Open Forum

 

このコーナーのコンセプト

共同研究員・研究協力者の活動を中心に、学会、コンファレンス、セミナーの開催予定のアナウンスやインフォーマルなレポートなどを考えています。また、共同研究のメンバー以外にも、このページの内容やワーキングペーパーへのコメントなど、様々なご意見を歓迎いたしますので、ご投稿ください。ご連絡はこちらまで。 mail

 

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小野尚香(神戸親和女子大学/大阪大学大学院医学研究科)

「近代日本における衛生行政制度−明治期の京都の制度を事例として」

生存科学研究所(東京)セミナー「現在の保健医療制度の源流を探る研究会」2007/10/20

要約

1871年から77年の京都の衛生行政制度を検討した報告。遷都による人口減少と衰退が憂えられた状況で、「衛生」を「富府健民」政策に組み込んだ大規模な政策が行われた。それによって、「療病院」を中心に、医療、教育、救貧、保健などの多くの機能を持たせたシステムが建設された。具体的には、乳児に痘瘡の予防接種をし、その後も再接種を行う種痘所、薬などを製造し検査した舎蜜局、牛乳などを普及させた牧畜場、効能の分析の上に運営された療養施設である鉱泉施設、ごみを収集して再利用し浮浪者などを雇用して生計の途を与える化芥所、日本で最初の公立癲狂院などがであった。極めて短期間のうちに、これだけ大規模で野心的な衛生制度が作られた背景には、京都府と寺や富裕な商人、有力な医師などの官民の協力があった。 (文責・鈴木晃仁)