目が不自由な人のための天文教材開発 加藤万里子(慶応大) キーワード:視覚障害,天文教材,共用品 目の不自由な人が天文学を勉強するときの教材があまりにも少ないので、 一般・大学一般教養むけの天文学教材を開発、出版したので報告する。 留意した点は (1)図をどのような形で出版するか (2)視覚障害者専用ではなく、晴眼者もいっしょに楽しめるものをつくる, である. この教材は『100億年を翔ける宇宙・バリアフリーパッケージ』として発売された。 これはフロッピー1枚と24ページの図のセットである。フロッピー には,すでに出版されている『100億年を翔ける宇宙』の本文と同じ文章と 立体印刷の図の説明が入っている(MS/DOSのプレーンテキスト). 図の方は、本の中から選んだ46個の図が立体印刷で24ページに収まっている。 図の説明は点字である。この印刷(タッチプリント)の特徴は,(1)プラスチック印刷 なので耐久性があり、扱いが便利,(2)透明なので、下に印刷した絵や文字(墨字印刷) が鮮明に読める, である。 この利点を生かして点字印刷の下に天体の写真を印刷して、 晴眼者もグラビア写真として楽しめる,という共用品を開発した。 本の内容は,いろいろな天体,宇宙観の変遷,宇宙論,銀河・銀河団,星の一生、太陽系, 地球外生命である.タッチプリントの主な内容は,つぎの通りである。 球状星団,銀河,星の力のつりあい,太陽(可視光とX線)、 天の河,ハッブル望遠鏡と地上の望遠鏡の星の像の比較,プランク分布, アリストテレスの宇宙観,コペルニクスの宇宙,ハーシェルの銀河系の形, 日食の時の光のまがり,ドップラー効果によるスペクトル線のずれ,晴れ上がり, COBEのデータ,フリードマン宇宙の膨張, 銀河のハッブル系列,電波銀河, クェーサー3C273, 衝突する銀河,電波望遠鏡群 VLA の配列, 銀河団の重力レンズ効果,星の進化,HR図,,赤色巨星の内部構造, 超新星残骸,X線星のしくみ,連星系の進化,太陽系の惑星の大きさの比較, 惑星の内部構造,月,地球の大気の循環、 土星,潮汐力,ハリー彗星,太陽系形成理論. なお、指で触って認識するため、図はあまり小さくできない. 大きなものは 一部を省略し、複雑な図は単純化する必要があった。 (C)日本天文学会1998年10月