石の街 Padova -- (その2) 石畳

パドバの街は柱廊の建物が整然と並んでいるが、道路のほうは御覧の
とおり、クラシックな石畳がどこまでも続く。雑草が全く生えていない
ことに注意。石畳は素敵だが、歩きにくい。キャスター付きのスーツ
ケースを引いて歩く時、抵抗が大きくて腕が疲れるのは、日本のカラー
舗装と同じだ。
よく見ると石畳にもいろいろな形がある。道路の真中や端には排水溝が
あるが、その周辺もきれいに敷き詰めてあり、芸が細かい。

この石畳、道路工事で堀り返す必要がある時は、1つ1つ手で石を堀り出し、
また元通りに戻す。道路を長年きちんと保つこの根性は日本にはないものだ。
商店街がお金をかけてきれいにしたカラータイルの舗装道路を、無計画に
何度も堀り起こして、そのたびに道路の表面にアスファルトの筋を作って
平気でいる日本のお役所とは、街造りの姿勢が違う。

きわめつけはこの丸い砂利の道路。工事したあと、丸い石を埋め戻す時には、
1つ1つ手にとり、ノミで「カンカン」「カンカン」と削ってから、道路に
はめ込むのでありました。

横断歩道はこの通り。白い石をはめ込んである。ちなみに撮影者の私と夫の影が
映っている。 
視覚障害者用の点字タイルはあまり多くない。日本のような黄色いタイルではない
ので、弱視の人には見づらいだろう。ただし、いろいろな障害を持つ人を日本より
よく見かける。そばに人がつきそっているが、外に出て行動することが日本より
自由なのだと感じる。

市電の線路

この石畳は私にとって懐かしい風景。子ども時代(1960年頃)の東京都には、六ッ又
ロータリーと呼ばれた場所があって、トロリーバスや都電が石畳の道を走っていたっけ。

ところで小さな石畳ほど歩きにくい。でこぼこの上に、石の間が深い溝になって
いる場所もある。溝にヒールがはさまった人も見た。パドバは大学町だから学生が
多く、みなジーンズにスニーカーだし、一般の人もぺったんこの靴で、スカート姿
はめったに見られない。

たぶんパドバで最も荒っぽい石畳は天文台の前の道。丸い石が河原のごとく並んで
いて、運動靴でなければ歩きにくい。一年間イタリアで暮らせば、センスが身につき
「帰国時にはミラノファッションに変身しているかも」という私の期待は、パドバに
着いたその日に、あっけなく消えたのだった。
(2007.3.15)

上のページへ戻る


Copyright M. Kato 2007