A.C.Phillips The Physics of Stars John Wiley & Sons, Chichester 1994, 208p. (The Manchester Physics Series) [学部上級から大学院] 加藤 万里子 <慶応大理工> 天体物理学を講義するとき、いろいろな天体や宇宙論とくらべると、恒星は、 もとになる物理がよくわかっていて理論自体も難解ではなく、いろいろな基 礎物理がはいっているため教育的で、入門コースに適している。 その恒星についてのこの教科書であるが、マンチェスター大学物理学科の 4年生用の講義をもとにして書かれた。外国の教科書によくある分厚いもので はなく、読み通すのにてごろな大きさの本である。英語の文章も平易で読み やすい。物理学科用の教科書として、星に関する主な現象を基礎物理学をつ かって理解することをねらいとしている。理論を中心においているので観測 的なことがらは出てこないし、原始星やアクリーション・デイスク、連星系 などいわば応用編にはふれていない。一般相対性理論が必要な、ブラックホ ールの理論の展開はない。 内容は、ガスとふく射の状態方程式、電離、熱輸送、熱核反応など星の内部 でおこる基本的プロセスについて詳しく説明し、星の内部構造をきめる方程 式を近似的に解いて、中心温度や縮退星の半径などを求め、星の性質が基礎 物理で説明できることを理解させようとしている。この本を読むには力学と 熱力学・統計物理学の知識が必要である。一般相対論は必要ない。教科書と して必要なものがコンパクトにまとまっていると思う。学部4年で読める内 容であるが、天体物理学の講義が必ずしも物理学科にないことと、英語であ ることを考えて天体物理の基礎として修士1年で使ってもよい。 日本物理学会誌 (1994) 49,854 加藤万里子 www版 (c)日本物理学会