動くひまわり画像を使った気象の学習の環境提供

―マルチメディア気象教育を安価に実現する―

松本直記*,坪田幸政*,森澤文晴**,香川潤三**

*慶應義塾高等学校,**慶應義塾大学理工学部大学院

 

1 はじめに

 

天気の学習におけるひまわり画像の利用は紙媒体による提示が中心であるが、動きを伴った提示や最新の映像でより教育効果を上げることが出来る。これはコンピュータとインターネットを利用することで容易になる。

職員室にある新型のコンピュータはインターネットに繋がれていても教室に持っていくことは難しい。そこで、使われることなく眠っている古いPC-9801シリーズを演示用のコンピュータと位置づければ最新の画像で動画を伴った気象教育が普及するだろう。

 慶應高校では、1984年よりケンウッドコア社の受信装置と自作のソフトを使ってひまわり画像の受信をしている。このシステムで10年以上にわたってひまわり画像を受信し、データを蓄積し、地学教育に活用してきた。この画像データ(4bitデータ)は400×400ピクセルで80KBである。比較的小さいファイルサイズなので通信を介した配布に適している。現在3時間おきの赤外線画像を1日2回手動にて本校地学教室のホームページ( http://www.hc.keio.ac.jp/earth )で公開している。

教員室にある新型のコンピュータで、このデータをダウンロードし、古い98マシンで、動画を伴ったひまわり画像を演示する環境を提供するのが本研究の目的である。

 

2 PC98用演示ソフトKEIOGMS

 

KEIOGMSPC-9801VM用に作成したものなので、ほとんどの98シリーズで動作する。ハードディスクも特に必要としない。PC-9801用のひまわり画像表示ソフトは津坂( http://www.japan-net.or.jp/~tsusaka/ )によるものや、鈴木ら(1995)のものがある。本プログラムは使い勝手、完成度においてはこれらには及ばないがより低性能の機種でも動作することやファイルサイズの小ささで利便性がある。

本ソフトの機能には、以下のようなものがある。

a.アニメーション機能 b.拡大表示

c.画面切り替え d.温度・反射量表示

画像ファイルは1.2メガバイトフロッピーディスクに15枚分の画像を入れることができるのでハードディスクを持たない機種でもいろいろなタイムスケールの変化をアニメーションで演示することが可能である。

 

3 Windows95用ひまわり画像表示ソフト

 

画像ファイルをダウンロードするコンピュータのOSWindows95が一般的だろう。Windows95上でダウンロードした画像を確認したり、画像を一般的なビットマップ形式に出力する事を目的としたソフトウェアを開発した。このソフトもアニメーション、拡大表示が可能である。

 

4 おわりに

 

 これらのプログラム及び画像ファイルは本校地学教室のホームページで得ることができる。現在19941997の朝9時(00Z)の赤外線画像、1週間分の3時間おきの赤外線画像を公開している。また、技術的な問題が解決され次第、受信した最新データを自動的にリアルタイムに近い状態でインターネット上へ提供したいと考えている。

これらのプログラムが気象教育を活性化させる一助になれば幸いである。

 

「ひまわり画像」は気象庁の静止気象衛星ひまわりが観測した画像です。

<参考文献>

鈴木宏宣・廣野達也・土田幹憲・高橋庸哉(1995:気象衛星「ひまわり」の教育的活用?―画像ソフトの製作―:日本理科教育学会第45回全国大会要項,226.

松本直記・坪田幸政・香川潤三・森澤文晴(1997:ひまわり画像演示ソフトの開発-現役を引退したコンピュータを利用して-