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hellog〜英語史ブログ

堀田隆一(ほったりゅういち)による,英語史に関する話題を広く長く提供し続けるブログです(note のプロフィールはこちら)."History of the English Language Blog" ということで,略して "hellog".英語史と関連する英語学・言語学一般の話題も扱っています.本ブログで紹介・推薦する書籍などについて,特別に表記しない限り,すべて自主的な言及です.また,堀田は Amazon のアソシエイトとして適格販売により収入を得ています.

まずは,
  1. 英語史の学び始め/続けには,まず以下の記事からスタート!
  2. アクセス・ランキング (access ranking) のトップ500記事
  3. 英語に関する素朴な疑問に関する記事群
  4. 全記事の標題の一覧 (Archives)
  5. 音声コンテンツ一覧 (heldio & hellog-radio)
  6. Voicy 「英語の語源が身につくラジオ」(heldio)
  7. 知識共有サービス「Mond」での,英語に関する素朴な疑問への回答
  8. 慶應英語史フォーラム (khelf) のツイッターアカウント @khelf_keio
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をご覧ください.

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お知らせ 4月30日(水)の13:30〜14:30に Voicy heldio にて「千本ノックGW回 with 小河舜さん」を生配信でお届けします.ぜひライヴでお聴きください.2025/04/30(Wed)

お知らせ 4月30日の「英語に関する素朴な疑問 千本ノック --- GW回 with 小河舜さん」生配信の動画を YouTube 「heltube --- 英語史チャンネル」より配信しています.65分ほどの動画です.こちらよりご覧ください↓ 2025/05/04(Sun)

お知らせ Voicy でお届けしている「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」の Video Podcast 版を開始しました.Spotify より,同名の Podcast チャンネル「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」として視聴できます.フォローをよろしくお願いします.最新回はコチラです↓ 2025/03/13(Thu)

お知らせ 2025年2月28日に,私の所属する慶應義塾大学の 公式 YouTube チャンネル「慶應義塾 Keio University」内の「研究者紹介動画」というシリーズの1回として「英語史は「英語の歴史」というよりも「英語と歴史」」慶應義塾大学文学部・堀田隆一教授」が公開されました.4分22秒ほどの公式動画です.2025/03/01(Sat)

お知らせ 2025年3月15日(土)17:30--19:00,朝日カルチャーセンター新宿教室にてシリーズ講座「語源辞典でたどる英語史」の最終回となる第12回「勘違いから生まれた英単語」が開講されます.ご関心のある方は,リンク先よりお申し込みください.2025/02/26(Wed)

お知らせ 2024年12月30日に khelf による『英語史新聞』第11号がウェブ上に一般公開されました.こちらからPDFでご覧になれます.hellog のこちらの記事,および heldio のこちらの配信回でも第11号公開についてお知らせしています.公開後は khelf の X (旧ツイッター)アカウント @khelf_keio より関連情報をお伝えしますので,ぜひフォローをお願いします.2025/01/03(Fri)

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お知らせ ヘルメイト有志によるhel活を紹介する月刊 Helvillian 2025年4月号が3月28日にウェブ公開されています.こちらよりご覧ください.2025/01/28(Tue)

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お知らせ 新年度2024年の4月より khelf による「英語史コンテンツ50+」が始まっています.休日を除く毎日,khelf メンバーより英語史の話題が1つ上がってきます).日々,khelf 公式ツイッターアカウント @khelf_keio からも関連情報を発信しています.2024/04/19(Fri)

お知らせ 知識共有サービス「Mond」にて英語・言語に関する素朴な疑問に回答しています.最新の質問&回答はこちらよりご覧ください.2024/09/30(Mon)

Mond Latest

お知らせ 2023年7月より Voicy 「英語の語源が身につくラジオ」 (heldio) にて「英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む」シリーズを展開しています.Baugh and Cable の A History of the English Language (6th ed.) を1回1セクションずつ精読していくというシリーズです.週に1,2回程度のペースで続けています.有料配信ですが冒頭チャプターは試聴可となっていますので,ぜひ聴いてみてください.バックナンバー一覧はこちらの記事よりどうぞ.2024/02/09(Fri)

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お知らせ 2022年2月26日に,同僚の井上逸兵さんと YouTube チャンネル「いのほた言語学チャンネル(旧:井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル)」を始めています.毎週(水)(日)の午後6時に更新予定です.チャンネルの趣旨としては,こちらの hellog 記事あるいは Voicy でのアナウンスをご一読・ご視聴ください.直下(↓)は最新の YouTube 放送となります.本ブログの関連記事もお読みください.2022/03/10(Thu)

お知らせ 2024年7月より,Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」の再放送という趣旨で,こちらの YouTube にて日々配信しています.直下(↓)は最新公開の回となります.2024/08/10(Sat)

お知らせ 2025年3月6日より5月6日まで,heldio の前身である「hellog ラジオ版」 (hellog-radio) として2020--2021年に配信していた62回の配信を,こちらの YouTube にて再放送していました.2025/05/07(Wed)

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お知らせ 2021年6月2日より,英語史の音声コンテンツを配信する 「英語の語源が身につくラジオ」(通称 heldio)を始めています.本ブログの姉妹版という位置づけで,音声配信プラットフォーム Voicy を通じて,英語史に関する音声コンテンツを提供しています.企画の趣旨として,こちらの hellog 記事をご一読ください.直下(↓)は最新の Voicy 放送となります.2024/07/20(Sat)

お知らせ 2023年6月2日より,上記 heldio にプレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪」 (helwa) が加わりました.毎週火木土の18:00よりお届けしています.helwa は有料配信となりますが,開設趣旨としてこちらの hellog 記事をお読みください.直下(↓)は最新の helwa 放送となります.2023/09/09(Sat)

お知らせ 2023年7月17日より,Voicy heldio の有料配信として「英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む」シリーズを開始しています(各回ともにウェブブラウザ経由で200円です).毎週1,2回の配信を通じて,英語で書かれた英語史の名著を1回1セクションずつ精読解説していきながら,内容についても英語史の専門的な観点から縦横無尽にコメントしていきます.3ヶ月続けて,参加メンバーも徐々に増えてきています.開設趣旨としてこちらの hellog 記事をお読みください.直下(↓)は最新のシリーズ配信回となります.2023/10/22(Sun)

お知らせ 2023年10月6日より,stand.fm にて「英語史つぶやきチャンネル」 を始めています.英語史の話題を不定期でカジュアルにお届けします.直下(↓)は最新の配信回となります.2025/01/28(Tue)

お知らせ 2023年1月中旬に家入葉子先生(京都大学)と堀田の共著となる,英語史研究のハンドブック『文献学と英語史研究』が開拓社より発売となります.本書についてはこちらのページで,著者が様々に紹介しています.2023/01/05(Thu)

『文献学と英語史研究』

お知らせ 2022年11月8日に『ジーニアス英和辞典』第6版が発売となりました.新版で初めて導入されたコラム「英語史Q&A」を執筆させていただいていますので,ぜひ辞典手に取って開いてみていただければと思います.コラムについては hellog でもこちらの記事群で関連する話題を取り上げています.2022/11/15(Tue)

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お知らせ 堀田ゼミの紹介ページがゼミ生により立ち上げられました.入ゼミを希望する学生は必見です.堀田による公式のゼミ紹介はこちらの記事からどうぞ.2022/11/04(Fri)

お知らせ ご愛読ありがとうございます,9刷が発行されています.2022年9月より電子書籍としても配信開始です.本ブログの内容を多く取り込んだ拙著『英語の「なぜ?」に答えるはじめての英語史』が2016年に研究社より出版されました.本の趣旨や補足情報のために,コンパニオン・サイト (naze) を用意していますので,そちらも是非ご覧ください.また,本ブログ内の「#2764. 拙著『英語の「なぜ?」に答える はじめての英語史』が出版されました」にも紹介があります.2024/08/10(Sat)

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お知らせ このたび様々な言語における標準化の歴史を題材とした本が出版されました.高田 博行・田中 牧郎・堀田 隆一(編著)『言語の標準化を考える --- 日中英独仏「対照言語史」の試み』 大修館,2022年.
本ブログ内でも本書の紹介記事をいくつか書いていますので,そちらもご覧ください.さらに,7月9日と8月1日には2回にわたって3編者対談を Voicy で配信しましたので,ぜひこちらこちらより各々お聴きください.

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お知らせ 本ブログベースの拙著『英語史で解きほぐす英語の誤解 --- 納得して英語を学ぶために』の第4刷が出ています.本書のコンパニオン・ページ及び著者による紹介ページをご覧ください.また,本書の内容に沿ったブログ記事へのリンク (hogusu) はおすすめです.2018/09/02(Sun)hogusu_front_cover_small

その他のお知らせ

お知らせ 「手軽に英語史を」というコンセプトで,地味に「hellog ラジオ版」 (hellog-radio) を始めています.1つ数分以内のコンテンツです.これまでのコンテンツ一覧よりどうぞ.2020/07/09(Thu)

お知らせ 大修館『英語教育』の2020年3月号に,連載「英語指導の引出を増やす 英語史のツボ」の第12回(最終回)の記事が掲載されています.今回の話題は「なぜアメリカ英語はイギリス英語と異なっているのか」です.どうぞご一読ください.2020/02/14(Fri)eigokyouiku_rensai_12_20200214_front_cover_small.jpg

お知らせ 1月5日発売の英語学習誌『CNN English Express』2月号に「歴史を知れば納得! 英語の「あるある大疑問」」と題する拙論が掲載されています.英語史の観点から素朴な疑問を解くという趣向の特集記事で,英語史の記事としては珍しく8頁ほどの分量を割いています.どうぞご一読ください.hellog 内の紹介記事もどうぞ.2019/01/07(Mon)cnn_ee_201902_front_cover_small

お知らせ 私も一部執筆している服部 義弘・児馬 修(編) 『歴史言語学』朝倉日英対照言語学シリーズ[発展編]3 朝倉書店,2018年.が2018年3月に出版されました.日本語史と比較対照しながら英語史や英語の歴史的変化について学べます.本ブログ内の#3283の記事にも簡単な紹介がありますのでご覧ください.2018/04/23(Mon)

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お知らせ Simonn Horobin 著 Does Spelling Matter? の拙訳『スペリングの英語史』が早川書房よりより出版されました.紹介記事として,本ブログ内の「#3079. 拙訳『スペリングの英語史』が出版されました」「#3080. 『スペリングの英語史』の章ごとの概要」もご覧ください.2017/10/01(Sun)

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お知らせ 『英語の「なぜ?」に答えるはじめての英語史』に関連する研究社ベースの連載企画「現代英語を英語史の視点から考える」が始まっています(そして12回で終わりました).2017/12/21(Thu)


最近 7 日分を以下に表示中 / 今月の一覧

2025-05-14 Wed

#5861. khelf 寺澤志帆さんが「『英語語源辞典』でたどる英語綴字史」シリーズを開始しています [khelf][kdee][helkatsu][spelling_pronunciation_gap][terasawashiho][etymological_spelling][spelling][orthography]


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 月曜日に Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」にて,khelf(慶應英語史フォーラム)の寺澤志帆さんと対談し,寺澤さんが最近始められた「『英語語源辞典』でたどる英語綴字史」という企画を紹介していただきました.今回の記事でも,その企画について改めてご案内します.
 寺澤さんが始められたのは,私が日頃「世界一の英語語源辞典」として言及している推薦書・愛読書で,研究社より出版されている『英語語源辞典』 (kdee) を通読しながら,英語綴字史的に興味深い項目をコンテンツ化して紹介していくというシリーズです.寺澤さんご自身のHPで,ブログ記事のような形で発信されています.
 これに似た企画,どこかで聞いたことがありますよね.そう,heldio/helwa のリスナー lacolaco さんが,に1年以上前から「英語語源辞典通読ノート」の企画を始めており,hel活 (helkatsu) 界隈では評判となっています.寺澤さんの企画は,その流れを汲んでの第2弾といえます.
 lacolaco さんが総合的な観点からおもしろい語源の話題ををピックアップされているのに対し,寺澤さんはご自身の専門である英語綴字史の観点に絞って興味深いトピックを拾い出しています.綴字と発音の乖離 (spelling_pronunciation_gap) は英語史の定番の話題です.その点で,寺澤さんの通読シリーズは英語史の中心的テーマに迫ろうとする試みとなります.
 寺澤さんは5月1日からこの企画を開始しており,今後はご自身のペースで定期的に続けていくとのことです.私も過去にこの『英語語源辞典』を通読してみようと試みたことがあるのですが,最初のページで深掘りしすぎてしまい,これは無理だと早々に諦めました.あの分厚い辞典を最初から最後まで読み通すというのは,まさに無謀とも思える試みです.だからこそ,それを実際に始められている寺澤さんや lacolaco さんの熱意には脱帽します.
 さて,具体的にどのような記事が公開されているのでしょうか.例えば,この間の金曜日には ab(h)ominable の項目が紹介されていました.この語は現代英語では abominable と綴られますが,かつては abhominable のような h が入った形も存在しました.『英語語源辞典』では,この h があるものとないものが別々の項目として立てられており,その歴史的な変遷が示されています.これはまさに寺澤さんが専門的に研究している語源的綴字 (etymological_spelling) の話題です.寺澤さんは,『英語語源辞典』の記述をベースにしつつ,必要に応じて OED なども参照しながら,深掘り解説を加えています.
 『英語語源辞典』を通読し,それをウェブ上で公開するというユニークな取り組みは,lacolaco さんに続き寺澤さんも始められたことで,ちょっとしたブーム(?)になりつつありますね.一般的に辞書は引くものであって通読するものではないと考えられていると思いますので,出版元の研究社さんも驚かれているのではないでしょうか.
 本ブログ読者の皆さんも,ぜひ寺澤さんによる新企画「『英語語源辞典』でたどる英語綴字史」を末永く応援していただけますと幸いです.この企画を開始したきっかけの話題を含めた,寺澤さんとの heldio 対談について,「#1443. 「『英語語源辞典』でたどる英語綴字史」 by khelf 寺澤志帆さん」よりお聴きください.



 ・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.

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2025-05-13 Tue

#5860. 「ん」の発音の実現形 [japanese][phoneme][phonology][phonetics][consonant][nasal][romaji][hiragana]

 日本語で「ん」と表記される音の実現形が多様であることは,よく知られている.音環境次第で,音声学的には必ずしも似ていない様々な音が,「ん」の実現のために用いられているのだ.方言や話者による個人差もあるものの,一般には次のように言われている(『日本語百科大事典』の「撥音」の項目より).

撥音「ん」は現れる位置によって音価が異なり,鼻子音になる場合と鼻母音になる場合とがある(以下に示す表記はかなり簡略なものである).
 i) 鼻音・閉鎖音・流音の前
  [m]   「3枚」 [sammai]
      「3杯」 [sambai]
  [n]   「女」 [onna]
      「温度」 [ondo]
      「本来」 [honrai]
  [ŋ]   「金魚」 [kiŋŋjo]
 ii) サ行子音・母音・半母音の前
  [i᷈]   「単位」 [tai᷈i]([᷈] は [i] より少し広く鼻音化した音)
      「電車」 [de᷈ʃa]
  [ɯ᷈]   「困惑」 [koɯ᷈wakɯ]
      「論争」 [roɯ᷈soː]
 iii) 言い切り
  たとえば「パン」と単独で発音した場合には [paɴ] と表記される.[ɴ] は口蓋垂の鼻音であるが,これは積極的な鼻子音であるというよりは,口蓋帆が下がり,口が若干閉じられることによって生じる音である(なお撥音を音韻表記では /ɴ/ と表わすが,この /ɴ/ と音声表記の /ɴ/ とは意味が異なる).


 「ん」問題は音韻論の観点からも日本語史の観点からもおもしろい.また,「ん」はローマ字で表記するとどうなるのかという話題にかこつけて,英語綴字のトピックに関連づけてみるのもおもしろい.関連して,以下の記事群を参照.

 ・ 「#3852. なぜ「新橋」(しんばし)のローマ字表記 Shimbashi には n ではなく m が用いられるのですか? (1)」 ([2019-11-13-1])
 ・ 「#3853. なぜ「新橋」(しんばし)のローマ字表記 Shimbashi には n ではなく m が用いられるのですか? (2)」 ([2019-11-14-1])
 ・ 「#3854. なぜ「新橋」(しんばし)のローマ字表記 Shimbashi には n ではなく m が用いられるのですか? (3)」 ([2019-11-15-1])
 ・ 「#3855. なぜ「新小岩」(しんこいわ)のローマ字表記は *Shingkoiwa とならず Shinkoiwa となるのですか?」 ([2019-11-16-1])

 ・ 『日本語百科大事典』 金田一 春彦ほか 編,大修館,1988年.

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2025-05-12 Mon

#5859. 「AI古英語家庭教師」の衝撃 --- ぷりっつさんの古英語独学シリーズを読んで [heldio][helwa][oe][ai][hel_education]


ぷりっつさんの「Gemini 君と古英語を読む」



 heldio/helwa のコアリスナーであるぷりっつさんが,1週間ほど前から note 上で公開されている「Gemini 君と古英語を読む」シリーズは,私にとって衝撃的でした.最新のAI技術(今回は Gemini)が,これまで人間の先生による手ほどきが不可欠と思われてきた古英語学習のあり方を根底から覆しつつある現実を,まざまざと見せつけられたからです.
 記事を拝読し,まず驚かされたのは,AIの精度の高さです.画像として取り込まれた古英語のテキスト(『古英語・中英語初歩』第2版)に含まれる æþ といった特殊文字を,AIが難なくテキスト化し,それをもとに,ぷりっつさんが次々とAIに問いかけながら疑問を解消していく様子は,まさに圧巻でした.ぷりっつさんの「AIとなら読めるかも」という直感が的中しました.このようなことが,ここまで早い段階で現実のものとなるとは,正直なところ,思いも寄りませんでした.
 ぷりっつさんの,新しい技術に対する開かれた姿勢にも感銘を受けました.未知の領域である古英語の世界に,AIを積極的に活用しながら飛び込んでいく探究心は,研究者の私にとっても大いに刺激となりました.AIとの対話を通じて名詞の格変化や動詞の活用といった古英語の厄介な文法事項の理解を深めていっている様子が,記事のあちらこちらから伝わってきました.特に複合語 ġedæġhwāmlīcan の構造をAIと共に解き明かしていく過程には,私も引き込まれました.
 今回のぷりっつさんの note 記事は,英語史を専門とする私自身の立ち位置についても深く考えさせられました.これまで英語史や古英語の研究者は,その専門的な知識や経験を活かして,当該分野の奥深さや魅力を伝えてきたという自負がありました.しかし,AIがこれほどの精度で学習者の疑問に答え,理解を助けることができるのであれば,研究者の役割は今後どのようになっていくのでしょうか.
 ぷりっつさんの古英語学習体験談を読むにつけ,AIはもはや単なるツールではなく,すでに学習者のペースに合わせて知識を提供できる優秀な家庭教師であるといっても過言ではありません.もちろん,歴史・文化的背景など,現在のAIの知識だけでは捉えきれない側面も存在するでしょう.しかし,基本的な文法事項の習得といった初歩的な段階に関する限り,AIがきわめて効果的な助っ人となり得ることが明らかになりました.
 学習,教育,研究において,何らかの形でAIの力を借りずにいくという選択肢は,早晩なくなるでしょう.重要なのは,AIの潜在的な価値を最大限に引き出し,より深く効率的な学びを実現する方法を模索することだと考えます.
 ぷりっつさんの「Gemini 君と古英語を読む」シリーズは,まさにその可能性を示唆するものであり,今後の英語史の学習・教育・研究のあり方を考える上で,非常に重要な気づきとなりました.私もまた,この技術革新の波に乗り遅れることなく,AIとの新たな協働の方法を探求していきたいと考えています.AIという新たな道具を手にした私たちが,これからどのような地平を切り開いていくのか,今から楽しみです.

 ・ 市河 三喜,松浪 有 『古英語・中英語初歩』第2版 研究社,1986年.

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2025-05-11 Sun

#5858. 言語において変わるものと変わらないもの --- 「いのほた言語学チャンネル」より [inohota][youtube][language_change][historical_linguistics][notice][christianity][oe][loan_word][borrowing]



 同僚の井上逸兵さん(慶應義塾大学)と運営している YouTube 「いのほた言語学チャンネル」は,原則として毎週水曜日と日曜日の午後6時に最新回が配信されています.多くの方にご覧いただいています.ありがとうございます.おかげさまで言語学系のチャンネルとして少しずつ知られるようになってきました(チャンネル登録者は目下1.42万人).
 1週間前に配信された「#333. 変化したことより変化してないことの方がおもしろい!?新しい歴史言語学」が,思いのほかよく視聴されています.20分ほどの動画です.ぜひご視聴いただければ.
 この回のテーマは,本ブログでも中心的に取り上げてきた言語変化 (language_change) です.言語は常に揺れ動き,時代とともにその姿を変えていきますが,その一方で,変化しない要素も存在します.今回の動画では,この言語変化のダイナミズムと,その陰に潜む不変性に焦点を当てました.
 まず言語変化研究の現状を概観し,歴史言語学 (historical_linguistics) における伝統的な視点を紹介しています.一般的に,歴史言語学は,ある言語に注目し,その変遷の歴史を追う学問と捉えられています.しかし,言語の歴史を捉える上で重要なのは,変化した事象だけでなく,連綿と受け継がれてきた,つまり変わらなかった事象にも目を向けることであると論じました.
 社会や文化が大きく変動する際に,言語もまた影響を受け,発音が変容したり,新しい語彙が生まれたり,既存の語の意味が変わったり,あるいは文法が変化したりします.しかし,その一方で,社会の変化にもかかわらず,従来の形式を保持し続ける言語項目も存在します.動画では,この「不変化」の重要性について,具体的な例を挙げながら議論を展開しました.
 特に興味深い例として簡単に触れたのが,英語における God という単語です.古英語期,イングランドにキリスト教が浸透する過程で,多くのキリスト教関連用語がラテン語から導入されました.しかし,「神」という最も根源的な概念を表わす単語は,対応するラテン語の deus を借りるなどではなく,ゲルマン語起源の god が生き残りました.なぜ,他の多くの用語がラテン語によって置き換えられたにもかかわらず,この単語については現代に至るまでその形を保ち続けているのでしょうか.この問いを探ることは,単なる語源研究にとどまりません.言語共同体の文化や歴史に迫ろうとする試みでもあります.以下に関連する過去記事を挙げておきます.

 ・ 「#32. 古英語期に借用されたラテン語」 ([2009-05-30-1])
 ・ 「#865. 借用語を受容しにくい語彙領域は何か」 ([2011-09-09-1])
 ・ 「#1619. なぜ deus が借用されず God が保たれたのか」 ([2013-10-02-1]),
 ・ 「#2663. 「オープン借用」と「むっつり借用」 (1)」 ([2016-08-11-1])
 ・ 「#3382. 神様を「大日」,マリアを「観音」,パライソを「極楽」と訳したアンジロー」 ([2018-07-31-1])

 動画では,この他にも,言語(不)変化の背後にある力学について触れています.言語は,川の流れのように常に変化していきます.しかし,その川底には,時を超えて変わらない岩盤のような要素も存在しているのです.言語変化という現象を多角的に捉える視点を提供できたのであれば幸いです.

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2025-05-10 Sat

#5857. 2025年度の朝カルシリーズ講座の第1回「she --- 語源論争の絶えない代名詞」をマインドマップ化してみました [asacul][mindmap][notice][kdee][etymology][hel_education][lexicology][she][personal_pronoun][link]

 4月26日(土)に,今年度の朝日カルチャーセンターのシリーズ講座「歴史上もっとも不思議な英単語」の初回として「she --- 語源論争の絶えない代名詞」が,新宿教室にて開講されました.予告記事として「#5829. 朝カル講座の新シリーズ「歴史上もっとも不思議な英単語」が4月26日より月一で始まります」 ([2025-04-12-1]) でお知らせした通りです.
 この第1回の内容を markmap というウェブツールによりマインドマップ化して整理しました(画像としてはこちらからどうぞ).復習用にご参照いただければ.



 この朝カル講座の春期クールの5月分と6月分についても日程が以下のように確定しています.関心のある方は,ぜひ公式HPより詳細をご確認の上,お申し込みください.

 ・ 第2回:5月24日(土):through --- あまりに多様な綴字をもつ語
 ・ 第3回:6月21日(土):autumn --- 類義語に揉み続けられてきた季節語

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2025-05-09 Fri

#5856. 私の『英語語源辞典』推し活履歴 --- 2025年5月9日版 [notice][kdee][youtube][link][etymology][review][voicy][heldio][lexicography][asacul]


寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.



 たまに振り返ってみるシリーズです.これまでの『英語語源辞典』推し活履歴は,以下の記事をご参照ください.

 ・ 「#5210. 世界最強の英語語源辞典 --- 寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』(研究社,1997年)」 ([2023-08-02-1])
 ・ 「#5261. 研究社会議室での3回にわたる『英語語源辞典』をめぐるインタビューが完結」 ([2023-09-22-1])
 ・ 「#5436. 私の『英語語源辞典』推し活履歴 --- 2024年3月15日版」 ([2024-03-15-1])
 ・ 「#5522. 私の『英語語源辞典』推し活履歴 --- 2024年6月9日版」 ([2024-06-09-1])
 ・ 「#5553. 寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』(研究社,1997年)の新装版 --- 「いのほた言語学チャンネル」でも紹介しました」 ([2024-07-10-1])

 今回は2024年7月11日以降の推し活履歴を時系列に一覧します.2024年度の朝カル講座「語源辞典でたどる英語史」の関連が多いので,これについては特にこちらの記事群ご覧ください.ほかには kdee タグのついた記事群も参照.

 ・ 2024年07月26日 heldio で「#1153. 『英語語源辞典』を読むシリーズ (8) --- khelf 藤原くんと king の項を精読する」が公開される.
 ・ 2024年07月27日 朝カルのシリーズ講座「語源辞典でたどる英語史」の第4回「現代の英語に残る古英語の痕跡」が開講される.
 ・ 2024年08月24日 heldio で「#1182. 【緊急のご報告】研究社『英語語源辞典』新装版が重版決定!」が公開される.
 ・ 2024年08月24日 朝カルのシリーズ講座「語源辞典でたどる英語史」の第5回「英語,ラテン語と出会う」が開講される.
 ・ 2024年09月28日 朝カルのシリーズ講座「語源辞典でたどる英語史」の第6回「英語,ヴァイキングの言語と交わる」が開講される.
 ・ 2024年09月08日 khelf 主催の「英語史ライヴ2024」の英語史クイズにて,研究社のご提供により『英語語源辞典』が景品とされる.
 ・ 2024年09月08日 khelf の『英語史新聞』第10号号外にて,『英語語源辞典』制作にかかわる貴重なエピソードが紹介される.
 ・ 2024年09月20日 『はじめての英語史』と『英語語源辞典』が読売新聞朝刊のサンヤツ広告に掲載される.
 ・ 2024年09月23日 heldio で「#1212. 『英語語源辞典』の「語源学解説」精読 --- 「英語史ライヴ2024」より」が公開される.
 ・ 2024年10月21日 heldio で「#1240. 『英語語源辞典』の「語源学解説」精読 (2) --- KDEE の編集方針を理解しよう」が公開される.
 ・ 2024年10月26日 heldio で「#1236. mine を『英語語源辞典』で読み解く」が公開される.
 ・ 2024年10月26日 朝カルのシリーズ講座「語源辞典でたどる英語史」の第7回「英語,フランス語に侵される」が開講される.
 ・ 2024年11月14日 heldio で「#1264. 『英語語源辞典』通読はキツい,無理!」が公開される.
 ・ 2024年11月16日 heldio で「#1266. chair と sit --- 『英語語源辞典』精読会 with lacolaco さんたち」が公開される.
 ・ 2024年11月30日 朝カルのシリーズ講座「語源辞典でたどる英語史」の第8回「英語,オランダ語と交流する」が開講される.
 ・ 2024年12月21日 朝カルのシリーズ講座「語源辞典でたどる英語史」の第9回「英語,ラテン・ギリシア語に憧れる」が開講される.
 ・ 2024年12月26日 heldio で「#1306. 『英語語源辞典』の「語源学解説」精読 (3) --- 印欧語比較言語学の学史をたどる」が公開される.
 ・ 2025年01月25日 朝カルのシリーズ講座「語源辞典でたどる英語史」の第10回「英語,世界の諸言語と接触する」が開講される.
 ・ 2025年02月08日 朝カルのシリーズ講座「語源辞典でたどる英語史」の第11回「英語史からみる現代の新語」が開講される.
 ・ 2025年03月15日 朝カルのシリーズ講座「語源辞典でたどる英語史」の第12回「勘違いから生まれた英単語」が開講される.
 ・ 2025年04月25日 heldio で「#1426. 『英語語源辞典』をランダム読み --- khelf メンバーとの思いつき企画」が公開される.
 ・ 2025年04月27日 heldio/helwa リスナーの ari さんが『英語語源辞典』で一人遊びするアプリを開発し,note 上で公表する:「#264 【KQ1】Voicy の KDEE の単語遊びを ChatGPT で体験してみた!」.アプリの改訂版は2日後のこちら:「#266【KQ2】ゴラクエを update して遊ぶ!!」
 ・ 2025年05月01日 khelf の寺澤志帆さんが,連載「『英語語源辞典』でたどる英語綴字史」を開始する.
 ・ 2025年05月04日 heldio/helwa リスナーの lacolaco さんによる note 上の「英語語源辞典通読ノート」が順調に継続しており,crash まで達している.

 khelf メンバーやヘルメイトさんとも力を合わせ,ものすごい活動になってきました.皆さんも,どのような形であれ,ぜひ KDEE 推し活にご参加いただければ!

 ・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』 研究社,1997年.

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2025-05-08 Thu

#5855. ギリシア語由来の否定の接頭辞 a(n)- と英語の不定冠詞 a(n) の平行性 [senbonknock][sobokunagimon][heldio][article][greek][prefix][consonant][ogawashun][khelf][negative][oe]



 5月28日に,khelf(慶應英語史フォーラム)の協賛のもと,heldio にて小河舜さん(上智大学;X アカウント @scunogawa)とともに「英語に関する素朴な疑問 千本ノック」をライヴでお届けしました.その様子をアーカイヴとしてすでに YouTube 版で公開していることは,先日の記事「#5851. 「英語に関する素朴な疑問 千本ノック --- GW回 with 小河舜さん」のアーカイヴを YouTube で配信しました」 ([2025-05-04-1]) でお伝えした通りですが,数日遅れで heldio のアーカイヴとしても配信しました.音声だけで十分という方,ながら聴きしたいという方は,「#1439. 英語に関する素朴な疑問 千本ノック --- GW回 with 小河舜さん」よりご聴取ください.本編は65分ほどの長さです.
 今回の千本ノックで取り上げた素朴な疑問は15件ありましたが,その5件目(本編の26分18秒辺りから)に注目します.質問の趣旨としては「不定冠詞 an/a の使い分け(an apple vs. a pen)の現象は,ギリシア語由来の否定の接頭辞 an-/a- の現象と同じですか?」というものでした.質問者からのこの高度な指摘にむしろ勉強になった旨,小河さんとライヴでも触れた通りです.
 調べてみると,確かに両者において,an- が歴史的には本来の形態素ですが,後ろに母音(あるいは h)で始まる要素が後続する場合には,音便により当該形態素より n が脱落し,a- という異形態が用いられています.きれいに平行的といえます.
 Webster の辞書の第3版に所収の A Dictionary of Prefixes, Suffixes, and Combining Forms によると,ギリシア語由来の否定の接頭辞 a-, an- について次のように記述があります.

2a- or an- prefix [L & Gk; L a-, an-, fr. Gk --- more at UN-]: not: without <achromatic> <asexual> --- used chiefly with words of Gk or L origin; a- before consonants other than h and sometimes even before h, an- before vowels and usu. before h <ahistorical> <anesthesia> <anhydrous>


 このなかで示唆されている通り,このギリシア語由来の否定の接頭辞は,英語本来の否定の接頭辞 un- とも同根である.ついでに同辞典より un- の項目も覗いておこう.

1un- prefix [ME, fr. OE; akin to OHG un- un-, ON ō, ū-, Goth un-, L in-, Gk a-, an-, Skt a-, an- un-, OE ne not]


 古英語の否定辞 ne もこれらと同根であるから,つまるところ not, never, no などとも通じることになる.
 寄せていただいた素朴な疑問からの展開でした.たいへん勉強になりました!

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最終更新時間2025-05-14 15:10

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