パドバに来たばかりの頃は、役所を回ったり不動産屋を探したりで、毎日 10 km 以上歩いた。日本から持ってきた万歩計は、歩いた距離に応じて、 県が1つ1つ塗りつぶされていき、北海道から九州まで到達すると、伊能忠敬の キャラクターから、ほめられたり叱責されたりする。日本にいた時は、講義の ある日以外はせいぜい6千歩だった。イタリアに来て現実感は薄くなったが、 歩くはげみになっていることは変わりない。毎日よく歩くので、1万歩は 軽く越えた。 指の先が天文台 (拡大図) 街の中心部(チェントロ)には交通規制があり、原則として一般車は入れないので、 買物や観光に行くには、皆てくてく歩く。流しのタクシーは存在しないから、 タクシーを利用する時は、電話で呼ぶか、アパートからチェントロのタクシー 乗り場まで歩いていくしかない。一度タクシー会社に電話してみたが、イタリア 語のテープがぺらぺら流れて意味がわからない。どうやら、この用事なら1番を 押し、あの用事なら何番を押せと言っているようだ。来なかった場合のイタリア語 会話も考えると、私の能力ではとても無理なのであきらめた。 バスは15分に1本あるはずだが、いつ来るか全くわからない。隣町に行くために 待っていたら、30分以上来なかった。バスを待つよりは歩いた方がまし、という わけなので、30分くらいならみんな歩く。アパートからたいていの場所へは30分で 行けるので、買物でも何でも歩いて行くことになる。万歩計が進むはずだ。 午前中だけチェントロの広場に市がたつ。野菜や衣類など、店より 種類が豊富。午後や日曜にはすっかり片付けられて、後片もない。 イタリア人は北欧の人にくらべるとそれほど背が高いわけではないが、 横に大きい。握手する相手の手の大きさがこちらの2倍だったりする。 道ですれ違う女性のウエストも私よりかなり大きい。小学生からすでに 体格が大きく、日本の基準からすると大半の子どもは肥満気味ではない だろうか。道ですれ違う人々も、すらっと細い人はとても少ない。ショー ウインドーにある素敵な細身の服は、いったい誰が着るのだろう?街中 にいると、恐ろしいことにメタボ危機の夫が細く見える。 イタリア人はよく食べる。レストランでは1皿の量が2倍あるのに、回りの 人々はそれを全部食べている。大きなピザの周りにそってオリーブオイルを まわしかけ、ナイフとフォークで一人で全部食べる。サラダも巨大だし 肉も魚も量が多い。私らは一人前を二人で分けてちょうどよい。 鳥肉は味が濃くてとてもおいしい。牛肉も硬めだがおいしい。野菜もおい しい。鳥と牛はパドバ近郊産とのこと。食材が安くてとても嬉しい。 アパートでちゃんと料理ができるようになったので、肉や野菜を大量に 買うようになった。重いので、買物カートを持ってチェントロまで買いに 行く。 毎日てくてく歩いているので、イタリアへ来たら食事がおいしくて太る だろう、という大方の予想とは逆に、二人とも少し痩せた。このまま いけば、1年後にはスリムになって、ミラノファッションに変身して帰る、 という夢は不可能ではない?
(2007.4.20)