつも6時頃に目が醒め、もっと寝ていたいと思っても、
もう眠れない。時差にも敏感で、外国へ旅行するときには、時差が直る
までつらい思いをする。いっぽう夫のほうは時差をあまり感じない体質
のようで、外国へ来てもぐーぐー寝ているし、昼も辛くなさそうだ。
だいいち、ふだんから寝る時間が不規則で、夜更ししても平気でいる。

時差に敏感な私には、サマータイムの開始はつらい。朝目がさめて、
お昼にはお腹がすくという日常の中で、たとえ1時間でも体内時計が
狂い、体調が悪くなるほどではないが時差を感じる。毎朝夜が明るく
なって鳥の声がすると目がさめるのに、ある朝から、夜が暗くて
鳥も鳴かない時刻に起きるなければならない。サマータイムになった
からといって、鳥が1時間早く鳴いてくれるわけではない。たったの
1時間なのに、違和感がある。

  Padova 天文台

過去、睡眠障害で苦しんだ数年間、私にとって、夜明けの時刻は、
辛くてうれしい時だった。夜明け前の数時間に激痛があるので、
夜明けは辛い夜が去り、ぼーっとした昼間がやってくる証だった。
また夜が来るまであと半日は痛みから開放される、大丈夫だから、
と自分をはげます時だった。だから夜明けの1時間は私にはとても
大切で替えがたい。お年よりや病人はサマータイムの開始によって、
薬の時間が1時間ずれる。人工的なサマータイムは無くて済むなら、
それにこしたことはない。

サマータイムは外国人にとっても迷惑な話だ。昔の話だが、米国に
滞在していた夫は、サマータイムの開始を知らずに1時間遅れて空港
へ行き、日本に帰る便に乗り遅れた。次の年には、試験監督の代理を
頼まれて教室に行ったが、学生は誰もいなかった。テレビや新聞で
サマータイムの開始を宣伝しても、どちらも見なければ知る由もない。

時計あわせも面倒だ。翌日天文台に行ったら、イタリアから支給された
パソコンはちゃんと1時間進んでいた。それを確認して自分の腕時計を
進める。いちおう日本から持って来たパソコンの時刻も見るが、当然
変わっていない。こちらは、時計あわせが面倒なので、ずっと日本時間
のままにしている。同じヨーロッパでも、サマータイムの開始日が国に
よって違うから、移動用パソコンの時刻をいちいち合わせるのはめん
どうだ。アパートにある時計もぜんぶ直すのはめんどくさい。これは
イタリア人も同じように感じるようで、自宅にあるたくさんの時計の
うち、一部しか直さないようだった。

(2007.5.08)
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Copyright M. Kato 2007