法学部に全盲の学生をむかえて 慶応義塾大学 法学部学習指導主任 坂口 尚史 この度、法学部として始めて全盲の学生が入学いたしました。慶応大学日吉キャン パスとしては4年前に経済学部の学生を受け入れた経験がありましたが、法学部と しては始めての経験で、視覚障害者への対応は整備されているとは言い難く、 日吉構内における歩行訓練が始まった入学直後から、対応の仕方を考えることに なりました。法学部の学生は1、2年生の間は 日吉キャンパスにおり、2年間は法学部の専門科目だけではなく、一般教育科目も 多数履修いたします。そのため法学部の先生方だけではなく、他の学部の先生方 にも協力していただき対応を考える必要がありました。JR高田馬場駅に近い、日本 点字図書館を訪れ、点字を書く道具などを買い、教務課へ持ち帰りました。また学部 としましても点字六法の購入などを検討しはじめました。 ちょうど97年春から着任された経済学部の心理学の中野泰志先生が視覚障害の ご専門でいらしたので、97年5月9日には視覚障害者についてのお話を伺う 勉強会を設けることができました。法学部だけでなく、他学部の一般教育科目 担当の先生方や教務部の職員の方々、生協の方など、日吉キャンパスの中の方々が 広くお集まり下さいました。そこでは点字パソコンを始めとする補償機器類や 書籍などを紹介していただき、大変勉強になりました。中野先生の 『視覚障害があってもできないことは1つもない』という言葉にこちらも元気づけ られた次第です。天文学を担当されています加藤万里子先生には、その学生を履修者 として受け入れていただき、多くの協力者を募っていただいたり大変お世話になり ました。5月にはイギリスで全盲の大臣が誕生しましたし、日本でも全盲の弁護士や 数学者も活躍しておられます。また視覚障害者のスポーツでの活躍など、各方面 での活躍も報道されております。慶応大学法学部でも視覚障害者が十分に能力を 伸ばせるよう、教育条件を整備していきたいと考えております。