4. パソコン・インターネットの活用
                                   加藤万里子

1. パソコンの利用

  大学にある点字パソコンでは、文書の内容を音声出力で聞いたり、
紙に点字で出力することができる。読み上げソフトを使えば、文書ファイルを
ひらいたり画面を終らせるなどの命令も、すべて音声出力で行うことができる。
漢字まじりの文章を書く時には、一字一字読み上げて漢字変換するソフトがある。
たとえば「應」と「応」の字の違いも「慶應のオー」「応用のオー」と区別が
できるようになっている。

  学生がレポートを墨字で提出できるようになれば教師は便利になる。
フロッピーディスクでレポートを提出する方法もあるが、卒業後社会に出る
ことを考えると、墨字で文書を書けた方が良いかもしれない。

パソコンが使えると、CD-ROM の六法全書などをパソコンで読める。また
点字教材のかわりに教材をフロッピーで与える
ことができる。たとえば私は、拙著『100億年を翔ける宇宙』の原稿をMS/DOS の
プレーンテキスト(SJIS)に落としてフロッピーで与えた。ただしこれは本の著者
にしかできない。また補助教材として、天文学会編の
学術用語集を学会の Web ページから取ってきて、飾り文字や不要なリンクを削除
したものを使えるようにした。この用語集は広い範囲の天文用語をやさしく解説
しているので天文学辞典のかわりになる。これは筆者の WWW ページにのせてある。


2. 電子メイルの活用

  電子メイルが使えると、学生と教員、教務課など相互の連絡に便利である。
大学の掲示版に名前を張り出して呼び出す方法は有効ではないので、電子
メイルで用件を伝えられれば便利だ。またレポートの課題や参考書がわりの
文書などをメイルで送ればフロッピーも不要になる。
点字で打った紙はコピーができなくて不便だし、教員のにわか勉強であやしい
点字を使うよりは、電子メイルでやりとりする方が教師側も助かる。

また、電子メイルを使う利点は、情報を探す道が広がることである。検索
ソフトで『銀河』や『赤色巨星』などを調べ、レポートの材料とする
こともできる。人にたよらず自分で情報を集められる点でもインター
ネットは優れている。


3. ネットサーフィンのやりかた

WWW のページは視覚障害があると使いにくい。それは ディスプレイ上で
カーソルを動かしクリックすることが不自由だからである。そのための補助と
して、見たい URL アドレスを送れば視覚情報を取り除いてテキスト
ファイルに直し、電子メイルで返送してくれるサービスが開発されている。
たとえばリンクスメイルゲートウェイでは、見たい Web page のURL 
アドレスを1行だけ含む電子メイルを

  lynx@fukumo-sfb.fukushima.fukushima.jp
に送ると、そのページが電子メイルで自動返送される。
イメージは削除、リンクは末尾に整理されてある。これを使えば電子メイルで 
Web のページをみる(音声出力で聞く)ことができる。

Web のページを読めると、各地の天文台や大学の研究室のページにある
解説記事を読むことができる。うまく集めればたいそう豊富な天文の資料集と
なるはずである。施設・盲学校などの Web サイトのリストはこの冊子の
巻末にあるが、その中には教材として使えるサイトのリンクが張ってある
ものもある。


4. 提案

(1)大学の先生は教科書を電子出版しよう

筆者は『新・100億年を翔ける宇宙』を改訂するさいに、別売として
フロッピーディスクと点字の図のセットも出版した(詳しくは3章参照のこと)。
これがきっかけになって各種の教科書の電子出版が増えることを期待している。

(2) 読みやすい Web page を書こう
Web page を作るときには、できるだけ不要なかざりのない、プレーンテキストが
わかりやすい。きれいな写真やかざりのアイコンは不要だし、相互リンクが
やたらとはってあるのは音声出力したときに実にわずらわしい。要するに、
天文学者が雑誌などに書いた解説記事をそのまま Web に載せておけば、便利で役に立つ。

誰にでもわかりやすいホームページの書き方はつぎのところにある。
  http://www.twcu.ac.jp/~k-oda/AccessHTML/